皆さま、こんにちは。

昨日特定秘密保護法案が、衆議院を通過致しました。本会議では、自民党、公明党及びみんなの党が賛成し、また私自身も賛成をさせて頂きました。

この法案について本当に多くの方々から意見を頂いて参りました。ご意見を頂いたことに深く感謝致します。そして、頂いている意見のほとんどは批判的なものや慎重審議を求めるものでした。積極的に賛成し、法案として成立させるべきだというものはほとんどなかったことは事実です。

その意味で今回の採決は本当に悩みましたが、党内での議論、与野党の修正協議の内容、そして私自身が30分間という時間、直接法案への疑問点について質問をする機会を頂き、そこから得られた結果を総合的に踏まえ、、最後の最後まで考え抜いた結果、この法案は賛成するべきと考えるに至りました。

一方で、本法案には一定の課題があることもまた明らかとなっています。

そこで、以下、私が本法案に賛成するべきと考えた理由、そして今後解決すべき課題を明らかにしたいと思います。

まず、本法案の目的ですが、これ自体を否定する意見はほとんどないかと思います。
現在は、従来よりも秘密を確保する必要性が高くなっています。日本は以前からスパイ天国と言われてきたように、民間レベルでも、産業スパイが横行し、日本の知的財産が次々に海外に持ち去られています。この対応から、営業秘密の保護が法改正によって強化されていることをご存じの方は少なくないと思います。ましてや国家レベルでの秘密の漏えいを放置すれば、国民の生命・身体に影響が出るのみならず、国家の存亡にかかわることにもつながります。
次元の違う話になるかもしれませんが、昨年末の衆院選時のアジェンダにも国家の情報漏えい対策の強化が含まれています。それゆえ、私自身、この問題に対処すべく、何らかの立法的な対応をするべきだとの価値判断をそもそも有しています。

その上で、この法案を通すべきか否かという点ですが、その前提として、そもそも現行法下での情報の取り扱いの内容について知って頂きたいと思います。

本法案で守るべきとされている国家の安全保障にかかわる「秘密」は、現行法下ではほぼ「特別管理秘密」として管理されています。

この「特別管理秘密」は、各行政庁において独自に定められた基準によって定められ、それぞれの担当者が独自に決めていくので、どの範囲で「特別管理秘密」になるかも分からなければ、責任の所在も明らかではありません。「秘密」として管理する期間についての定めがないので、永久に秘密とされるし、情報公開をしても「非開示」とされ続ける。この内容については全く何の法的根拠もありません。単なる「運用」によって生み出された「秘密」の管理方法。これが「特別管理秘密」です。残念ながら、これが実態なのです。

また、現行法で「秘密」でも何でもないものがなかなか公開されないという事態が起きていることもまた事実です。

よく、本法案が通れば国民の「知る権利」が害される、何も情報が明かされない「暗黒の時代」がやってくると言われますが、開示されるべき有益な情報がなかなか表に出てこないという意味では、既に現行法の下でも「暗黒の時代」であると言えるのです。

だからこそ、現在行うべきは「情報公開請求制度」の拡充であり、改善なのです。
どのような手続きをすれば、いかなる情報が出てくるのか。できるだけ開示される情報の範囲を広げて、また誰もが開示しやすい制度にしていかなければなりません。

その意味で、今回の審議では、この「特定秘密保護法」とセットで「情報公開法」を審議すべきとした民主党のアプローチは、その限度で正しいと考えています。 
(もちろん、民主党の主張する「情報公開法」の改正案を手放しで認めるわけではありません。)

本法案は、当初この「特別管理秘密」の取り扱いをそのまま残した(スライドさせた)ままの内容となっており、その意味ではナイーブさに欠ける、つまり現行法の悪い部分を明らかに引き継いだ内容となっていました。

しかしながら、法案の審議の過程で、自民党・公明党・日本維新の会及びみんなの党の修正協議が行われ、さまざまな修正がなされました。

その中でも特に、以下の点で本法案に改善がみられることとなりました。

・首相の権限の強化

先ほど述べたとおり、現行法では「行政」というヌエ的な存在が次々に情報を「特別管理秘密」に指定し、国民の目の届かないところへ追いやってきています。行政がとある情報を「特別管理秘密」に指定したとしても、そのことで何らかの責任を取らされることは決してありませんでした。
それに対して、本法案では、首相が特定秘密の指定・運用に関して目を光らせる仕組みを導入したことで、この「特定秘密」に関して誰が責任を負うのか、その責任の所在が明確化されることになりました。
特に今までは総理大臣の座は「お飾りポスト」と言っても過言ではなく、ある意味次々に首を挿げ替えても「霞が関」という胴体はしっかりと残る形が続いてきました。だから「特別管理秘密」の運用に何か問題があっても、それについて直接首相に責任を問うことは事実上困難でした。
しかしながら、今回の法律によって、全てそれは総理大臣の権限と責任であることが明確化されるわけですから、何か濫用があったときには、総理大臣は自らの首が飛ぶことを覚悟しなければなりません。首相は「特定秘密」の指定・管理・運用に自分の運命を掛けることになるわけで、おかしなことにならないように気を使うことになります。
国民が選ぶことのできない行政官でなく、全国民の代表者である総理大臣が明確に責任を負うということは、秘密の管理について最大の民主的コントロールが及ぶということになるのです。これは非常に大きな前進です。

ちなみに、過去の発言録を探して頂ければと思うのですが、みんなの党として、内閣総理大臣を「第三者機関」だと評価したことはありません。あくまで、非民主的な行政国家的在り方に歯止めをかけ、情報管理に民主的コントロールを及ぼす上で最も有効な手段だということです。

・「特定秘密」の範囲を限定したこと

当初の案だと、いわゆる「特定秘密」の対象となりうる情報の中で「その他重要な情報」と規定されているものがいくつもありました。そのため、「重要な情報」なら全て「特定秘密」になりうるじゃないか、という批判があったのは事実です。
そこで、「その他重要な情報」として無限定に情報の範囲が広がりうる記載の変更を修正させています。

・「特定秘密」の指定期間を限定したこと

これは日本維新の会からの修正要望で認められたことではあるのですが、これも先ほど述べた「特別管理秘密」の問題点を克服する意味で非常に大きな前進です。
先ほど述べたように、「特別管理秘密」については期間の定めもなく、最初から事実上永続的に秘密にすることができます。これに対して、「特定秘密」については30年、物によっては60年という期間の定めができ、その期間を過ぎたら原則公開となりました。例外もあるじゃないかという批判はあるところですが、少なくともそれ以外の情報について公開が原則とされることになったことから、現在より情報公開が進むことはあれ、後退するとは考えにくいところです。


もちろん、それで課題がなくなるわけではありません。

残された課題はいくつもありますが、一つの重要な点は、国会の関与の在り方です。
この点、畠中光成代議士の発案で、国会内に情報管理に関する特別委員会を新たに設置し、「特定秘密」の指定・管理・運用状況について適宜チェックを行う役割を担当させることを提案し、「附帯決議」という形で結実するはずでした。
昨日の決議の混乱で「附帯決議」という形にはなりませんでしたが、修正案の提出者という意味で与党にはこのことを約束させておりますので、国会の特別委員会を新たに設置することになれば、その場を用いて、例えば多くの方が懸念される本法の濫用的な事案に対する問題追及を行うことができますし、現行法下に比べても、より一層民主的なコントロールを及ぼせることになります。

もう一つは、裁判の在り方です。
この点、私が国会で質問を行いましたが、どのような情報を漏えいしたことが罪になるのか分からないという意味で、防御権が必ずしも守られないという意見はあるところです。
実はこの問題は現行法下でも同じ問題として存在しているので決して新しい論点ではない(今のところこの点が最大の争点になったことはないということにも助けられているのかもしれませんが。)のですが、実は、民間の「秘密」、つまり営業秘密を漏えいした場合の裁判の在り方を参考にすれば、この点を改善することは一定程度可能です。インカメラ手続や外形的な証明方法に加え、当事者(弁護士を含む)に秘密保持命令を下した上で一定程度開示することによって、何が問題の秘密なのかを示すことができるので、この問題に対応することはできることになります。
前回の委員会でこの問題点は明らかにしたと思うので、今後は具体的な立法事実を踏まえ刑事訴訟法の改正を求めていくことが必要だと考えています。

三つ目の点は、やはり情報公開の在り方です。
現行法において情報公開制度があまりに不十分で、みすぼらしかったことは事実です。だからこそ、今後はどのような情報をどのような手続きで開示していくのか、この法案の成否とは別に考えていかなければならないと考えています。全て開示はできないし、全て秘密にもできない。このせめぎあいは特定秘密法案の審議でではなく、情報公開法の改正案の中でこそ行うべきだと考えています。

そして、最後に、西山事件のようなものをどう考えるか、という視点も忘れてはなりません。
あの事件に対する評価は人により違うかもしれませんが、今まで政府の秘密が暴かれた中でその取材手法の適法性がきわどい線で問題となっているのは、自分が知る限り他にはなく、ある意味踏み越えてはならないラインはある程度明確になっているわけです。
西山事件で取られた取材方法ですら許容すべきという意見もあるかもしれませんが、そういうことであれば、それは現行法下においても最高裁まで争うべき話なのであって、この法案を通したから特段取材の方法が制約されるということになるものではありません。
(刑罰が重くなったから抑止効果が違うという意見があるかもしれませんが、西山事件でも毎日新聞社はこのことで倒産の憂き目にあっているわけで、対会社という意味では刑罰の重さが変わることで大きな差異を生じさせるとは考えにくいところです。)

以上の内容を考慮し、今なお残された課題を認識した上で、私としては、現時点における採決の場においては、この法案に反対するよりも賛成することで得られるメリットの方が余程大きいという判断に至りました。

私自身、有権者の中に溢れる懸念の声に耳を傾けてきたつもりではありますし、その中には有用な指摘も少なくありません。自民党の当初案では呑めなかった法案ではありましたが、最終的には今後の課題としっかりと向き合うことで対処できるような形へと修正されたものと理解しています。


ともあれ、今回の採決に携わったことで背負うことになった十字架は極めて重いものと認識しています。今後この法案が濫用されることで民主国家としての存立が立ちいかなくなった場合の第一義的な責任は今回の法案に賛成した国会議員にあります。私もその一人です。

私は、その責任を自覚しながら、真の民主主義国家として栄える日本を実現するべく、今後の国会活動を続けて参ります。

今回の法案に関して本当に多くの方からご意見を頂きました。全てじっくりと目を通させていただきました。繰り返しになりますが、本当に、本当にありがとうございました。もし可能でしたら、今後も皆様からのご意見を頂戴したく存じます。頂いた声を理解し、国政を運営して参る所存です。引き続き宜しくお願い致します。


衆議院議員 三 谷 英 弘