よく見ると、周囲を蝿が舞っている。
泥に覆われて黒くなっているために、手足や頭が見分けられなかったのは幸いだったかもしれない。しかし、それはまだ生前の生々しい面影を残しており、体毛の流れが見分けられそうだった
だが、紛れもなくそれは死んでおり、今なお徐々に完全な死に向かいつつあるところなのだ。遠く離れた場所にある、もはや動くことのない動物の死体から、なぜか二人は目が離せなかった
そこだけが鮮明で、そこだけが質量を持っていて、じわじわと二人に向かって瘴気を発しているような気がするのである。周囲は長閑な田園風景なだけに、それは異質だった
死とは異質なものなのだ。融は、横たわる父の姿をいつのまにか連想していた。
そうだった、あの父は異質だった。自分の知っている父とは思えなかったし、同じ物体だとは信じられなかった
もはやあの物体はこの世から消滅し、二度と蘇ることはない。「そういや、去年、誰かが土左衛門見つけたんだよな」
忍が呟いた。
つづく