【第6話】大自然の脅威
前回までのあらすじ。夜行寝台SL列車の三等の切符を手にした。命を取られるか、お金を取られるかのどちらかだと脅され、感染症、寒さ、犯罪と起こり得る数々の危険リスクを想定しSL列車に立ち向かう。
インドであろうとどこであろうと腹が減っては軍は出来ぬ。食料も2食分を買い込み、いよいよ決戦の準備は整った。
アグラーからバラナシの予定される所要時間は約13時間。Wi-Fiも使えないのでそそくさとベッドに横になった。三等のコンパートメントには外国人は見当たらず、全員がインド人だった。暗闇に白く浮かぶ10個の眼が光る。この後、本当に怖いのは人間ではなく、大自然だということを目の当たりにすることになる。
しばらく列車は何事もなく走行し、私は到着後の計画とそのシミュレーションをしていた。すると突如キャビンに響く罵声で我に返った。ヒンズー語なので内容は全く理解できなかったが、車掌が寝台で寝ていた男性に怒鳴り散らしている模様。
ガンジーの非暴力精神がいきついている訳か暴力沙汰にはならなかったが、あまりの剣幕にその場にいた全員が目を見張り、固唾を呑んだ。
15分後、罵倒された彼はスピードを緩めた列車から飛び降りた。この段階でようやく状況が掴めた。いわゆる彼は無賃乗車という犯罪をはたらいたのだった。彼が降車して呆気なく事件は解決した。
一息ついて、寝台で横になって目を瞑っても一向に眠りにはつけなかった。その理由は恐怖からか。いいや、違う。寒さで眠れなかったのだ。
北インドの1月は日本の真冬よりも厳しい寒さである。秋口の様な軽装だった私は、床に就く前に手持ちの全ての洋服を2枚、3枚と重ね着して備えた。
空調が設置されていないのでそれでも極寒だ。団子虫のように丸まったり、寝ながら正座を試みたりするが、なんら寒いのは変わらない。むしろこのまま寝入ってしまったら朝になると、冷たくなっているのではないかとも想像した。
日本ではホームレスでもない限り、暖が取れず、寒さにもがき苦しむのを体験することもないだろうが、以後、寒さとは命を落とし得る危険性があるものと捉える様になった。
実際この年は大寒波到来で凍死者が過去最多だったと言う。もう二度と経験したくないそんな冷たい夜だった。
夜が来れば必ず朝が訪れる。地球上のどこかではいつもサンライズを向かえている。日がいずると太陽のおかげで幾分か気温も上昇し、氷の世界は緩やかに融けていった。大自然のスケールの大きさを身を持って体感した。
正午を過ぎると小腹が空いてきた。手持ちの食料が底をついたのだ。20代の育ち盛りがバナナやクッキーでは足りるわけがない。
お茶売りが通ったのでチャイを1杯頼んだ(10円)。素焼きのレンガ色の器に並々と注がれた。甘い。空腹だから余計に美味しく感じる。飲み終えた器はどうするのか。唾液は不浄なものと考えられているので回収などはしない。
今までインドの投稿を目にしてきた人ならすぐに気が付くであろう。ゴミは道端に捨てるのだ。ゴミ箱なんて毛頭ない。ゴミを拾う事を生業としているカースト下位者の職業を奪うわけにはいかない。車窓から投げ捨てるか、あるいは列車の床にポイ捨てをする。その為、線路も車内もゴミの山、山、山。溢れかえったゴミ山はこの国の文化そのものだと感じる。
チャイで身体は温まったが、お茶1杯でお腹がふくれるわけがない。ベッドに腰掛けているインド人男性、が何かポリポリと食べていたので、その前でかがんで覗き込んでみた。じっと食べ物を見つめる私。音を立てて食べ続ける彼。お腹が空いて欲しそうな顔をする私。尚も、食べ続ける彼。2、3組にお腹を空かせた外国人を演じたが、誰も食べ物を分けてはくれなかった。
私が愛して止まない中東では、お菓子やらフルーツやらを分けてくれるが(欲しそうな顔はしなくともただ私がいるだけで老若男女が寄って来る)インドではそうはいかない。仕方がない、食料調達の旅に出ることを決意した。
時々列車は駅と思われる所で暫く停車をするが、その時間がまちまちで5分~20分。車内アナウンスもない為、自分が今どこにいて、後どれぐらい到着に時間がかかるのかもわからない。車内でたまに売り子が通る。いや、炒った豆やポン菓子のようなものではなくお腹に溜まるご飯が食べたいと思った。
どこかの駅に到着した際、乗り遅れるかもしれないというリスクをかえりみず食料の為、勇気を出してホーム(らしき)に飛び降りた。出発時刻は誰もわからない。屋台を見つけて食料を調達し無事帰還に成功する。
何を選んだかなど全く記憶にないが、お腹が満たされて満足したと言うことだけは鮮明に覚えている。そう、気が張りエネルギーの必要とするインドでは腹が減って軍はできないのだ。
SL寝台列車の旅。結局8時間のディレイの後、21時間かけて到着した。日没の午後9時をとっくに回っていた。バラナシ駅に降り立ち長い戦いはようやく下車と共に終わりを告げたと思いきや、そうはいかないのがインドである。ホテルに到着するまでに驚愕劇がもう一幕あったのだ。
この続きはまた明日。
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