テーオーロイヤルは強いのか

 

2023年勝ち馬 ジャスティンパレス

 

長距離戦不遇の時代になって嫌われてしまうG1レースの代表格になってしまった感じだが、超一流馬不在と見てフルゲートを超える頭数の登録があった。例によって有力馬を中心に事前検討してみたい。

<登録馬21頭:フルゲート18頭>

 除外対象:メロディーレーン、シュヴァリエローズ、ウインエアフォルク

 

ドゥレッツァ

<前走>金鯱賞2着

開幕週のやや内側有利な馬場で、ほぼ平均ペースで流れて位置取りがいつもより後ろになった。明け4歳牡馬のレベルが低いうえに、斤量がプログノーシスより1kg重い59kgで、さらに外を回らされては5馬身差も致し方ないところで同情の余地はある。ただ、明け4歳牡馬の上位馬のレベルが古馬G2クラスということがはっきりした状況では、レベルの下がる長距離戦の春天を選択するのは正解だろう。超一流馬がこの距離を避ける以上は古馬といえどもG2レベル互角に戦える可能性はある。一方、2走前の菊花賞ではほぼフラットな馬場で、同世代のG1とはいえ、2着に3馬身半もの差をつけており、力の違いを見せつけたようにも見える。しかしながら、途中から先頭に立ったリビアングラスが4着に残る先行有利な展開を楽にマイペースでレースを作って番手に控える展開の利やレベルの低い4歳世代限定のメンバー構成に恵まれたもので着差ほどレース内容的な価値はないとも言える。

したがって、世代ではトップクラスではあるが突出しているとはいえないながらも、長距離戦で古馬も手薄で大阪杯同様にいわば空き家のG1ともいえるメンバー構成なことを考え併せれば、相応の高い評価を与えるべきである。

 

 

テーオーロイヤル

<前走>阪神大賞典1着

雨で稍重に馬場状態が悪化し、外差しが利かない極端に内側が有利な馬場で、超スローペースのインの3番手を追走する絶好の展開に恵まれたもので、レース内容としては着差ほど価値は高くない。とはいえ、前走よりもレベルの高いメンバー相手にも実力を見せつけた形。一方、2走前のダイヤモンドSでは一線級不在のハンデ戦の手薄なメンバー構成とはいえ58.5kgを背負いながらもきっちりと差し切っている。

したがって、得意の長距離戦を考えれば近3走の内容からも相応の高い評価を与えるべきだが、前走の結果だけを見ての過大評価は禁物である。

 

 

タスティエーラ

<前走>大阪杯11着

ほぼフラットな馬場ではあったが、G1らしくないややスローペースのインの4番手という絶好位を進みながらまったく伸びを欠いた。久々がどうとか、瞬発力勝負のレースがどうとかいうのはダービー馬としてみっともない。一方、3走前の菊花賞ではほぼフラットな馬場ではあったが、スローペースを後方から追走する形になり先行していたドゥレッツァから3馬身半も差をつけられてしまった。しかしこれは展開と位置取りの差であって、着差ほどの力の差はない

したがって、前走の敗因がはっきりしないのは不安(精神的に壊れていないか)ではあるが、ドゥレッツァとは馬場や展開次第で逆転できる可能性は残しているとみれば、リスク部分を差し引ても押さえ程度の評価は与えるべきである。

 

 

サリエラ

<前走>ダイヤモンドステークス2着

10頭立ての手薄なメンバーの長距離のハンデ戦でやや内側有利とは言えすべての馬が最内か1頭分外を回る程度で馬場の影響はほとんどなし。1周目は最内の4番手、2周目に入って1頭分外の3番手にあげて、そのまま脚を溜めて直線抜け出しを図ったが58.5kgのテーオーロイヤルに差されてしまった。楽な展開とテーオーロイヤルとは▲3kgの斤量差を考えると着差以上に力差を感じさせる結果となった。2走前のエリ女では内枠で内を通った馬が上位を独占する中で、外枠から大外を回して0.3秒差6着でありレース内容的には悲観するものではなかった。また、全姉サラキアが有馬記念で2着しているように長距離をこなせるだけの血統的な下地はあると判断できる。

したがって、テーオーロイヤルとの斤量差が▲3kgから▲2kg(自身も+0.5kg)になることを考慮すればテーオーロイヤルに先着するには馬場や展開のかなりの助けが必要と判断すべきである。

 

 

ブローザホーン

<前走>阪神大賞典3着

極端に内側が有利な馬場で、馬場の良い最内を追走しながら終始外に出そうとしていたため、結果として馬場の悪いところを走ることになったジョッキーの判断ミス。ただ、それがなければテーオーロイヤルに勝っていたかというとそこまでは疑問だが、少なくとも着差ほどの力差はなく力負けではない。2走前の日経新春杯ではやや内側有利の馬場で外を回って差し切っており、着差以上にレース内容としては価値が高い

したがって、さらなる距離延長に対応できるとみれば、当馬にテーオーロイヤルと同等程度の評価を与えるべきである。

 

 

ワープスピード

<前走>阪神大賞典2着

極端に内側が有利な馬場で、後方のインで脚を溜めて、ペースが落ち着いたバックストレッチで馬場の良い内側から上がって行く展開に恵まれたもので着順ほどの価値はない。川田の好判断と好騎乗に因る部分が大きい。また、2走前のダイヤモンドSでは勝ったテーオーロイヤルと斤量差▲2.5kgありながら1馬身以上の差をつけられてしまっている。

したがって、川田からの乗り替わりも加味すると当馬に高い評価は不要であり、好走には馬場や展開でかなりの助けが必要と判断すべきである。

 

 

サヴォーナ

<前走>阪神大賞典6着

極端に内側が有利な馬場で、少し無理をしてポジションを確保しようとしたために、馬1・2頭分ではあるが終始馬場の悪い外めを通らされてしまったのは同情に値するが、さらに不利な外を通った格下の牝馬ゴールデンスナップにも先着を許しており、4歳牡馬のレベルの低さを露呈した。また、2走前の日経新春杯ではやや内側有利の馬場で、8枠ながら離れた4番手で馬場のいい内側を追走する展開に恵まれたことと、じっとインで我慢して直線も内を突いて差した池添の好騎乗に依るところが大きいこと、さらには斤量がブローザホーンとは▲1kgの56kgだったことを考え併せると着順ほどレース内容としては価値は高くない

したがって、さらなるメンバー強化を考慮すれば、当馬に高い評価は不要である。

 

チャックネイト

<前走>アメリカジョッキークラブカップ1着

ほぼフラットでかなり力の要る道悪適性の要求度が高い馬場で、外から先行して逃げるマイネルウィルトスを直線でしっかり捕えた。とはいえ、別定のG2としては低調なメンバー構成に恵まれた感が強い。また、2勝クラスから7戦連続3着以内を続けているが良馬場では勝ちきれず、準オープンの勝ち上がりとなった六社Sも前走のAJCCも道悪での勝利である。

したがって、相手なりに崩れずに走る魅力はあるが一気のメンバー強化でもあり、当馬に高い評価は不要である。

 

 

ディープボンド

<前走>阪神大賞典7着

極端に内側が有利な馬場で外枠から常に勝ち馬の外を回らされたのは確かだが、馬体重が示すとおり太め残りは見た目にも明らかで勝ち負けできるレベルまで馬体が絞れていなかったように思われる。一方、近3走こそ結果が出ていないが敗因は明確で、4走前の京都大賞典では3着ながら負けて強しのレースをしており、年齢的な極端な衰えは感じられない。また、3年連続で春天2着の現役屈指のステイヤーである。

したがって、馬体が好調時のそれに戻っていさえすれば、当馬の巻き返しにも充分注意を払う必要がある

 

 

シルヴァーソニック

<前走>阪神大賞典11着

極端に内側が有利な馬場で、外枠から終始外を回らされたのは確かだが、それ以前に約1年ぶりの出走で息が入らずに4角手前であらあら状態になってしまった。これはこれで度外視可能。一方、2走前は昨年の春天で後方待機からしぶとく伸びて3着を確保した。明け8歳馬だが、3000m以上のレースで複勝圏を外したのは前走と一昨年の競走中止した春天だけで、実績は【2-0-4-2】で複勝率75%と安定している。

したがって、ひと叩きによって体調が戻っていれば昨年くらいの走りをされても驚けず、押さえ程度の評価は与えるべきである。

 

 

マテンロウレオ

<前走>日経賞4着

ほぼフラットな馬場ではあったが、マイペースの平均ペースでの離した単騎逃げで逃げ切り目前でゴール前で差されてしまった。G2常連と昇級組の比較的楽なメンバー構成だったが展開の利を生かし切れなかったところが能力的な限界にも見える。

したがって、さらなるメンバー強化を考えると当馬に高い評価は不要ではあるが、屋根がノリである以上かつて人気薄で大逃げを決めたイングランディーレの再現を狙っているのではないかと勘繰ってしまうが、考え過ぎだろうか。

 

 

ゴールドプリンセス

<前走>松籟ステークス(3勝クラス)1着

開幕週の内側有利な馬場に加えて、雨で馬場が重くなって外差しが利きにくい状態で、終始馬1頭分外を回らされながら、直線も外から差し切る強い内容。馬場のいい内を掬った2着馬に1馬身半、さらに3着馬に4馬身の差をつける圧勝劇。長距離の準オープンのハンデ戦の弱いメンバーに加えて自身は53kgの斤量に恵まれたのは確かだが見どころのあるレース内容だった。また、2走前の八坂Sでは不利を受けて7着に敗れているが、2着のゴールデンスナップは阪神大賞典で不利な外側から差して5着に好走しており、3走前の高雄特別ではそのゴールデンスナップを降している。配合的にもHalo5×4の系列ぐるみを主導に明確性を持たせ、AlmahmoudがNorthern Dancerと主導を結び付け、RobertoがHail to Reasonを通してスタミナを補給。さらに1949年の2冠馬トサミドリの6×7の系列ぐるみがスタミナを補給しているのには感動さえ覚える。母の母方にやや世代後退している部分があって影響バランスを崩してしまっているのは惜しまれるがしぶとい末脚を持った中距離ランナーである。

したがって、いきなりのG1は明らかに荷が重いが、試金石の一戦になればと期待しながらレースを見たい。

 

 

スマートファントム

<前走>御堂筋ステークス(3勝クラス)1着

雨で馬場は重くなりはしたがほぼフラットな馬場で8頭立ての少頭数のレースを後方で脚を溜めて直線で差し切ったのは立派だが、2着馬は3勝クラスで11戦、3着馬は7戦しても勝ち上がれない弱いメンバーに恵まれたものでレース自体の価値が高くない。6着のタイムオブフライトは松籟Sで2着しているが、松籟Sでは56kgで馬場のいい内を掬ってのもので、今回は58kgですんなり馬群を割った勝ち馬に対してインで詰まって最後は追えない状態になってのものである。

したがって、2連勝でオープン入りとはいってもレース内容としての価値は高くなく、松籟Sのゴールドプリンセスに劣る内容であることから、当馬に高い評価は不要である。

 

 

春天の有力馬を中心に事前検討してみた。

今週のポイントは以下のとおり。

①G2レベルでしかない古馬と明け4歳トップクラスの力量比較

 どう考えても胸を張ってG1馬といえる古馬は不在で「空き家のG1」レベル。これならレベルが低いと酷評され続けている4歳牡馬でも太刀打ちできるかも。

②土曜日の雨

 火曜日時点の天気予報では週末は土曜日雨で日曜日は曇り時々晴れで気温も上がる。雨量にも依るが、もともと春天は内枠有利なレースであるうえに、雨が内から乾いて内側が良馬場でも外側は稍重か重馬場で外差しが利かないことはよくある。

③逃げ馬不在

 逃げ馬不在どころか、押し出されても行きたくないという馬の方が多そうで展開に注文が付きそう。馬場と併せて注意が要る。

 

今週も直前までじっくり悩む楽しい時間が過ごせそうだ。