「で、今日はどうしはりますか?」
いきなり、茶屋団子が後ろから京都弁で話し掛けてきた。
おっと! 茶屋さん、いたのね。
いや、どうしはりますかって言われても、
ワシら今まで六条の指示で行動してきたからに、主体性ゼロやねん。
どないしましょ?
「あの、よろしければ、私が案内しましょうか?」
その時、二条氏が突然、名乗りを上げた。
「いや、皆さんのお話をうかがっていると、私が来たのとまったく同じ行程なので、
驚いているんです。
もしかしたら、私のいた世界と、こちらの世界は、ほんの少しずつ違うだけで、
ほぼ一緒ではないのかと思います。
えーと、今日の予定は・・・」
二条氏はそう言うと、なにやら鞄から日程表らしきプリントを取り出し、調べ始めた。
「えーと、今日は・・・あった、あった、そうそう、
今日はライプチヒに移動して、印刷会社の工場見学をします!
みなさん、どうします?」
は? 他の次元から来た人が何を言っているのだ。
とは思ったが、もしこれから行った先で、何事もなかったように工場見学ができたなら、
それはそれで世紀の発見である!
ええい、毒を食らわば皿までよ! 地獄の先まで行ってやる!
ワシは行くで。
一応、問題ないよね?と天井を見上げたら、SK‐Ⅱ伊東が首からメガホンを下げたまま、
頭の上に両手を掲げ、大きな丸サインつくっている。
OK、ノープロブレム。
じゃあ、行こう!
荷物をまとめて外に出ると、なぜか昨日と同じようにチャーターバスが待っていた。
至れり尽くせりやんか。 ねぇ、茶屋さん。
あれ、茶屋さんがいない。
茶屋団子、どこ行った?
すると、梅田半休がうんざりした顔で、
「今しがた茶屋さん、みんなが半袖だから、わても半袖に着替えてきますわ!
って言って、みんなを待たせてどっかに行っちゃいましたよ。」
もう茶屋の旦那、協調性があるのか自分勝手なのか、よーわからん。
しょうがないので、皆でバスに乗って茶屋団子を待っていると、ワシの携帯の着信音が鳴った。
慌てて表示を見ると、組合の理事長からではないか!
にゃろーワシをこんな事に巻き込みやがって!
すぐさま電話に出ると、
「ミッション君、首尾は上々のようだね。
ミッション成功の連絡を受けているよ。
そこで今日は組合を代表して、
いよいよ我が業界を救う機密情報を入手できるそうじゃないか!
ちゃんと情報を入手してくるように!
成功を祈る。ツーツーツー」
おいおい、勝手に話して勝手に電話を切るなっつーの!
せやけど、予定通ってことか。
定刻を過ぎバスが発車すると、
トイレットペーパー片手に、茶屋団子がホテルから飛び出してきた。
「運転手さん、加速してください!」
全員の声が響いた。
<つづく>