ここから先は、「英国妖異譚」(著:篠原美季、講談社X文庫ホワイトハート)の二次創作です。二次創作なんて嫌だよ~、もしくは知らないよ~というかたは、下にスクロールしないで、他のページを読んで行って頂けるとありがたいです。
クリスマスに向けて『勝手に好きなキャラクター祭』開催を宣言していながら、ちっとも進んでいなかった私・・・。トップバッターは、やはりというかなんというか、この御方しかいない!!と思っていたのに(しかも途中まで書いていたのに)アシュレイに先を越されてしまいました。今度こそ!!というわけで、眼鏡な彼のご登場です。
1回、作品整理が入っていますが・・・通し番号?的には20作品目ということで~。これからも、ちょこちょこ・よたよたと続けて参りたいと思います。
『すこしのあいだ』~英国妖異譚SS~
あの人は、いつも僕を見ると少しだけ困った表情を見せた。
だから、余計に距離を取った。
鉄壁のポーカーフェイス。
冷ややかな眼差し。
愛想のない物言い。
常に装備している状態を、特に不自由だと思ったことは無かったはずなのに・・・。
「セイヤーズ!」
聞き慣れた涼やかな声に足を止めると、自分を見つけて走って来たらしい上級生の姿があった。
「フォーダム?僕に何か用ですか?」
-あぁ、だから何だってこんなに愛想の悪い言い方になってしまうんだ、僕は-
心の中で自分を叱りつけつつも、表情は全く変わらない。
「君に、お礼を言いたくて。この間は、トンプソンと僕を助けてくれて本当にありがとう。ずっとお礼が言いたかったのだけど、熱を出してしまっていたから。遅くなって、ごめんね。」
申し訳無さそうに言うユウリの姿に、思わず表情が苦くなる。悔しさが残る湖での一件。あのとき、発見があと一瞬でも遅かったら・・・ユウリ・フォーダムは、ここに存在しなかったかもしれないのだ。
「トンプソンを助けたのは、あなたですよ、フォーダム。僕はボートを漕いでいただけです」
何とか落ち着きを取り戻して、やっとそれだけが言えたセイヤーズの自虐的な発言を、頭を振ってユウリが否定する。
「マクケヒト先生が仰っていたよ。君の適切な応急処置があって、良かったと。逆に僕は、考え無しだと叱られたけれど。シモンも、セイヤーズが居てくれてとっても助かったって」熱弁は止まらない。
「ありがとう、セイヤーズ。本当に心から感謝してるんだ。」
真摯な眼差しで言われて、ようやくセイヤーズの心も綻んで来た。
「お気持ちは、わかりました。お願いですから、今後は無茶な人助けは慎んで下さい」
「十分、気を付けるよ。そのうち皆に怒られちゃいそうだ」
気持ちが伝わったことで安堵の表情を浮かべた上級生の頬が、ほのかに赤らんでいるのは・・・照れているからでは無いと判断した瞬間、セイヤーズの手は自然と動いていた。
両手で包み込むようにユウリの額から両側の首筋にかけてを、流れるような動きで触れて、セイヤーズは顔を顰める。
「まだ、微熱があるようですよ。もう授業が無いなら、今日は早めに休んで下さい」
「えっ?今のでわかるの?」
「医者の息子の実力を、なめてはいけません。体温計が無くても、触診で大体わかります」
普段欠如している自覚がある茶目っ気を加えてそう言うと、これからも自分のことを顧みずに人助けをしてしまいそうな先輩は、声をあげて笑った。
オスカーのように、何のハードルも無く飛び越えることは出来なくても。
少しずつ距離を縮めるために。
自分が装備しているものを、少しずつ変えていこう。
そう決意したセイヤーズは、自分が穏やかな微笑を浮かべていることに気が付かなかった。