
新東京国際空港に航空機が着陸した

タラップから降り立った乗客の中に、曽根崎理恵の姿があった

スーツケース1つ

ほんの3日間の米国滞在だった

理恵のハンドバッグの中には、1枚の書類があった

「さよなら、伸一郎
」タラップを降りて、航空機の青い機体を見上げた理恵はそう
呟いた

理恵がバッグに潜ませていた書類は、判が押された
離婚届だった

理恵と伸一郎は、通常の社会システムの維持には何の未練も
なかった

離婚届があろうとなかろうと、ふたりの関係は変わらない

そう、昔から彼らはある部分では完全に断絶していた

だからこそ今でも遠い距離を隔ててお互いに強く
魅かれ合っているのかもしれない

――それでも、これだけはどうしても必要なの

すべてに一任を取り付けた理恵は、今回の米国行きの目的を
果たし、晴れ晴れとした表情をしていた

――さあ、ここからが勝負

理恵は成田エクスプレスの時刻表を見ながら、久しぶりに吸った
故国の空気の柔らかさに、ふと涙しそうになった

つづく