先日、経済産業省が以下のプレスリリースを発表し、その後から既に様々なところで議論が沸騰しています。

電動アシスト付ベビーカーに関する道路交通法及び道路運送車両法の取扱いが明確になりました~産業競争力強化法の「グレーゾーン解消制度」の活用~

 

これに対する懸念を示す意見も多く、今回の判断によって幼児が被る不利益が大きくなりかねないことについては、正直自分も危機感を覚えます。

(参考)

「経産省、保育園の電動アシスト付き大型幼児車は「車道を通行すること」と判断」

 

さて、今回の判断は、法律をしゃくし定規に当てはめたら実態にそぐわない結果となりました、ということを胸を張って言っているにすぎないわけですが、なぜ今回経済産業省がこういう判断を行ったのか。それは、産業競争力強化法に基づくグレーゾーン解消制度に内在する「限界」があったからに他なりません。

 

これは、まさに自分が現職の衆議院議員のときでした。

 

きっかけは、経済産業省が鳴り物入りで提出してきた産業競争力強化法案。

なかなか進まない規制改革の現状に危機感を感じたからかもしれません。経済産業省は、この法律でグレーゾーン解消制度を導入して、現行法上、グレーゾーンにあるもの、運用されているものについて、白黒をはっきりさせて規制緩和を進めるんだ、産業競争力の強化につなげるんだという強い意志の下、この法案が提出されました。

 

でも、このときに、自分は、衆議院の経済産業委員会において何度も、そんなにうまくいきますか?一省庁にすぎない経済産業省がグレーの部分を白となんか言えますか?グレーゾーンを解消したら、逆に黒であることが明確になりましたということになったら規制緩和と全く逆に働くのではないですか?と繰り返し懸念を示しました。そして、今回は実際その通りの結果となっています。

 

そもそも、規制改革を進めるためには、各省庁の連携が不可欠です。規制は、どんなものであっても、それぞれ各省庁の思惑があってのこと(それを既得権益と表現する方もいます。)なのだから、数ある省庁の一つにすぎない経済産業省が黒白を判定し、白の範囲を増やす、つまり規制緩和を進めるなんてことはできるはずがないのです。
だからこそ、規制改革を進めるためには、各省庁の利害調整を行うために一段上の存在として内閣府やら内閣官房の力を借りるのです。

 

それを経済産業省が産業競争力の強化のためだとか言って、自分が規制改革を進めるんだなんてことを主張して、この法案を作り、かつ通したわけですが、その結果グレーのままなら歩道で運用できていたベビーカーが歩道で使えませんということが明らかとなり、ひいては危ないから保育園の整備もできませんなんてことになったら、産業競争力の強化どころの騒ぎではないわけです。

 

今回は、そういう意味では、産業競争力強化法を通じて法案提出者が目指した利益とは全く逆の結果を生じさせてしまいました。

 

では、今回の騒動をどう鎮静化させるか。

 

繰り返しとなりますが、歩道で使ったら違法ですよ、で経済産業省がお終いにするなら、害以外の何物でもありません。グレーゾーン解消制度など「くそくらえ」です。逆に、これだけの世論の反発を踏まえて、国交省と交渉して、規制緩和の穴を作ったら、それでこそこの法律を作った甲斐があるというものです。

 

経済産業省の、そして産業競争力強化法の真価が問われるのはここからです。
今後の動向を見守っていきたいと思います。

 

(注)

誤解があるといけないのですが、全ての電動アシスト付きベビーカーが今回の判断の対象となっているわけではありません。

(参考)https://news.yahoo.co.jp/byline/mamoruichikawa/20170913-00075689/

が、「電動アシスト付きベビーカーは車道に」という理解が誤りということでは決してありません

グレーゾーン解消制度など使わなければ車道を走る必要がなかったベビーカーがこれからは車道を走らざるを得なくなる、そういう事態が生じたことについて、今回懸念を示しています。

 

前衆議院議員 三谷英弘