日暮れて尚道遠し (旧:皐月十五ちばる) -36ページ目

日暮れて尚道遠し (旧:皐月十五ちばる)

断捨離と運気アップを図って残りの人生を爆走する

実際カレーは何日目がおいしい? ブログネタ:実際カレーは何日目がおいしい? 参加中


Side:A


カレーを温めた。鍋のカレーの具は、すでに原形をとどめては居ない。ドロドロに解けたのはジャガイモだけではなく、玉葱も、にんじんすらもすでに融けていた。


何日前に作ったかは覚えては居ない。自分自身に意識があるかも、識別できない。時計の針が19時を指し示す15分前から、いつもの習慣で晩御飯の用意をする。


数日前から、カレが連絡も無いまま帰ってこなかった。今までそんなことは無かった。いつも電波時計と同じくらい正確に19時の時報のように帰宅してきた。第一声はいつも・・・


「腹へったぁ、ゴハンまだ?」


だから私は、常に19時に晩御飯を出せるように準備している。遅れる事はしない。帰ってきたカレにできたての美味しいものを出したい。それが私の喜びであり、幸せ・・・・変わらないはずだったのに。


でも、数日前から、カレは帰ってこない。二人の生活の場所であるこの部屋に。なぜ帰ってこないのか?携帯にCallしてみたけど、電波の届かない場所に居るみたいで、一向に連絡が取れない。



ドロドロになったカレー、作り直す気力は無い。帰ってこないカレを待ち、時間通りに夕食を出せるように暖め直す以外に今は・・・・・。





Side:B



いつも通りに帰宅したが、部屋に鍵がかかって、カノジョは部屋に居なかった。こんな事は初めてだ。毎日、ボクは19時きっかりに帰宅する。



そうすると、出来立ての夕食で、明るい笑顔で、カノジョはボクを迎えてくれる。毎日の、さりげない、でも大切な儀式だった。



いつまでも、毎日は変わらなく続いていくと思っていた。歳を重ね、結婚して・・・外見は変わり、やがて死が二人を分かつまで毎日が続いていくと信じていた。



突然の事故が二人の人生を変化させた。乱暴な性格のドライバーの、乱暴な運転によって、カノジョは事故に巻き込まれた。



運がよかったのか、悪かったのか・・・・カノジョは一命をとりとめた。が、意識は戻らなかった。医師の話では、ひょっとしたらこのまま意識が二度と戻らないかもしれない。



でも、ボクは彼女の意識が戻る事を信じて待っている。だって・・・・



「また、微笑みながら、手を少し動かしてますね・・・」



看護師さんの一言で、その仕種に気がついた。19時まであと15分ぐらいになると、彼女は微笑みながら手を動かす仕種を始める。



まるで、ボクの帰宅を待ちながら、夕食の準備を始めるかのように・・・・



事故にあった日は・・・・カレーにするといってたっけ。



あれから4ヶ月、まだ彼女の意識は戻らない。






好きな人のことを考えると苦しい?幸せ? ブログネタ:好きな人のことを考えると苦しい?幸せ? 参加中

夜空に浮かぶ月は、妖しく光を発しながら、やがて血の色へと変化をとげる。


「ゴメン、今日はトモコとショッピングなの・・・」


最近、彼女と過ごす時間が減った。ボクの誘いは、いつも彼女の友人に邪魔されるようになった。


最初は彼女の言い訳を信じた。やがて不安を懐くようになった。不安は疑心をよび、心に暗鬼が生まれ、大きく育っていった。1ヶ月前、思い切って彼女の後をつけた。


お互いの信頼関係にヒビをいれてはいけない。壊したくない・・・でもどうしようもない。安心を得たいがために後をつけた。疑心は払われ、暗鬼は退治できると信じていた。


新宿京王プラザのラウンジで、40代半ばの、ツィードのジャケットを羽織り、髪を丁寧に撫で付けた、中年男と・・・・彼女は待ち合わせていた。


疑心は疑心を呼び、暗鬼は大きく成長した。


その後、彼女に別の予定を聞かされるたびに、彼女の後をつけた。ホテルのラウンジでいつもの40代の男性と待ち合わせ、エレベーターでRoomに上がっていく二人の姿を見送るたびに、きっと親戚のおじさんだ・・・ただ単なる友人だ・・・と思い込もうと呪文をかけた。


呪文は呪いを招きよせ、疑心は不振へと変化し、暗鬼はボクを支配した。


京王プラザの前で、彼女が出てくるのをひたすら待った。月は南中を終え大きく傾き、新宿中央公園の方から聞こえる秋の虫の音は、ボクの心をささくれさせた。


壊れたのは何だろう・・・・


束縛はしなかった。鎖でつなごうとは考えなかった。ただ・・・そばに居て欲しかった。でも・・・・


愛という感じは好きだった。しかし、実際に愛というものを求めてみたら、それは哀しいまでに醜いことだった。


妬み


嫉み


乾ききった大地にいくら水を注いでも、染み込んでは乾いてしまうように、愛すれば愛するだけ、愛は乾いていく・・・・。


ボクはいったい、何が欲しかったんだろう?ボクはいったい、何を求めていたのだろう・・・・。


月は南中を終え、西の空へと傾き始めた。


ホテルの外で、じっと、二人が降りてくるのを待っていた。


11月の風は、冷たく心まで凍てつかせるが如く、コートの隙間からボクの体の中を吹き抜けていく、そんな感じだった。


ボクはいったい、何のために待ってるのだろう?ボクはいったい、何を知りたいのだろう。


時計の針は、午前2時を刺していた。


好きで・・・好きで・・・好きで・・・ただそれだけでは・・・物語はなぜ終わらないのだろう・・・・。


疑心から生まれた暗鬼は、自分を鬼に変えてしまった。もう、人には戻れない。




Dear All


なんとか風邪から立ち直った御代Summer之助です。(ヲイ)


最近よく考えるのが、ボクの存在意義。


ある日ふと気づくと、今居る、自分が現実と思っていたのが仮想空間で、自分自身は生体発電所として機械に利用されていて、モーフィアスと名乗る変なおっちゃんについていって赤いカプセル飲んで・・・


それは【マトリックス】だっつーの・・・・


と軽くジャブを打ち込んで、本題に。


なぜ自分は存在するのか?


・死ねないから(ヲイ)

・ヒマだから(ヲイヲイ)

・趣味【生きる】(逝ってしまえ・・・)

・嫌がらせ(病んでるぞ・・・)


多分、人は生という名の荒野の中を、地図も無く、行き先も判らないままに、自分の決断という名の靴を履いて歩んでいくんでしょうね。


ある人は、自分の【夢】を実現させるために。


ある人は、社会に貢献するために


ある人は、愛する人と一緒に居るために


ある人は、借金まみれになる度に、それを保証人に押し付けるために・・・・


オレの存在意義、それは・・・・・


今まで苦労をかけてきやがって


散々遊びまわりやがって


いろいろカバチぬかしやがって


そのくせ、自分の尻も拭けない


そんな親類縁者が、最後に助けてくれと懇願したときに、


一言、言ってやる事さ


「オレの知った事じゃない。甘えるのもいいかげんにしろ・・・・」


と。

Dear All



Dark Over ・・・・迫り来る闇・・・・

今年は3本、大ボトルで仕込みました。一本たしか1920mlだったような・・・・


こんだけローズマリー買って仕込んだら、


一本の単価

ウォッカ1800円+ローズマリー約・・・・2000円ぐらいしちゃいますね。


ローズマリーはボケ防止に良いらしいので、最近ボケてる人にはいいかもしれません。



でも、妊娠中の女性にはローズマリーの多量摂取はよくないそうなのでお気をつけを・・・・。

Dear All


ようやく秋晴れになった昨日、ローズマリーの収穫を・・・・・



Dark Over ・・・・迫り来る闇・・・・

庭に植えて4年目・・・もうジャングル状態ですな・・・・・。


豪快に収穫し、一部は・・・・



Dark Over ・・・・迫り来る闇・・・・


玄関の芳香剤代わりに・・・只みたいなもんやし



Dark Over ・・・・迫り来る闇・・・・

ローリエ(月桂樹)も豪快に育ってしまいました・・・。

恋話してる? ブログネタ:恋話してる? 参加中


「ねぇ、聞いてる?」


しっかり聞いてるよ。一言残さず。些細な事だって逃すものか・・・・君のその声、その眼差し・・・。言葉を発するたびに、唇の動きから、微かに覗かせるかわいらしい八重歯まで。すべてが愛しい。


「シンゴの奴、酷いのよ・・・・」


そう、シンゴは酷い奴だ。こんなにも愛らしい、こんなにも魅力的なアリサを平気で傷つけ、悲しませ、なのに愛されてやがる。ムカつくほどに嫌な奴だ。親友ではあるが・・・・。


目の前で、他の男との惚気話を聞かされても、アリサと過ごすこの時間にだけ幸せだと感じるオレはすでに病んでいる。



日本の総人口の半分が女だから、適齢期からプラスマイナス10歳前後までに絞ったところで、2000万人は恋愛の対象が居るだろう。なのに、オレが求めるのはこのアリサ、シンゴと付き合ってる彼女を欲している。



シンゴもアリサも・・・二人ともオレにとっては親友という名の曖昧な関係であるのに・・・・。


オレはシンゴのほぼすべてを把握している。



奴の好み、奴の過去、奴の夢から、奴がアリサを裏切った回数まで。すべてを知りながら、すべてを語る事が出来ない。



幸せそうに話をするアリサが、事実を知ったらどうなるか・・・・。



すべてをぶち壊し、すべてをさらけ出したところで、アリサがオレに向くことは無いだろう。だからこそ、この偽りの相談の時間だけが、オレの唯一の至福の時。



「そういえば、マコトはまだ彼女できないの?」



こんなにもアリサに焦がれるオレに、他の女と付き合えというのか?愛の無い、動物的欲求だけならばいくらでも懐くことは可能だろう。



が、それがなんになるんだ?塩の効いた水のように、飲めば飲むほどに体が渇くだけの虚しさ、そんなものがなんになるんだ?欲しいのは目の前のアリサ、それが例え禁じられた果実であっても・・・。



「どうしたの?怖い顔して・・・あたしの話聞いてる?」



オレは病んでいる。こんな生産性の無い関係を、無駄な時間を費やして目の前のアリサとの会話だけを楽しむなんて、やがて抑えきれない感情は暴走し、自分自身の精神の安定を砕くだけだと、理性では判っていながら・・・。



今日もまた、心から欲しながら手に入らないものと私服でありながら苦痛なときを過ごした。いつか、オレはきっと・・・・。




名前も知らない人を好きになったことある? ブログネタ:名前も知らない人を好きになったことある? 参加中

・・・Crazy in my mind ときどき感じてる Kissは交わしたけど 名前も知らない・・・


「タレイア、そろそろ君の本当の名を教えてくれよ・・・」


「名前なんか、さして重要とは思えないけど・・・フフフ」


いつも笑って誤魔化されてしまう。タレイアと自称する女性と知り合ってもう1年、ボクは未だに彼女の名前すら知らない。名前を知らないどころか、彼女の生まれた場所も、住所も、仕事すらも・・・・。目の前に座る、見たままの彼女しか知らない。


「もう、知り合ってから1年も経つのに、ボクは君の事を何も知らない」


「そんな事、大して重要じゃないでしょう?おかしな人・・・フフフ」


細かいところが気になるのがボクの悪い癖・・・じゃないだろう?名前や素性を、気になる相手の事を知りたいと思うのはごく当たり前の事ではないだろうか?


「君の事を知りたいと思うのは、当然の欲求ではないの?」


「違うわ・・・・」


そして、タレイアは徐に話し始めた。


「貴方は、目の前に居る私が気になるの?それとも、私の名前?私の過去?」


「当然目の前に居る君が気になるさ」


「だったら名前を知る事が果たして重要なの?名前なんか単なる記号のひとつでしかないでしょう?私がタレイアであろうと、マルデ・ダメ子でも、目の前の私だけが気になるのだったら重要な事ではないよね?」



「でも、君の事を知りたいと思うことは、いけない事なのか?」



「余計な情報は、私自身の魅力を損なうと思わない?」



「どういう事?」



「貴方にとって私が魅力的であればいいわけでしょう?」



「そうだけど・・・・」



「例えば、私がどこで生まれ、どういった人生を歩み、今どんな仕事をしているかなんて知ったところで、目の前の私がより魅力的になるのかしら?」



「さぁ、でも、少なくとも君の人間性は・・・」



「フフフ・・・そう言って誤魔化すのはやめて欲しいわ」



「誤魔化すって・・・・」



「私の過去を知る事、住まいを知る事、名前を知る事、家族構成から好きなモノまで、すべて知ったところでどうなるって言うの?愛や恋に、そんなものは必要ないわ・・・」



「でも・・・・」



「例えば、仮に私が結婚していて、子供が5人居たら、貴方の目の前に存在する私の魅力が褪せるとしたら、そんなモノは愛でも恋でもないのよ」



「え・・・・・」



「目の前に居るモノを、人から奪おうと、例え罪を犯したとしても奪ってしまいと心から欲しないモノであるなら、そんなモノは単なる動物的な生理的欲求でしか過ぎないわ」



「・・・・・・・」



「貴方が私に望むものは、そんな生理的な欲求でしか過ぎないの?」



「いや・・・そんな簡単なモノじゃないよ」



「だったら・・・」



タレイアは一枚の紙をボクの前に差し出し、こう続けた・・・・これに・・・サインできるわよね?と・・・・。



その後のことはよく覚えていない。気がつけば、ボクはこの魔界に落ちていた。タレイアは、サインを終えたボクに、最後にこう囁いた・・・・。



「ありがとう・・・私の本当の名を教えてあげる・・・」



【メフィストフェレス】・・・・・契約によって、ボクは・・・・・悪魔に魂を売ったのだ。




 喜怒哀楽、今の気持ちに近いのは? ブログネタ: 喜怒哀楽、今の気持ちに近いのは? 参加中

オレの目の前に、人工呼吸器を付けられ、、辱創が出来ないように体位を変えられ、ベットに横たわる【源ジイ】が居た。二ヶ月前に酒を酌み交わした時と状況は大きく変わった。


最近源ジイ見かけないな・・・そう感じ始めた矢先だった。朝は5時前から野良に出て8時まで朝飯前の一仕事、その後昼まで野良仕事、昼飯を食べたらまた野良に出て日暮れと共に帰宅する、昔ながらの農家の日常を繰り返す源ジイは、今まで休みをとならかった分をまとめて休養するように、眼を閉じたまま胸の上下の動き以外まったく見られなくなった。


「脳溢血で・・・あたしが見つけたときからもうずっと意識が戻らないんですよ・・・・」


源ジイの息子の嫁さんがそういって俯いた。病院の付き添いは、何をするわけでもないが精神的にも肉体的にも疲労をおぼえる。この人は精神的に参っているなと感じた。


人間の体は皮肉なものだ。脂肪を取りすぎれば、脳の血管が詰まって【脳梗塞】になり、逆に取らなさ過ぎれば血管が脆くなってぷつりと切れて【脳溢血】を起こす。昔ながらの食生活が、逆に寿命を縮める。


「多分・・・意識が戻る事は無いって先生も・・・・」


「お大事に・・・」


そういって病室を後にした。【お大事に】・・・何をお大事にするんだ?馬鹿な一言を付け足した自分に腹が立った。もう元には戻りそうも無い人に、【お大事に】?馬鹿やろう・・・・たまらなくやりきれない感情があふれ出した。


待合ロビーで空いた椅子に腰をかけ、頭を抱えて考え込む。なぜ、源ジイが田んぼをやってくれといったときに、【いいよ】の一言がいえなかったのか。あの源ジイが、人に田畑の管理を任せると言い出したのは、自分の体調に不安を感じていたからじゃないのか・・・そんなことを思いながら、何故気づいてやれなかったのか自分にたまらなく腹立たしかった。


だけど・・・冷静なもう一人の自分が付け足した。源ジイの田んぼを自分が管理する。今の自分の田んぼだけなら、一日休みを取れば何とか収穫が行える。今の倍になったら、二日で果たして終わるだろうか?自分のおかれた環境を冷静に分析すれば、片手間で行う限界を超えてしまう。


待合ロビーを後にし、病院の建物を見詰めながら、たまらなく哀しくなった。人に頼まれてもすぐにOKできない。それが、死を目の前にした人間の頼みを受け入れる事がたやすく出来ない自分の無力さと、なぜ主食を作って居るのに、それだけで生活が出来ないのか、社会のアンバランスな状態が改善されない事へ・・・・たまらなく哀しくなった。


「世界に、700万台以上の欠陥車売って贅沢な生活してる経営陣も居るのにな・・・・」


安全な米麦を作っても、生で食べる事が可能な卵を作っても、それだけで生活が出来ずに兼業せざるを得ない階層。かつては【攻めの農業】を謳った松岡氏は、野党の政治資金問題の追及で死を選び、個別所得補償でさも救いの手を差し伸べるようなポーズをとりながら、生産量の調整しか頭に無い無能・無責任な集団がいまや政権を担う、日本の状態がたまらなく哀しかった。


そして、オレが源ジイを見舞った8ヵ月後に、源ジイは倒れてから一度も意識を取り戻すことなく他界した。長引く入院生活によって、売れる農地は皆売り払い、かつての3割程度にまで減った田んぼを、オレが管理する事で、源ジイの遺志を継ぐことになった。


自分の生活に、将来に・・・希望を見出す事が出来るのか?今のオレは、ただたまらなく哀しい。





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ほんの二週間前まで、残暑の厳しかった今年の10月は、やっと例年並の涼しさになった。2010年は記録的な猛暑だ。こんな年はもう無いかもしれないし、気候変動によって今後さらに暑くなるかもしれない。不安だけが心に広がる。


夜道を10分ほど歩いて、源ジイの家にたどり着いた。都会と違って、田舎の夜道は暗い。街頭はまばらで漆黒の闇の中に、源ジイの家の玄関灯が、ぽつんと浮かぶさまは、源ジイの寂しさを物語っているようだった。


「こんばんわ、源ジイ、来たよ」


「おお、悟(サトル)上がれや。汚い所だから遠慮は要らんぞ。あ、おめえ車で来たんか?」


「いや、近いから歩いてきた」


わずか歩いて10分程度のところも車で行く。群馬では当たり前の事だ。都会の人間と違って田舎の人間は驚くほど歩かない。特に自家用自動車保有率全国第一位の群馬では、コンビニに行くのも車を使う。車なしでは生きていけない。


「んじゃ、一杯やるべ。良い酒が有るんだわ」


「うん?夏場常温で保存したようなひねた酒なんかいらねぇよ?」


「馬鹿やろう、保冷庫で年間通して8度で保存した大吟醸だぞ。いいから飲んでみろ」


保冷庫は農家が自家用に保存しとく米を入れる、米専用の冷蔵庫だ。大きさにもよるが、30kgの米袋が30個以上保存できる。米だけでなく酒や野菜も放り込んで保存している場合もある。オレのうちは12度に設定してワインセラーも兼ねている。蒸留していない酒を常温で保存するとひねる。ひねた酒は飲めたものではない。


「湯飲みでいいだろ?さぁ、ぐっといけや」


湯飲みに注がれた大吟醸を一口、口の中に広がるフルーティーな香りを楽しみながら、ゴクリと喉へ運ぶ。くせの無いまろやかさで胃の腑に落ちるそれは、大切に保管されていた事を物語っていた。もう一口含んで、余韻を味わう。


「旨いな・・・」


「酒蔵から直接買い込んでくるんだ。不味いわけがない」


そういって源ジイは、自分の湯飲みの大吟醸を喉を鳴らして飲み始めた。その顔はたまらなく嬉しそうだった。そういえば、源ジイと酒を酌み交わすのは初めてだ。源ジイの仕込んだ漬物を肴に、酒だけがどんどん進んだ。話はまったく進まなかった。お互いに言い出す切欠を探っているかのように。


「源ジイ、話って何だい?」


「悟、実は、うちの田んぼ、お前に作って欲しいんだ」


「はい?源ジイんところの息子は?ボチボチ継がせたほうがいいんじゃないの?」



「あいつはダメだ。休日だってゴルフだ接待だと理由を付けちゃぁ野良になんか出てこねぇ。農家の息子もサラリーマンにしちまったらまったく使いモノになんねぇよ」



「オレだって本業はサラリーマンだぜ?源ジイんとこ全部だと今の作付けの倍になっちまう・・・・。米は何とかなっても麦の刈入れは梅雨時期だから間にあわねぇよ・・・」



麦の収穫は6月の半ば、ちょうど梅雨時期だが晴れ間をぬって借り入れる。当然雨にぬれた麦が多少乾いてないと刈入れは出来ない。当然みんな同じ時期に刈入れるのでライスセンターも混み、順番待ち2時間もザラだ。刈ってる時間よりも並んでる無駄な時間の方が長い。



「頼むよ悟、おめえは昔から野良に出ちゃ、文句タラタラ言いながらやることはやってきた。うちのバカボンは文句だけこきやがってやる事はまったくやらねぇ・・・このままじゃうちの田んぼが耕作放棄地になっちまうよ」



いったん耕作放棄してしまうと、農地は荒れる。肥料入れて耕うんすれば元に戻るもんじゃない。一度荒れると収穫量を元に戻すまで数年かかる場合もある。だからみんな自分が出来なくなると人に頼んででも作付けを行うのだ。



「源ジイ、返事はしばらく待ってくれよ。今日この場で『ハイ』と即答できるもんじゃないから」



そう言って会話の接ぎ穂を折り、後は無言で酒を酌み交わし、二杯ほどゴチになってから源ジイの家を後にした。離れに住む源ジイの息子はまだ帰宅していなかった。確かに源ジイの息子を田んぼや畑で見かけたことは無い。息子の嫁さんがたまに手伝ってた様だが、役にはあまり経ってないようだった。



「オレは田舎に帰ってくるべきだったのだろうか・・・・」



そんな事を呟きながら、家路に着く。東京に居たときは、夜道は明るかった。今の夜道は真っ暗だ。まるで、自分の将来のように先が見えない。自分は今後どういくのだろう?農業自体が今後どういくのだろう?そんな先の見えない暗夜行路をいく自分が、たまらなく不安だった。



そして二ヵ月後、源ジイが入院したと知った。




あなたが持っている10年選手 ブログネタ:あなたが持っている10年選手 参加中

「今年の米はダメだな・・・」


ライスセンター(米の出荷場)で順番待ちをしていた。アイフォンに変えてから、順番待ちが退屈じゃなくなった。アイポッドから音楽を流し、サイトで調べ物をしながら時間をつぶしていた。後ろに並んだ源ジイが話しかけてきたのだ。


「今年はあんなに暑かったのに、ダメかい?」


「暑すぎて稲もバテちまったんだな。肥料ばかり喰って籾がちっとも太らねぇ。天気は良かったのにがっかりだ・・・・」



6月辺りまでは、気象予報士どもがこぞって【冷夏】の予測を立てていた。が、ふたを開けてみれば記録的な【猛暑】、予測は大きく外れ、むしろ米農家には喜ばしいはずだったのに、あまりに良すぎた天候が裏目に出たようだ。だから、農業は面白い。やったらやっただけ結果が出るわけではない。自然という名の制御不能の怪物が常に相手だ。簡単に計算通りにはいかない。



「野菜も暑さにやられちまったしな・・・今年は本当に貧乏くじだ。こんな年は生まれて初めてだよ・・・」



「源ジイ幾つになったんだっけ?」



「今年喜寿だ。喜寿って知ってるか?」



喜寿は77歳の事だ。最近の高齢化社会では珍しくないが、還暦である60歳や、古希の70歳まで生きる人は昔はまれだった。今じゃ60・70はハナタレ小僧なんていわれるくらい巷にあふれている。



「オイ、悟(サトル)。お前も不惑だろ?そろそろ本腰入れて百姓やる気になったのか?」



やる気はまったく無い。農業で、米麦(ベイバク)を中心にやるとしたら、損益分岐点は4㌶であろう。昔で言えば4町歩の農地を耕作してやっと喰っていけるかどうかだ。それだけでは機械の分の収益が出ない。農機具は大量生産・大量販売でコストダウンされない分割高である。五条刈りのコンバイン(米や麦を刈る機械)が一台600万円以上、トラクターもハイパワーなものは400万円以上、新車で二台入れれば家一軒十分に建てられる。



他に運搬用の軽トラ一台100万円、田植え機1台100万円、設備は毎日使うわけではなく、場所ばかりとって無駄にメンテナンス代ばかり食う金食い虫。そんな費用や手間をかけても報われないのが農業だ。機械の代金を払うために働く、そんな思いはしたくない。



「悟るんとこの機械も、大分くたびれてきたな・・・・」



コンバインは中古で10年前、トラクターは中古で12年前に、田植え機は中古を2年前に入れた。中古でも農機具はそんなに値崩れしない。需要が少ない分、供給も少ないからだ。中古でもゆうに100万円は見ておかないとならない。



「この軽トラなんか、登録平成7年、もう15年選手だよ。それでも走行距離は2万7千キロ、アホ臭くなるぜ・・・。」



機械一台壊れれば100万円近い出費、しかし農業での収入は年間100万円にも満たない。仕事をしながら生活を楽しむのはサラリーマンだ。兼業の農家は機械の代金を払うために仕事をする。だが、馬鹿な政府はそういった身銭を切って機械を買って細々と農業をする人間を切り捨てようとする。こういった生産者を切り捨てたら、農家なんか誰もやらなくなる。



「一応手伝うだけ悟はましさ・・・一度も田んぼに出ない農家の馬鹿息子もたくさん居るのにな・・・」



近所で農業手伝ってる若手は、知ってるだけでオレのほか2人だけだ。10年もすればこの国の米農家の大半は雪崩のように居なくなるだろう。そんな現実を目の前にしながら、民主党の馬過どもは4割の減反と引き換えに個別所得補償をしようとしている。



現実をまったく知ろうともせず、社会実験と称したクダラナイ場当たり的な事を繰り返す。いざ現実に農業が崩壊したら、誰がいったい立て直すのか?先はまったく見えない。



「悟、実はお前に話があってよ、今晩よかったらうち来てくれや・・・」



源ジイの話、なんだろうと思いながら一日の仕事を終えた。そして、19時に源ジイの家に向かった。