こんにちは。
五嶋 奏です。
今年は桜の花を
いっぱい、いっぱい
楽しみました。
それを眺める
幸せそうな姿も
心のアルバムに
たくさん残りました…
その日は
街中に花びらが舞う
暖かな日で
私は帰り道
車イスの奥さま
介助をされるご主人と
同じバスに
乗り合わせました。
奥の席に座った私から
吊革につかまって外を眺める
ご主人の横顔がちょうど
見えました。
よく日焼けした
彫りの深いお顔
窓を見つめたまま
ずっと無言でした。
しばらくして
突然
ご主人が窓の外を指差し
奥さまに何か呼びかけています
満面の笑顔で
それは
桜並木の遊歩道が続く川辺の道に
バスがさしかかった時でした。
風に舞う花びらが
川の上を一面のピンク色に
染めていました。
ご主人の笑顔は
少年のように耀いていて
何と仰ったのか
私には聞こえませんでしたが
一瞬で通りすぎてしまう景色を
奥さまに見せなければと
「ほらっ、見て、見て」
と呼びかけているように
見えました。
その時のお顔が
ストップモーションで
今も
私の深いところに
残って
光を放ってくれています。