火葬場までの道程は家族で何度も通った道だった。
見慣れた景色。
隣で運転をする夫の横顔。
他愛のない会話。
幸せだった日々が思い返される。
夫がいない運転席。
会話のない車内。
最後の家族のドライブ。
火葬場に着き、そのまますぐに火葬。
私が知っている流れと違う。
もう一度火葬場でお別れが出来ると思っていた。
待って。
まだいかないで。
私パパに何も伝えてない。
お別れの挨拶だってしない。
もう一度、会わせて。
触れさせて。
私が離れないのでスタッフの方が困って
「最後にもう一度開けましょうか」
そう言ってくれた。
そばに寄り、夫の頬に手を添えた。
最後のお別れをしなきゃ。
ちゃんと伝えたい。
パパ…
パパ、すきだよ
何も出来なくてごめんなさい
私、がんばるから
子供と一緒にがんばるから
私、しあわせだったんだよ
今までありがとう
ゆっくり休んでね
伝えても伝え足りない。
なにをどうやったって離れたくない。
納得なんて出来ないし受け止められない。
泣き叫んでも
泣き崩れても
もう待ってはくれない
夫を見送るしかなかった
お骨になってしまった夫。
私が知る夫の姿はもうない。
火葬場からの帰り道。
遺骨を膝に乗せ
両手で抱いた
あったかい。
ずっとずっと冷たかったね。
寒かったね。
最後のパパのぬくもり。
ほんの束の間、パパを抱きしめ目を閉じた。