ナミュールか、マスクトディーヴァか、それとも

 

2023年勝ち馬 ソングライン

 

3週間後に同距離同コースで安田記念があるのに、この時期に東京競馬場で牝馬限定G1を実施することにずっと疑問を感じているのは、毎年言っていることながら「つまんねえ奴だなあ」って感じではある。文句を言っても仕方がないので、今年は少数精鋭になりそうなレースを事前検討してみたい。

<登録15頭:フルゲート18頭>

  登録全馬出走可能

 

ナミュール

<前走>ドバイターフ2着

内側の馬がゴチャついて不利があったのも事実だが、ドウデュースやダノンベルーガなどの王道路線の一線級が出走する中で日本馬最先着を果たしており、負けて強しの内容であった。また、2走前の香港マイルでもソウルラッシュやセリフォスなどに先着しており、どんな条件でも力を発揮できるようになってきている。国内での最も近いレースは3走前のマイルCSだが、藤岡康太への急遽の乗り替わりながら悲願のG1制覇を果たしており、国内のマイル戦線では間違いなくトップクラスにあるといえる。
したがって、鞍上がテン乗りでも結果を出していることを考えればレジェンドへの乗り替わりに問題は少なく、藤岡康太にささげる勝利をあげる可能性は高いと判断すべきである。

 

 

マスクトディーヴァ

<前走>阪神牝馬ステークス1着

ほぼフラットな馬場で、好位のイン追走してゴール前でウンブライルに半馬身差まで詰め寄られたが、着差以上に余裕のある勝利であった。2走前の東京新聞杯では内側有利の馬場で、出遅れて大外をぶん回す形になりながらも差のないレースをしており初めてのマイル戦だったことを考えれば、内容的には悲観する走りではない。また、3走前の秋華賞では3着以下を大きく離して、唯一リバティアイランドに迫る走りを見せている。
したがって、能力的にはナミュールを凌ぐとみることもでき、本命級の高い評価を与えて当然である。

 

 

ウンブライル

<前走>阪神牝馬ステークス2着

ほぼフラットな馬場だったとはいえ、スローペースを中団からマスクトディーヴァに半馬身まで迫ったのは良かったが、斤量で▲1kgもらっていたうえに勝ったマスクトディーヴァに着差以上に余裕があったことを考えるとレース内容としては少し微妙である。また、3走前の昨年のNHKマイルCでは2着に好走しているが、近年でも有数の極めて弱いメンバー構成に恵まれたものであり、レース自体のレベルに疑問符が付く。
したがって、外差しが届く展開になるようであれば多少の注意を払うべきだが、前走の着差や川田騎乗だからといって過大評価は禁物である。

 

 

モリアーナ

<前走>阪神牝馬ステークス3着

ほぼフラットな馬場で、スローペースを後方から差してきたことを考えれば位置取りの差とみることもできるが、上位2頭には離されてしまった。マスクトディーヴァとは同斤量だったが、ウンブライルとは+1kg背負わされいたことを考えれば、ウンブライルとはほぼ同等の評価ができる。一方、2走前のAJCCでは男馬のG2常連を相手に4着するなど厳しい条件で好走しているのは立派である。
したがって、様々な条件で崩れなく走っていることを考慮すれば、当馬にも押さえ程度の評価は与えるべきである。

 

 

スタニングローズ

<前走>大阪杯8着

内側が有利な馬場で、平均よりもスローペースでの逃げで前残りの展開に持ち込みながら粘れず、完全な力負けであった。いくら空き家のG1とはいえ、牡馬の一線級を相手に約1年ぶりのレースであったことを考えれば同情には値する。一方、5走前の秋華賞では展開に恵まれた部分があったにせよ、ナミュールやスターズオンアースを破ってG1馬になっており、実績的には今回のメンバーに入っても遜色はない
したがって、当馬の巻き返しにも注意を払うべきである。

 

 

フィアスプライド

<前走>中山牝馬ステークス9着

雨があがって内から乾いたイン有利の馬場で、ハンデも重く終始外を回らされたもので、着順ほど悲観すべき内容ではない。また2走前のターコイズSでは、好位から抜け出す競馬で重賞初制覇を飾った。さらに3・4走前の府中牝馬S、関屋記念で強い内容の4着があり、特に府中牝馬Sではスローペースで逃げ切ったディヴィーナとはハナ・クビ・クビであり、レース内容的には後方から追い込んだこちらが上であった。
したがって、外差しが届く展開であれば、押さえ程度の評価は与えるべきである。

 

 

コンクシェル

<前走>中山牝馬ステークス1着

雨があがって内から乾いたイン有利の馬場で、53kgの軽ハンデで楽に逃げる展開に恵まれたものでレース内容的には価値は高くない。2走前の初音Sではハナを譲ったものの離れた2番手をポツンと追走する展開に恵まれたものである。一方、4走前の秋華賞では中団からのレースで最下位に惨敗し、3走前の準オープン節分Sでもハナが切れずに惨敗している

したがって、斤量が前走から+3kgに加えてマイペースで逃げる自分の競馬ができない可能性が高い今回は当馬に高い評価は不要である。

 

 

ハーパー

<前走>大阪杯13着

内側が有利な馬場ではあったが、平均よりもスローな流れを好位の外め追走から伸びを欠いており、まったく見どころがなかった。一方、牝馬3冠では桜花賞4着、オークス2着、秋華賞3着、さらにエリ女でも3着と牝馬限定のG1ならば崩れなく走っているが、好位のインを追走する展開などに恵まれたものであり、いずれもレース内容としての価値は着順ほど高くない
したがって、メンバー的には大阪杯よりは楽になることを考慮に入れても、押さえ程度の評価を与えれば充分である。

 

 

ドゥアイズ

<前走>阪神牝馬ステークス5着

ほぼフラットな馬場で、スローペースを後方から追走する展開は厳しかったのは確かだが、同じ位置取りだったモリアーナは外を回して3着まで末脚を伸ばしていることを考えると、完全に力負けであった。また、当馬は3歳2月のクイーンCでハーパーの2着して以降重賞では馬券に絡めておらず掲示板がやっとの状態である。

したがって、G1で好走する可能性は低く、高い評価は不要好走には馬場や展開のかなりの助けが必要と認識すべきである。
 

 

ライラック

<前走>阪神牝馬ステークス10着

ほぼフラットな馬場で、スローペースを見越して戸崎が前めのポジションを取って勝ち馬の外側を追走する展開に恵まれたが直線では失速してしまったように完全に力負けであった。一方、一昨年のエリ女ではジェラルディーナの2着しており一見G1でも通用するように見えるが、これは雨で馬場が渋って外差ししか伸びない馬場の恩恵に浴したもので着順ほどの価値はない

したがって、当馬に高い評価は不要であり、極端な道悪馬場で外差しが有利になるなど好走には馬場と展開でかなりの助けが必要だと認識すべきである。

 

 

フィールシンパシー

<前走>福島牝馬ステークス2着

やや内側が有利な馬場で、中だるみの前残りの展開と弱いメンバー構成に恵まれたものでありレース内容としての価値は低い。また、2走前の中山牝馬Sでも前残りの展開で53kgの軽ハンデに恵まれて先行しながらも勝ちきれなかった。
したがって、当馬に高い評価は不要である。

 

 

テンハッピーローズ

<前走>阪神牝馬ステークス6着

ほぼフラットな馬場で、スローペースを中団のウンブライルの内でロスのないレースをして直線も最内を掬って伸びたが届かなかった。ウンブライルが2着まで来ていることを考えれば、完全に力負けであった。当馬は3歳1月のフェアリーS以降重賞では掲示板がなく、重賞で馬券に絡んだのは2歳時まで遡らなければならない。

したがって、G1で好走する可能性は極めて低く、当馬に高い評価は不要である。

 

 

サウンドビバーチェ

<前走>東京新聞杯14着

雨上がりで内から先に乾いて極端に内側が有利な馬場で、先行して3番手を追走する展開に恵まれながら伸びを欠いた。スタートが外枠だった点は多少同情の余地はあるが負け過ぎである。一方、4走前昨年の阪神牝馬Sを制しているが、雨上がりで内から馬場が乾いて極端に内側が有利な状態になって、内枠と先行馬が上位を独占したレースで2番手追走から抜け出したもので重賞勝利というほどレース内容としては価値は高くない

したがって、当馬に高い評価は不要である。

 

 

ルージュリナージュ

<前走>中山牝馬ステークス13着

雨があがって内から乾いたイン有利の馬場で、内枠ながら後方を追走して外を回らされたのは確かだが、伸びを欠いてレース内容としては見るべきものがなかった。4走前にユートピアSを勝ってオープン入り以降はハンデ戦のG3で53kgの軽ハンデでも大敗を続けている。

したがって、当馬に高い評価は不要である。

 

 

キタウイング

<前走>谷川岳ステークス8着

新潟開幕週ながらほぼフラットな馬場で、スローの前残りの展開を後方から追走したので致し方ないところはあるが、バテた馬を数頭かわしただけで見せ場はなかった。また、近走牝馬限定戦であっても2桁着順が続いており、まだ4歳ではあるが早熟で競走能力がすでに頭打ちになっていると言える。

したがって、当馬に高い評価は不要である。

 

ヴィクトリアマイル登録全馬の前走を中心に振り返って事前検討してみた。

今週のポイントは以下のとおり。

①東京コースはBコース替わり

 先週の東京競馬場の馬場状態は乾いて速い馬場で、土曜日レース後に散水が行われたほど。馬場自体はフラットだったがBコース替わりで内側が有利になる可能性がある。

②有力馬は差し・追い込み

 実力上位で人気が予想されるナミュールとマスクトディーヴァは差し追い込み脚質で展開次第では脚を余す危険性がある。

③逃げ馬不在

 逃げる気ならコンクシェルか、スタニングローズあたりになりそうだが楽に逃げる展開になるか。そうはいってもG1なのでなかなかスローにはなりにくい。

 

Bコース替わり、逃げ馬不在、スローペースとなると紛れる可能性が大きくなるが、枠順確定まで楽しみに待ちたい。