ご存知の通り、豊洲の問題について先日、小池都知事が今後の方針を示されました。

 ※ 内容はこちらから。

 

この件、既に様々な方が論評を加えられており、今更自分が何か言う必要はないかもしれません。しかし、この問題についての小池都政にどう向き合うかが、実は今後の東京のあり方に大いに影響を及ぼすものだと考えているので、感情的になることなく、あえて自分の意見を述べさせて頂きます。

 

小池都知事の会見において「築地は守る、豊洲を活かす」という言葉が躍っていますが、その中身をしっかりと見ると、豊洲に中央卸売市場を完全に移転するということはまず明らかとなりました。

 

なお、いつ、どういう条件が整ったら移るかという点ですが、ここは会見において、「安全性を検証していただいてきました平田座長が、『地上は安全だ』と。しかし、有害物質が検出された地下については『追加対策が必要』とのご意見を出されたところは、ご存知のとおりであります。…これが答えというわけでございます」、「環状2号線でございますが、オリンピック前に開通をさせます。そして、そのあと、築地市場の跡地は、当面、オリンピック用のデポ、輸送拠点として活用をいたします」と仰っていることを踏まえると、オリンピックに間に合うよう、できるだけ速やかな時点で「地上の安全性」を根拠に速やかに豊洲に移転するということを断言されたに等しいと理解しています。

 

なので、この点に関して言えば、実は小池都知事は自民党や公明党など豊洲移転派とほぼ同じだということになります。(この点をごまかすようなことを言う候補がいれば、それは不誠実な方か、よほど不勉強な方だと思います。)

 

※ とすると、ここまでの騒動(と掛けたコスト)は一体何だったのか、率直に徒労感に見舞われます。豊洲騒動を劇場に仕立て上げたことでどれだけの税金が宙に消えたのかは、将来しっかりと検証されなければならないと思います。

 

他方で、それより一番問題となるのが、「築地は守る」と仰っている点。

この点について何度も知事の会見を見直しましたが、はっきり申し上げて、どのようなビジョンをお持ちなのかが分かりませんでした。「食のワンダーランド」を目指す、詳細は今後の協議の中で決めると言っていますが、要は中身は何も決まっていない、けれども「売らない」ということだと理解しました。

 

本来は、5900億円と言われる豊洲に市場を移転するための費用(新しい土地を取得し、建物を整備する等に要する費用)を、築地を売却することで相当の部分は賄う予定でした。それを売らない、賃貸に回すと言っているわけです。2020年のオリンピックが終わった後にいくらで貸せるかは分かりませんが、今後大幅に資金がショートすることが明らかです。この資金が不足した分を誰がどのように補てんするのかを明らかにしなければ、本当に賃貸に回して良いものか判断しようがないのではないでしょうか。

 

また、「食のワンダーランド」のようなものとして築地ブランドを残すと仰っておりますが、行政が作るテーマパークで魅力的なものがどれだけあるのでしょうか。日本全国で第3セクターが様々なテーマパークを作って大赤字を垂れ流して終わった例はまだ記憶に新しいはずです。

実は、本当に築地のブランドを活かしたいのであれば、築地を民間に売却して、開発を民間に任せてしまうことが最も近道です。築地が世界のブランドとして通用すると判断されるのであれば民間事業者は「築地」のブランドを活かした形で再開発を進めるでしょうし、最高に魅力的な形で「築地」をブランディングしてくれることでしょう。

他方、もし仮に民間事業者が築地のブランドを使わずに再開発するということを決定したのであれば、それは冷静かつ合理的に判断した上で、寂しいですが、卸売市場と切り離した「築地」というブランドが世界に通用するものではない(収益性がない)と判断されただけのことにすぎません。それを行政が「築地」ブランドを守るんだ、そういうところにしか貸すことはないんだと言い募ったとしても、期待するような金額で賃貸することもできないでしょうし、そこに無理があれば、将来にわたって莫大な赤字を生み出していくだけのことにすぎません。とにかく、今年間160億の賃料が上がるという試算自体、築地を自由に使えることを前提とした話のはずで、余計なノスタルジーを排して決断しなければなりません。

 

もちろん一度賃貸に出そうとしてからうまくいかないことが明らかになり、そのうえで売却すれば良いという選択肢(いわゆるBプラン)も腹案としてはあるのだろうと思います。というか、既にそういう将来像しか見えません。でも、築地をめぐる騒動はそれまでの間続くわけで、本来賃貸に回すべき築地が宙に浮く間に都が抱える損失がどんどん膨らんでいくだけでなく、この問題を静かに幕引きさせていた(速やかに民間に売却していた)場合と比べて、その過程で傷ついた築地のブランドは将来にわたって修復もできないでしょう。もうそれこそ取り返しがつきません。

 

そういう意味では、中央卸売市場を豊洲に移転する決断を一定程度評価するとしても、今後の築地をどうするかという点に関して、今の都知事の方針は極めてあいまいで、かつ将来にわたって莫大な都民の損失を引き起こす蓋然性は極めて高いと言わざるを得ません。

 

そういう意味で、今後の課題は「築地を守る」と仰っている内容をできるだけ早期に詰め、あきらめるところはあきらめてもらうこと。本当に築地の地を活かしたいのであれば、単なる絵空事である「築地を守る」という方向性を早々にあきらめ、民間により高値で売却する方向に進めていくことだと確信しています。だとすれば、今本当に必要なことは、単なる都知事の意見に賛成する勢力を増やすことではなく、都知事に対してしっかりとものを申せる方々を議会にどれだけ残せるか、ということ。それが今回の都議選のポイントになるものと思っています。
 

風や勢いを利用して、都民ファーストは今回の選挙できっとそれなりに勝つことでしょう。「変えないといけない」という空気に基づいて投票することで、それなりに議会の構成は変えられるでしょう。

 

でも、単に「変える」ことで、本当に良くなるのでしょうか。

 

今の都民ファーストに関しては、もともとの仲間がいる関係で心情的にはシンパシーを感じている部分があるのは、どうしようもないくらいの事実です。しかし、「都民ファースト」という政治団体そのものの中身を見れば、民主党(今の民進党)出身の方々が多く、民進党では当選できないから軒先を借りている方々の隠れ蓑になっているのも現実です。

 

以前の民主党政権の最大の功績は、自民党政権がどれだけ良いものか、身に染みて分からせてくれたことだという皮肉を言う方すらいるわけですが、それを実感できるようにするためにどれだけ日本全体が損失を被ったか。そこまで考えると、それと同じことをここ東京でやる余裕が本当にあるのか、考えなければなりません。

 

豊洲に限らず、これからも様々な問題が出てくると思いますが、そういう問題に対処するにあたって、都知事にとって「面倒だな」と思える勢力をある程度しっかりと議会に残すことで、二元代表制のもと、都知事がぎりぎりの判断をする際に、難しい問題を先送りにしたり、それに伴う損失が都財政を襲ったりすることを避けることに繋がるものと考えています。

 

今回の都議会議員選挙、自分自身は特定の誰かの陣営に応援に入ったりはしていません。

それでもなお、このようなことを敢えて記載するのは、自分の目からは、このままでは今回の選挙を通じて数百億から数千億円もの損失が東京に生じる未来が、すぐそこまで来ているように感じられてならないからに他なりません。

 

だからこそ、皆様にお願いしたいのは、空気に流されることなく大事な一票を投じて頂くこと。

それが本当にこの東京のみらいに繋がります。この点につきましては、どうか心からお願いいたします。

 

 

前衆議院議員 三谷英弘