シンエンペラー、実力を見せつけるか

 

2023年勝ち馬 タスティエーラ

 

トライアルを使わずにクラシックに直行する社台・ノーザンFのパターンが多くなってきたので、チャンスを求めてレベルの低い馬たちが集まる傾向が強くなってきたクラシック前哨戦。わからないので、とにかく登録全馬の前走を中心に事前検討してみたい。

<登録12頭:フルゲート18頭>

 登録全馬出走可能


シンエンペラー

<前走>ホープフルステークス2着

ほぼフラットな馬場でインの5番手あたりの絶好位を確保して、直線では一旦抜け出すもレガレイラの切れに屈した形。硬い芝の瞬発力勝負には不向きな配合どおり、レースでも切れ負けた。一方2走前の京都2歳Sでは、ほぼフラットな馬場で出遅れて後方から。内に入ってロスのない競馬をして、直線は馬群を捌いて差し切った。これはモレイラの好騎乗もあるが、出遅れて厳しい展開になっても勝ち切ったこと自体を評価することにする。

したがって、スピードの引き出しには課題はあるが、メンバーレベルを考えると相応の高い評価を与えるべきである。

 

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<配合>父Siyouni 母Starlet's Sister 母の父Galileo

主導はNorthern Dancer5・5×4・6・7・7の系列ぐるみ。Mr. Prospector、Buckpasserなど米系の血がスピード・スタミナを補給。比較的少ないクロス馬で父母の良さが押さえられた点がポイント。課題は硬い芝への適応で、瞬発力勝負には不安は残るが、凱旋門賞を制した全兄ソットサスの実績どおりの優秀な配合で一流の中・長距離ランナーに育つ可能性がある

 

トロヴァトーレ

<前走>葉牡丹賞(1勝クラス)1着

中山開幕週の内側有利の馬場で内で脚をためる展開には恵まれたが、直線で苦しい位置に入りながらも一気に突き抜けて2馬身差をつけており、力の違いを見せつけた。一方、葉牡丹賞は暮れの中山開幕週で例年時計が出やすく、過去から勝ち時計だけで上位入線馬は過大評価されがちである。例年ほど時計自体は出ていないが、ホープフルSの勝ち時計と0.2秒差を額面どおり受け取るべきではない。

したがって、急激なメンバー強化であっても、それなりの高い評価を与えるべきであるが、過大評価すべきではない

 

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<配合>父レイデオロ 母シャルマント 母の父エンパイアメーカー

Mr.Prospector4・5×5・5は単一クロスで、主導はトライマイベスト(=El Gran Senor)5×4の系列ぐるみ。次いでNureyev5×5の系列ぐるみ。Buckpasserがスピードを補給。主導の明確性に加えて、父母内に大きな不備はなく、影響度バランスも良くまとめられており、開花を果たせば安定した走りが期待できる芝ダート兼用の中距離ランナー

 

サンライズジパング

<前走>若駒ステークス1着

ほぼフラットな馬場ではあったが、重馬場で力の要る状態。7頭立てで最後方に近い位置からの展開になったが、直線では一気に突き抜けて力の違いを見せつけた。ただし、少頭数で弱いメンバー構成に恵まれた感が強い。事実、2着のミカエルパシャは次走のすみれSでは勝ったサンライズアースの捲りに潰されたとはいえ6着に沈んでいる。一方、2走前のホープフルSでは結果的にシンエンペラーに2馬身離されてしまっているが、これは直線でのシンエンペラーの斜行による不利のためである。あれがなければシンエンペラーに先着していた可能性もある
したがって、当馬にはシンエンペラーと同等の評価は与えるべきである。

 

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<配合>父キズナ 母サイマー 母の父Zoffany

Halo4×5・6は中間断絶だが、血を集めるうえでは有効。主導はNorthern Dancer5・6×6・6・7・8・8の系列ぐるみ。これにSecretariat5×7がスピードを補給。母内の世代後退で父母の影響度バランスを崩しているため、安定味に欠けることは想定されるが、父方の血は上手く生かされている。芝ダート兼用で力の要る芝やダートの中距離では好調期に意外性を発揮することは可能

 

ファビュラススター

<前走>3歳1勝クラス(芝2000m)1着

若干内側が有利だがフラットに近い馬場で、明け3歳の条件戦には珍しく平均ペースで流れて前潰れの展開に恵まれたもので、レース内容的には価値が低い。時計は出ているが、昨年12月からの中山の馬場は例年以上に時計が出る馬場であったことと、上記のようにレースが流れたことに因るものである。
したがって、2戦2勝の未知の魅力を考慮しても、高い評価は不要であり、好走にはかなりの展開の助けが必要と認識すべきである。
 

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<配合>父エピファネイア 母ヴンダーゾンネ 母の父グラスワンダー

主導はRoberto4×4の系列ぐるみで、この主導の明確性が長所で、主導の傘下でHail to Reasonがスピードを、Nashuaがスタミナを補給する血の集合力もよい。父母を通して大きな不備はなく、父母の影響度バランスも比較的よくまとめられている。ただこれといったインパクトはなく、無難にまとめられた感じもある。Roberto主導の割にはスピードもあり、芝ダート兼用でマイルもこなせる中距離ランナー

 

シュバルツクーゲル

<前走>東京スポーツ杯2歳ステークス2着

Cコース替わりでもほぼフラットな馬場で、逃げたテリスルルから大きく離れた2番手をマイペースで気分よく追走するポジションに加えて、平均ペースながら前残りの展開に恵まれたものであり、レース内容としての価値は高くない。また、このレースの3着馬ファーヴェントは次走のきさらぎ賞で6着に敗れており、レースのレベル自体が低かった可能性が高い。それはあがりの1Fで12.4秒とその前の坂の登りの1Fよりも+0.7秒時計がかかっているにもかかわらずそのまま前が残っていることからもわかる。

したがって、重賞2着馬とはいえ、前残りの展開に恵まれたときの押さえ程度の評価を与えれば充分である。
 

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<配合>父キズナ 母ソベラニア 母の父Monsun

Northern Dancer5・6×6は中間断絶で血を集めるうえでは有効だが、主導の明確性を欠いた。幸いアウトブリードで影響が強く出るわけではないが、母内ドイツ系の血が遺伝に参加しておらず信頼性を欠く要因になる可能性がある。一方、スピードはAlmahmoud、Nasrullahから、スタミナはDonatello、Hyperionから補給。父の良さを比較的シンプルに再現している。芝の平均ペース向きの中距離ランナー

 

シリウスコルト

<前走>ホープフルステークス6着

ほぼフラットな馬場で特に内側が有利というわけではなかったが、内でロスのない競馬をし、4角ではシンエンペラーの直後につけたが直線で離されてしまっており、完全に力負けであった。

したがって、さらなるメンバー強化を考慮すると当馬に高い評価は不要である。

 

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<配合>父マクフィ 母オールドフレイム 母の父ゼンノロブロイ
主導はMr. Prospector5×5・7の系列ぐるみ。さらにLyphard6×6、Roberto6×7の系列ぐるみだが、Lyphardは5代目のNorthern Dancerと、Robertoは5代目のHail to Reasonとそれぞれ位置が逆転しており、瞬発力勝負に不安を残す。芝ダート兼用で好調期にマイル前後の距離で意外性を発揮する可能性はある


ダノンエアズロック

<前走>アイビーステークス1着

ほぼフラットな馬場で、超スローペースの離れた2番手を追走する展開に恵まれてのもので、レース内容的には後のホープフルS勝ち馬レガレイラを破っているからといって世代最強というわけではない。実際にレガレイラが脚を余したことも確かなので、この一戦だけでレガレイラと勝負付が済んだと見るのはむしろ危険である。事実、このレースの2着馬ホウオウプロサンゲは、京都2歳Sでシンエンペラーに完敗しており、そのあとのすみれSでは勝ち馬から1馬身半離された2着のジューンテイク(朝日杯FS4着)からも1秒近く離されてしまっている。
したがって、前走でレガレイラを破っている事実からもかなり高い評価を与えるべきだが、それだけで絶対視は禁物である。

 

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<配合>父モーリス 母モシーン 母の父Fastnet Rock

主導はDanzig5×4の系列ぐるみ。主導が明確になったことと、3代父母8頭中7頭がNorthern Dancerを持ち血の結合状態もいいことがこの馬の長所。さらにRed GodやRaise a Nativeのスピードも生きている。父母間に不備はなく、母の父Fastnet Rockを強調しつつ父母の影響バランスも非常に良くまとめられていて安定した走りが期待できる。開花を果たせば芝で距離融通性のある一流のマイラーに育つ可能性がある

 

コスモキュランダ

<前走>3歳1勝クラス(芝2000m)2着

若干内側が有利だがフラットに近い馬場で、スタートで出遅れて後方で、勝ったファビュラススターの1頭分外めを追走しながらもクビ差で走っており、レース内容としてはこちらが上。但し、ファビュラススターと同様に前潰れの展開に恵まれたものでともにレース内容としては価値が低い。また、2走前の京都2歳Sでも上位入線馬からは離された8着に敗れており、強いメンバー相手では通用していない。

したがって、当馬に高い評価は不要である。

 

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<配合>父アルアイン 母サザンスピード 母の父Southern Image

主導はHalo4×4の系列ぐるみ。主導の明確性は長所。Northern Dancerの系列ぐるみと結合してスピードを補強。Sir Ivorがスタミナ・スピードを補強しているが、同時に前面でHis Majestyもクロスが派生してややシンプルさを欠いたことは惜しまれる。また父の母方に軽微ながら遺伝に参加していない部分があり、影響度バランスも崩した。瞬発力勝負と安定性にやや不安を残す。好調期に意外性を発揮する距離融通性のあるマイラー

 

アドミラルシップ

<前走>ゆりかもめ賞(1勝クラス)7着

極端に内側有利な馬場で、終始外を回らされてのもので同情の余地はあるが、弱いメンバーを相手に3番手の外を追走しながらの結果としては物足りない。一方、2走前のホープフルSでは道中は勝ち馬のすぐ前の内側で脚を溜めて、直線も内から伸びて4着。ロスなく乗ったドイルは褒められていいが、後続が外に振られた恩恵に依るものでレース内容としては微妙である。

したがって、さらなるメンバー強化を考慮すると当馬に高い評価は不要である。

 

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<配合>父ゴールドシップ 母ヴィーヴァブーケ 母の父キングカメハメハ

サンデーサイレンス3×4は単一クロスだが、血を集めるうえでは有効。主導はNorthern Dancerクロスを伴うノーザンテーストの5×4。米系の血で比較的シンプルにまとめられた反面、欧州系の血はほとんど生かされず、父方メジロマックイーン内には遺伝に全く関与しない部分が生じた。またそれが父母の影響度バランスを崩し、安定性や成長力を欠く要因になりうる。時計のかかる芝やダートで好調期に意外性を発揮する可能性はある

 

エコロレイズ

<前走>3歳1勝クラス(芝2000m)4着

若干内側が有利だがフラットに近い馬場で、明け3歳の条件戦には珍しく平均ペースで流れたレースを外から早めに動いていったことを考えると、レース内容としては着順以上に強い競馬だった。とはいえ、上記ファビュラススター、コスモキュランダで書いたようにレース自体のレベルが低かった
したがって、当馬に高い評価は不要である。

 

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<配合>父アメリカンペイトリオット 母ペブルガーデン 母の父ディープインパクト

主導はNorthern Dancerクロスを伴うLyphard6×5の系列ぐるみ。その父Northern Dancerが父方4代目にいて位置が逆転しているので、瞬発力勝負に課題を残す。米系に偏った父の血では母の父ディープインパクトをはじめ母方の欧州系の血が充分に生かされず中途半端になった。それでも影響度バランスは悪くなく、父母間の大きな不備もなくまとめられた点は救い。時計のかかる芝かダートで好調期に意外性を発揮する可能性はある

 

ニシノフィアンス

<前走>京成杯5着

ほぼフラットだが若干内側が有利な馬場で、最内枠からインの4番手の絶好位を追走する展開に恵まれながら、前を捉えることはできず、後続には差されて重賞では力負けだった。2走前のデビュー戦勝利は超スローペースを楽にマイペースで逃げてのものでレース内容としての価値は高くない。

したがって、当馬に高い評価は不要である。

 

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<配合>父サトノダイヤモンド 母ニシノラヴコール 母の父ルーラーシップ

主導はTurn-toクロスを伴うHail to Reason5・6・7×5。次いでNorthern Dancer6・6・6×5・6・7・7の系列ぐるみ。母方キングカメハメハの世代後退で母の父の影響が極端に弱くなってバランスを崩しているが、その割には全体のバランスは保てている。父母間に不備もなく無難にまとめられている。血を集めるうえではポイントがわかりにくくこれといった特徴がないが、芝ダートを問わず中距離で好調期に意外性を発揮する可能性はある


レッドテリオス

<前走>3歳新馬(芝2000m)1着

ほぼフラットな馬場ではあるが、かなりの道悪で重馬場適性が必要な状態で大外枠から外めの好位を確保して直線でも外から突き抜けた。終始外を回らされて2着を2馬身離したことを考えるとメンバーの中では力が抜けていた。道悪巧者であることははっきりした。

したがって、まだ2戦目であり良馬場での走りはわからず、試金石の一戦と認識すべきである。

 

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<配合>父ジャスタウェイ 母ショーコ 母の父Efisio

主導はLyphard5×5の系列ぐるみ。だが、5代目にLyphard、Northern Dancer、Nearcticの3世代が並んでしまっており、瞬発力勝負に課題を残す。これは当馬に限らずジャスタウェイ産駒にありがちな傾向。父方の米系の血に対して、母方の欧州系の血がマッチしておらず、血の統一性にも欠ける。時計のかかる芝かダートのマイルから中距離で好調期に意外性を発揮する可能性はある
 

弥生賞登録全馬を前走の走りを中心に配合を含めて事前検討してみた。

今週のポイントは以下のとおり。

①出走各馬の能力比較

 ホープフルSの3頭と平場の1勝クラスの3頭は力の比較ができる。それ以外の比較をどう見るか。

②中山の馬場状態

 先週雨上がりの土曜日と雨の中の日曜日に使われた馬場が今週どう変わったか。そして金曜日にまた雨予報が出ている。馬場状態に注意したい。

 

手ごろな頭数とはいえ、変数が多くなりそうなのでしっかりと比較をしたい。