ブルー・マーダー/BLUE MURDER (愛聴盤) | ミスター・プロレス・アワー

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ブルー・マーダーのファーストアルバム「Blue Murder」。

 

これが出て今年で30年ですか。

今も当時と同じ新鮮な気持ちで聴けるアルバムです。

 

 

ファースト・アルバム時のブルーマーダーのグループ・ショット。

左から、ジョン・サイクス(ギター)、トニー・フランクリン(ベース)、カーマイン・アピス(ドラム)。

 

 

サイクスは、80年代前半タイガース・オブ・パンタンというメタル・バンドでデビュー。

その後、伝説のアイルランドのHRバンド、シン・リジィに加入。

シン・リジィ解散後、デヴィッド・カバーデイル率いるホワイトスネイクに参加した輝かしいキャリアのギタリスト。

 

フランクリンは、英国ロックのカリスマ、ロイ・ハーパーのバンドに参加したのち、元LED ZEPPELINのジミー・ペイジと元フリー、バッドカンパニーのポール・ロジャーズが結成したファームに参加し注目されたベーシスト。

 

カーマインは、バニラ・ファッジ、カクタス、ベック・ボガート&アピスなど、いずれもロックの歴史で外せないバンドで活躍した押しも押されもせぬロック・ドラムの重鎮。

 

すごい面々です。

所謂スーパー・グループ、スーパー・バンドってやつ。

 

同時期に日本でも長年大人気を誇ったMR.BIG、元オジーのバンドのジェイク・E・リーが結成したバッドランズ、ジャーニーとベイビーズが合体したバッド・イングリッシュ、テッド・ニュージェントとナイトレンジャー、スティックスが合体したダム・ヤンキースなど、「スーパー・グループ」、「スーパー・バンド」が複数登場しましたが、私自身「これだ!」と思ったのがブルー・マーダーでした。

 

 

私は1960~1970年代のブリティッシュ・ロックが大好きなんですが、そのサウンドを1989年のHM/HRにアレンジしたようなブルー・マーダーのサウンドに心底感動しました。

 

バンドのリーダーであるジョン・サイクスはブルー・マーダー結成直前までホワイトスネイクに在籍。

 

1987年に発表され、ホワイトスネイク最大のヒット・アルバム「サーペンス・アルバス」。

 

このアルバム、アメリカ、ヨーロッパ、日本でとんでもない大ヒット。

マイケル・ジャクソンの「Bad」とタメはって売れてたといえば、そのすごさがわかると思います。


このアルバムでギターのみならず収録曲のメイン・ライティングを担当していたのがジョン・サイクスです。

 

この「Still of the night」なんかめちゃめちゃヒットしました。ホワイトスネイクの代表曲の一つになりました。

でも曲作ってギターも弾いてるのにサイクスの姿はビデオクリップにはありません。

 

なんとレコーディング終了とともに、バンド解雇されちゃったんすよね。

正確に言うとリーダーでヴォーカルのデヴィッド・カバーデイル以外のメンバーはみんな解雇されちゃったんです。

 

「サーペンス・アルバス」アルバムはとてつもなく売れツアーも大成功。

でもその最大の貢献者であるサイクスは既にバンドにいない…

この何とも言えないモヤモヤ感。「サイクスが作って弾いたのになぁ」って思ってました。

 


ホワイトスネイクを解雇されたサイクスはブルー・マーダーを結成。

数度のメンバー・チェンジを経て、上記の面々に落ち着き1989年にファースト・アルバムを発表。

 

 

 

これがもう素晴らしかった!

 

アルバムのリーダー・トラック「Riot」。

イントロで唸りまくるトニー・フランクリンのフレットレス・ベース。

何かから解き離れたかのように躍動するサイクスのギター・リフ。

そしてとてつもなく恐ろしい爆音のカーマインのドラム。

 なんてすごい曲だ!と思いました。

 

当時のHM/HRは、エフェクター利かせたメタリックな重い音ってあるにはあったんですけど、ブルー・マーダーの重厚さってなんちゅうのかな、ギュッと詰まってるというのかな「密な内容量」の重さなんです。

これがしびれてね~。

サウンドそのものは現代的なんだけど、往年のブリティッシュ・ロックのにおいがするんだよな~。


コード進行がステレオ・タイプなHM/HRじゃないのが特徴的。ヘヴィなギターリフだけど、実はブルースっぽい。

 


 

最初にビデオクリップ化された「Valley of the kings」。

しびれましたね~。

 

この曲聴いて確信しました。

現代的LED ZEPPELINなんだなと。

ZEPPELINの「カシミール」なんかを1989年時点のHR/HMにアレンジすると、きっとこんな感じになるんだなと妙に納得しました。

 

ZEPPELINの「カシミール」。

アフリカ、中東、アジアのイメージを取りいれた独創的なリフ、曲構成。

ZEPPELINならではの名曲です。

 

 

前述のホワイトスネイクの「Still of the night」もZEPPELIN風と言われてました。

しかも悪い意味で。

「ZEPPELINのブラック・ドッグの亜種だ」

「デヴィッド・カバーデイルはロバート・プラントの真似してる」

酷評する声少なくなかったんです。

 


評価はさておきこの時点でサイクスはZEPPELIN的なHM/HRを体現してたことになりますが、ブルー・マーダーでより昇華させたというか深化させて体現してるんですよね。

 

 

 

ブルー・マーダー、リズム隊がすごすぎてギターのサイクスを食っちゃってるのが痛快だったりします。

私はリズム隊の人間だからか、ロックでは主役であることが多いギターをリズム隊が食っちゃうのがすごく好きなんです(笑)

 


ドラムであるカーマイン・アピスは、ジェフ・ベック、ティム・ボガートと組んだベック・ボガート&アピスで完全にジェフ・ベックを上回るパフォーマンス見せてましたからね。

カーマインとティム・ボガートは、ヴァニラ・ファッジ時代からの盟友。その後カクタスに二人で参加し、ベックとも組んだ。

どこに行ってもギターよりすごいリズム隊でした(^^;)

 

 

 この曲のカーマインのドラムは驚異的。

炸裂しまくり!!

こんな凄まじいシャッフル、なかなか無いっすよ。

ブルース主体だから当然コード進行はすごくシンプルなんだけど、ド迫力のドラムにギター、フレットレス・ベースが応戦して大暴れする、最高です。

 

このドラムの音、プロデューサーがボブ・ロックという人であることも特筆すべきこと。

 

ボブ・ロックは後にモトリー・クルーの「Dr. Feelgood」、メタリカの通称ブラックアルバムという天文学的なヒットを記録したHM/HRのアルバムをプロデュースしたことで名を馳せますが、この人のドラムの音作りが独特なんですよね。

感覚的な表現になってしまいますけど、キックつまりはバスドラムが一歩前で聴こえるみたいに仕上げる。しかも固い音に仕上げるんです。

モトリーのトミー・リーのバスドラムも、メタリカのラーズ・ウルリッヒのバスドラムもそういう感じになってました。

 

でもなんというのか、ドラマーとしての元々の腕が違いすぎるのか、カーマインのドラムの音はトミー・リーやラーズの比じゃない迫力なんすよね。

仕上げ方もすごいけど、元の音がさらにすごい!

 


トニー・フランクリンのフレットレス・ベースがまた最高なんです。

ヘヴィでタイトな音に絶妙にフレットレス・ベースが交わる、これがブルー・マーダーのサウンドを深く密にしているのだと思います。



ブルー・マーダーのファースト、30年経っても飽きないんですよ。

卒業できないロック・アルバムです。

自分がリアルタイムで体験できなかったLED ZEPPELINや70年代のブリティッシュ・ロックを最高の形でHR/HMにアレンジしてくれた、そう思わずにいられません。

 

ギターとメインライターが同じホワイトスネイクの「サーペンス・アルバス」のように世界的ヒットはしませんでしたけど、ずっと聴き続けて、これからも聴き続ける「愛聴盤」です。