まずは、「対称性の自発的な破れと言霊」について、その前提となる真空の性質に関する説明から始める。
 量子論では、真空は何もない空間ではなく、いたるところで粒子と反粒子が対生成(ついせいせい)すると考えた。しかし、対生成した粒子と反粒子はすぐに結合して消えてしまう。これが対(つい)消滅である。
このように、真空の中で無数の粒子と反粒子が絶えず対生成・対消滅を繰り返している状態を「真空の揺らぎ」と呼ぶ。真空は完全な「無」ではなく、粒子や反粒子が存在する「有」との間を揺らいでいるのである。
 七沢氏に言霊学を教えた小笠原孝次氏は、混沌とした宇宙に生まれた意識を天之(あめの)御中主神(みなかぬしのかみ)「ウ」、宇宙を照らす意識の光を高御産巣日神(たかみむすびのかみ)「ア」、その光によって照らされた客体としての宇宙を神産巣日神(かみむすびのかみ)「ワ」としてそれぞれ定義づけたという。これを、イコールではなく類比(アナロジー)として考えれば、この対生成の関係をそのまま、同じく対生成された粒子と反粒子の関係に置き換えてみることができそうだ。