9年連続200安打の偉業を達成したイチロー選手の一言が「ようやく解放された」ということだったことに、人間味を感じて嬉しくなりました。かつてジョージ・シスラーのシーズン最多安打記録を破った時ですら「自分にとって満足できるための基準は、少なくとも誰かに勝った時ではない。自分が定めたものを達成した時に出てくるもの」と言い切り、今後の目標を聞かれて、「野球がうまくなりたいんですよね、まだ。そういう実感が持てたら嬉しいですね」と言ってのけたイチローでも、人(の記録)との戦いに緊張を感じ、ピリオドを打ったことに安堵したのです。
 そうは言っても、大リーグの長いシーズンでは、けがや集中力の欠如で記録達成を逃す選手も多いが、何が大事かと聞かれて、「結果的にやっぱり野球が大好きということが、それに当てはまるかもしれない」と答えたところは、やっぱりイチローらしい。今後、シーズン200安打に対する考え方は「変わるんじゃないですか」という言葉に次いで「ちょっと楽になりますよね。自分と向き合っていれば良いんだもん。もう最高ですよ。(来季以降も)目標だと思いますけど、随分気楽な目標になるのでは」と言ってのけられるところも、イチローらしい。
 野球少年だった私たちにとって、イチローは奇跡であり、夢そのものです。野球が好きで仕方ない、野球がもっと上手くなりたいと言うイチローが野球を楽しむ姿を見ていたい。同時代に生まれあわせた幸せを感じます。
 彼の前にはどんな地平が広がっているのでしょう。上の写真は、一枚岩でウルルと繋がるカタジュタを望む(オーストラリア)。