五島 莉絵(ごとうりえ)です。
書店での出来事です。
文庫本のコーナーで本を探していると、
「突然すみません」と同年代の女性に
声をかけられました。
一瞬、何かの勧誘かと身構えましたが、
「これから本を買うご予定ですか?」と聞かれ、
「は、はい…」とためらいがちに答えると、
「使っていない図書券があるんです。
もし、よろしければ買い取っていただけないかと思いまして」とその方。
一瞬ポカンとしてしまいましたが、
意味がわかって、
「別にかまいませんが」と答えたものの
失礼ながら
怪しいという思いも少なからずありました。
でも明るい笑顔で、
「これなんです。今、レジで確認したらちゃんと千円分あって使えると聞いてきたので安心してください」と仰います。
ところが、あいにく一万円札しか持ち合わせがありませんでした。
そうしましたら、
その方は、ご自分のお財布を確認して、
あ~、お釣りが千円足りません。
ちょっと待って下さい。用意してきますからと、書店を飛び出して行かれました。
ちょっと、ほっとして(笑)
本を探していると、
「お待たせしました〜」とその方が戻っていらっしゃいました。
息をきらせて、お釣りまで用意してきたその方に関心しながら
図書券を受け取り、買い物をすませました。
夜、その日の不思議な出会いを
夫に話していて
金券ショップが近くににあることを思い出しました。
そちらで売った方が簡単なのにと思いましたが
金券ショップでは、定価では買い取ってくれません。
だからかしら?と想像しながら
「数十円位なら仕方ない」とは考えない
その方の金銭感覚から
「一円だからと軽く考えていると
一円足りなくて泣くことになる」と言っていた
母の言葉を思い出しました。
物価高やインフレの不安の中、
お金に対する感覚を改めて考え直す出来事でした。
「それにしても
いったい、どこで千円を調達したのかな?」と夫。
確かに…
不思議なことばかりの出会いでした。