人民解放軍傘下のサイバー攻撃部隊は30万人と言われますが、中国における世論監視や言論統制はどうなのか、例えばNHK衛星で天安門事件に触れるとBlack-outされるというように、当たり前に行われていますが、その実態はよく知られていませんでした。そのため、政府によるネット上の世論監視の現状をレポートした10月3日付「新京報」が話題になっているそうです(以下はinfinityの弓野正宏氏コラムより)。
そのレポートによると、「政府の人事社会保障省(人力資源社会保障部)就業研修技術指導センターと人民日報のネット担当部門が共同で『ネット世論分析師』の職業訓練計画を起動させたことで、『ネット世論分析師』は政府公認の職業となった」と言い、その『ネット世論分析師』は、標題の通り全国で200万人超にのぼり、「ネットから人々の視点や態度について情報を収集し、整理して報告書にまとめ政策決定者に送るもの」で、そのための訓練では「世論分析や分析・判断の方法、世論から生じる危機処理、世論対応等の8つの科目が含まれ」るようです。今や「ネット企業が世論処理をアピールして、書き込み削除の仕事を獲得しようとしている側面」もあり、「単に政府による言論取締りであるだけでなく、地方や企業を巻き込んだ形で制度化が進められ、ビジネス化さえしている様子がうかがえる」と報じているようです。他方で、「9月に最高人民法院と最高人民検察院が出した司法解釈では、金を受け取って書き込みを削除するのは違法であり、ネットの書き込み削除も一種の違法行為とみなされる。削除のリスクは高まりつつある」現実もあり、国営通信の「新華社世論観測分析センターの段賽民主任は『世論分析師』はむしろ正確に世論を導くことが必要と考えている」などと語っているそうです。
つまり世論は中国にとっては「取り締まり」の対象ではなく「導く」対象だというわけです(方便としても)。この職業の月収は6000元とされ、年間200万人に対して1400億元(1元=16円換算で2.2兆円)もの財政支出が必要になり、中国というイビツな国家運営にかかるコストは馬鹿になりません。ここまで読んできて、増え続ける国防費を越えた治安維持費のことを思い出しましたが、まさにこのコラムの弓野正宏さんも、「警察に加え、特警と呼ばれるSWATに相当する軽武装の機動隊や対国内の軍事力である武警部隊強化の拡充が進められてきた。治安維持費は「維穏費」と呼ばれ、その額はここ数年国防費を上回るほどである(2013年の予算案では治安維持費が7690億元=12.3兆円で、国防費は7406億元=11.8兆円)」と続けておられます。年間数十万件を超すと言われる民衆のデモや暴動を抑えるための治安維持にせよ、今回のネット監視にせよ、およそ生産的とは言えないモグラ叩きの費用です。ついでに「環境保護費は3286億元=5.3兆円」だそうで、これも馬鹿になりません。さらに「国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局が、来年の記者証発行には「マルクス主義報道観」や「中国の特色ある社会主義」を含む6項目の試験の受験と合格を義務付ける通知を出したばかりである。これにより25万人の記者が免許更新のために政治思想テストを受けることになった」という話も紹介され、これも馬鹿になりません。
先日、中国に進出しているPR会社の方の話を聞く機会がありました。中国ではネット・ユーザーが5.4億人に達し、もはやTV視聴よりネット利用の方が圧倒的に長いそうです(TVをネットで見ることが出来る環境のお陰でもあるようです)。一般化するのは難しいのでしょうが、中国人と言えども、子供の頃から接してきた政府が発する情報への信頼度は低く、自分で情報を取ろうとするため、ソーシャル・メディアが発達し、その情報が重視される傾向にあるのだそうで、その意味では日本よりも遥かに進んでいるようです(幸か不幸か・・・)。しかし、如何にネット監視を強めようとも、かつて私が1997年から翌98年にかけてNYシティ・マラソンはじめアメリカで参戦したいくつかのマラソン大会の記録が、オフィシャル・サイトから消えても今なおネット検索できるように、いったんネットに載ってしまう情報を未来永劫消し去るのはそれほど簡単なことではなさそうです。
こうした話の先には、今は亡きソヴィエト社会主義共和国連邦の末期症状が思い出されます。中国と違って、同じ社会主義でも完全な計画経済でしたから、当時、60万件もの物価を役人が決めていたと、まことしやかに語られたものでした。なんと非合理的な・・・。市場や民に信を置かず、少数エリートの叡智を頼むことでは、中国も同じです。まがりなりにも市場経済を取り入れ、国家資本主義と呼び習わされますが、市場を信認しているわけでは決してなく、いまなお国営企業が支配的であり、TPPに関心を持ったところで、参加を模索する言うより、どう眺め回してみても決裂を画策しているようにしか見えません。中国人はあくまで人海戦術でやり通すのか。これはこれで、これほどの無駄を垂れ流しながら、中国共産党というエリート集団を中国という国家の革新的利益の第一に置き、自由民主主義と資本主義市場経済に取り囲まれながら、あくまで現代における一種の貴族政治を貫き通す覚悟であり、人類の壮大な実験として、果たしていつまで生き永らえるものなのか、実に興味深いと言うべきです。
そのレポートによると、「政府の人事社会保障省(人力資源社会保障部)就業研修技術指導センターと人民日報のネット担当部門が共同で『ネット世論分析師』の職業訓練計画を起動させたことで、『ネット世論分析師』は政府公認の職業となった」と言い、その『ネット世論分析師』は、標題の通り全国で200万人超にのぼり、「ネットから人々の視点や態度について情報を収集し、整理して報告書にまとめ政策決定者に送るもの」で、そのための訓練では「世論分析や分析・判断の方法、世論から生じる危機処理、世論対応等の8つの科目が含まれ」るようです。今や「ネット企業が世論処理をアピールして、書き込み削除の仕事を獲得しようとしている側面」もあり、「単に政府による言論取締りであるだけでなく、地方や企業を巻き込んだ形で制度化が進められ、ビジネス化さえしている様子がうかがえる」と報じているようです。他方で、「9月に最高人民法院と最高人民検察院が出した司法解釈では、金を受け取って書き込みを削除するのは違法であり、ネットの書き込み削除も一種の違法行為とみなされる。削除のリスクは高まりつつある」現実もあり、国営通信の「新華社世論観測分析センターの段賽民主任は『世論分析師』はむしろ正確に世論を導くことが必要と考えている」などと語っているそうです。
つまり世論は中国にとっては「取り締まり」の対象ではなく「導く」対象だというわけです(方便としても)。この職業の月収は6000元とされ、年間200万人に対して1400億元(1元=16円換算で2.2兆円)もの財政支出が必要になり、中国というイビツな国家運営にかかるコストは馬鹿になりません。ここまで読んできて、増え続ける国防費を越えた治安維持費のことを思い出しましたが、まさにこのコラムの弓野正宏さんも、「警察に加え、特警と呼ばれるSWATに相当する軽武装の機動隊や対国内の軍事力である武警部隊強化の拡充が進められてきた。治安維持費は「維穏費」と呼ばれ、その額はここ数年国防費を上回るほどである(2013年の予算案では治安維持費が7690億元=12.3兆円で、国防費は7406億元=11.8兆円)」と続けておられます。年間数十万件を超すと言われる民衆のデモや暴動を抑えるための治安維持にせよ、今回のネット監視にせよ、およそ生産的とは言えないモグラ叩きの費用です。ついでに「環境保護費は3286億元=5.3兆円」だそうで、これも馬鹿になりません。さらに「国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局が、来年の記者証発行には「マルクス主義報道観」や「中国の特色ある社会主義」を含む6項目の試験の受験と合格を義務付ける通知を出したばかりである。これにより25万人の記者が免許更新のために政治思想テストを受けることになった」という話も紹介され、これも馬鹿になりません。
先日、中国に進出しているPR会社の方の話を聞く機会がありました。中国ではネット・ユーザーが5.4億人に達し、もはやTV視聴よりネット利用の方が圧倒的に長いそうです(TVをネットで見ることが出来る環境のお陰でもあるようです)。一般化するのは難しいのでしょうが、中国人と言えども、子供の頃から接してきた政府が発する情報への信頼度は低く、自分で情報を取ろうとするため、ソーシャル・メディアが発達し、その情報が重視される傾向にあるのだそうで、その意味では日本よりも遥かに進んでいるようです(幸か不幸か・・・)。しかし、如何にネット監視を強めようとも、かつて私が1997年から翌98年にかけてNYシティ・マラソンはじめアメリカで参戦したいくつかのマラソン大会の記録が、オフィシャル・サイトから消えても今なおネット検索できるように、いったんネットに載ってしまう情報を未来永劫消し去るのはそれほど簡単なことではなさそうです。
こうした話の先には、今は亡きソヴィエト社会主義共和国連邦の末期症状が思い出されます。中国と違って、同じ社会主義でも完全な計画経済でしたから、当時、60万件もの物価を役人が決めていたと、まことしやかに語られたものでした。なんと非合理的な・・・。市場や民に信を置かず、少数エリートの叡智を頼むことでは、中国も同じです。まがりなりにも市場経済を取り入れ、国家資本主義と呼び習わされますが、市場を信認しているわけでは決してなく、いまなお国営企業が支配的であり、TPPに関心を持ったところで、参加を模索する言うより、どう眺め回してみても決裂を画策しているようにしか見えません。中国人はあくまで人海戦術でやり通すのか。これはこれで、これほどの無駄を垂れ流しながら、中国共産党というエリート集団を中国という国家の革新的利益の第一に置き、自由民主主義と資本主義市場経済に取り囲まれながら、あくまで現代における一種の貴族政治を貫き通す覚悟であり、人類の壮大な実験として、果たしていつまで生き永らえるものなのか、実に興味深いと言うべきです。