私が失語症の後にどのようにして回復したかについては、以前にブログの第347話で少しお話ししました。そこでは言葉を短期記憶できないので、瞬時にイメージに変換することを訓練したということを述べました。そして、第372話で述べたように、イメージの世界で情報処理しているように思います。ただコミュニケーションを取るには、情報処理の結果としてのイメージを言葉にしなければなりません。そのためにかなり貧弱になってしまっている想起できる言葉で文章を作らねばなりません。そのためには頭の中に何回かリハーサルをしてから口にするようにしていました。

 

 頭の中でのリハーサルすると、どうしてもコミュニケーションが遅くなります。これを早くするには、相手の話を予測すれば良いということに気がつきましたです。だからコミュニケーションを取るときは、相手の話を予測しながら話をしています。概ねこの方法で問題がないのですが、2つの問題が残ります。一つは、大勢で議論している時に、話をしている時に傍から別の話が入ってくると、頭が混乱してしまうという問題です。こういうことは、普通の人でも起こりそうですが、普通は2つや3つの話を記憶することができるので、対処できるのだと思います。ところが私の場合は言葉をイメージに変換するというプロセスは一つしかできません。それで大勢での議論に遅れてしまうということがあります。

 

 もう一つは、予測不能でイメージに変換しにくい事柄に対して、私は対処することが難しいのです。例えば、会議などで予定の日時などを早口で言われると、イメージへの変換ができず、すぐに記憶が消えてしまいます。こういうときは隣の人に聞き直すということになります。とはいえ、最近は普通のコミュニケーションで、私にこのような困難があるということを、他人に気が付かれるということはあまりありません。予測精度が結構良いからだと思います。

 

 

 ただ最近はさらにもう一つの問題があることに気が付きました。その場でのコミュニケーションの予測だけではなく、定期的に会合があったりするときに、先の会合での話がどのようになるかということを、頻繁に考え予測しているのです。前回の会合でストレスがあったりすると、それをどのようなコミュニケーションをすれば、似たようなストレスを回避できるかを予測します。そして、もしシミュレーションで、どうしてもストレスが回避できないような予測になると、会合への参加を避けたりします。退職の身ですから、それでも良いと思ってはいますが、一種の自閉症状態になり、自分でもちょっとつまらないなあと思うこともあります。

 

 一方、私は仕事の上で常に頭の中で予測をしていて、それによって成功しているので、まあよしとしなければならないなと納得しています。

 

 次回は、「閑人閑話 その111(コーラスグループのコンサートを聴きに行きました)」です。