春季高校野球、神奈川大会の決勝戦!
今年は天候に恵まれ
4回戦開催の危機も乗り越え、日程通りに今日の決勝戦を迎えた。
ここまで大会を運営された高野連の方や審判員
会場当番校の生徒さん達にまず初めに深く敬意を示したい。
甲子園に直結しない春の大会。
昨日の準決勝の勝利で関東大会の出場権も決まり
今日の決勝戦は1位通過決定戦的な要素が強い。
それでも外野解放、1万1千人の観衆が詰めかけたのだから神奈川の高校野球熱は凄まじい。
桐蔭学園
VS
桐光学園
12時10分。
ユニフォームに着替えた選手たちのアップが始まり
列の1番奥でキャッチボールをする齊藤の姿がそこにはあった。
この瞬間、今日の先発マウンドに齊藤があがることが分かった。
齊藤は志願してでも今日の先発にこだわっただろう。
この試合でも完封を狙うしかない。
いや、この試合でこそ完封を決めるしかないのだ。
程なくして桐光の選手たちもキャッチボールを開始した。
齊藤は後ろを振り返り
キャッチボールをする桐光の選手たちに視線を配っていた。
松井は・・奥から2番目。
松井の先発は無い。
それを確認し齊藤はキャッチボール相手にひとつ強い球を投げ込んだ。
松井と勝負したかった。
大会No,1左腕を決める頂上決戦をしたかった。
そんな悔しさの表れだったのだろうか。
定刻通り、13時に決勝戦の開始を告げるサイレンが鳴り響いた。
そのまっさらなマウンドに齊藤があがった。
センター方向を向きプレート上で
ひとつ大きな深呼吸をした。
この試合も完封で決めてやる。
そんな強すぎる思いを落ち着かせていた。
まず、桐光の先頭重村に対して
ツーストライクと追い込みながらセンター前にヒットを許した。
ノーヒットノーランも完全試合も消えた。
狙ってた訳じゃないだろうが苦笑いがこぼれた。
しかし痛い先頭打者の出塁。
決勝戦完封勝利に向けてピンチからのスタートとなった。
ここで齊藤は屈伸運動をし
気持ちを再度落ち着かせた。
続く武はバントをしてきたが
フライを打ち上げさせ齊藤自らが掴んで送らせなかった。
3番水海からは三振
4番の植草にはライトに大きな当たりを打たれたが
あらかじめ深かったライトが掴んでスリーアウト。
まず初回を無失点で切り抜けた。
完封勝利達成まであと8イニング。
2回表、
桐光この回先頭の坂本にはセカンドに高々とフライを打ち上げさせた。
まずは先頭を切った。そう思った。
しかし南中時刻を迎えたあたりか
ちょうど真上にある太陽の光に目線を狂わされ
セカンドは落球した。
またも先頭打者の出塁を許した。
バッターは6番、今日先発ピッチャーの山田だ。
この打順は本来松井が打っているが
そのまま山田が入っていた。
今大会ここまで繋がっている桐光打線である。
打順はいじらずそのまま山田を6番に据えたのだろう。
そんな打者への油断と
送りバントを決め込んで投じた初球を
山田はセンター左に痛烈に弾き返した。
ノーアウト1,3塁。
状況は大ピンチとなった。
1点はもう覚悟するしかないのか。
それでも完封を決めたい。
7番竹中は初球にスクイズをしてきた。
齊藤は1塁線寄りで打球を掴み
左腕でキャッチャー伊勢のミットに返球した。
タッチアウト。
転がったのを見てランナーが走るバントエンドランが幸いした。
1アウトで1,2塁と変わった。
続く鈴木の打球はサード正面のゴロ
5-4-3と併殺を決め1点を覚悟したはずのピンチは無失点で切り抜けた。
表情には出さなかったが、齊藤はマウンドからベンチに弾むように帰った。
そのステップの弾みが齊藤の心の弾みとシンクロしていた。
3回表、
この回先頭の桐光9番中野の打ち上げたファールフライは
サード高橋が3塁側ベンチ前で好捕し先頭の出塁は断ちきった。
上空を見上げ、よく捕ったなと驚きの仕草を齊藤が見せた。
しかし続く重村にはまたもヒットを許してしまう。
毎回続くランナーの出塁。
武は三振に打ち取り水海の当たり
サードが前にこぼし急いで1塁に投げるが送球高くセーフ。
エラーでツーアウトながら1,2塁のピンチとなる。
守備に助けられることもあれば、逆にピンチを作られることもある。
しかしそこはお互い様だろ。
バックが作ったピンチも4番の植草から三振を奪い脱してみせた。
その裏、
四球、ヒット、犠打で桐蔭は山田から1アウト2,3塁のチャンスを作った。
ここまで毎回ランナーは出していたがあと一本が出なかった。
しかしここは4番が仕事をした。
桐蔭4番の増田が犠牲フライを放ち1点を先制した。
4回表、
先制点をもらった齊藤だったが、どうも今日は調子があがらない。
先頭の坂本にレフト前ヒットを許し、またも先頭打者を出してしまう。
そして山田を迎えた。
バッティングが良いのはさっきの打席で分かった。
ここは慎重にいったが強行策できた強気どおりに
山田はまたもヒットを放ちノーアウト1,2塁となった。
齊藤はマウンド上のロジンに手をやり、気持ちを落ち着かせていた。
続く竹中はバントを試みたが、それを許さなかった。
ツーストライクと追い込み最後もバントを空振りさせた。
3塁に進ませてなるものか。
1アウト1,2塁となり
8番鈴木もツーストライクと追い込んだ。
ここで一球外角に外した球だった。
その投球は必要以上に外に外れワイルドピッチとなった。
せっかくバントを許さなかったのに。
1アウトで2,3塁の大ピンチとなった。
伊勢からボールを受け取り
会話を交わした。
その会話の直後の球だった。
鈴木の足元にクロスファイヤーを投げ込み空振り三振!
渾身の投球の反動とともに齊藤は一回転し、雄たけびをあげた。
試合中に齊藤が感情をあらわにするのは珍しい。
9番中野はフルカウントと粘られたが
同じく足元に直球を投げ込み球審の右腕があがった。
連続三振でピンチを脱した!
見逃し三振を確認し、普段の齊藤らしく静かにマウンドを降りた。
5回表、
1アウトから武にデッドボールを与え
ツーアウトとするも盗塁を決められまたも得点圏にランナーを背負った。
いったい今日は何度ピンチを背負うんだ。
しかし幾度となく襲いかかるピンチも完封への執念で脱し
ここも4番の植草をカーブで三振に仕留めた。
5回裏に桐蔭は4番増田のタイムリーで1点を加えた。
前半5回が終わって2-0。
完封勝利達成まであと4イニング。
6回表、
グラウンド整備が行われ
新鮮になったグラウンドに選手が散ったが
今日の齊藤は変わらなかった。
先頭の坂本にデッドボールを与え
またしても先頭の出塁を許した。
そして6番の山田。
今日はノーアウト1塁で山田を迎えることが多い。
ここも3塁線に痛烈に弾き返されたが
わずかにラインの外でファールだった。
そこから落ち着き直し山田からは三振を奪った。
後続も抑え先頭の出塁を得点にはさせなかった。
6回裏、
この回から代わった桐光の1年生投手、恩地に対して
齊藤がライトフェンス直撃のツーベースで出塁すると
3塁に進み、9番星のスクイズで齊藤が生還した。
これで3-0。
7回表、
自ら長打を放ち、追加点となるホームへの生還も果たしたが
一向に齊藤の調子があがらない。
この回先頭の代打林にライト線にツーベースを許しノーアウト2塁。
打順はトップに返り重村。
今大会大当たりでプチブレイクを果たし
今日も齊藤から2安打を放っている。
1塁は空いている。
ここは歩かせて守りやすくしようか。
しかし昨日までの齊藤と違い
今の齊藤にそんな考えは無かった。
重村と勝負し、ファーストゴロに打ち取った。
この間にランナーは3塁に進ませたが
今日は内気にならず勝負してみせた。
1アウト3塁
なおピンチが続いたが強気になった齊藤は強かった。
続く武を直球で空振り三振に仕留め
左手を握りしめ腰のあたりでガッツポーズをしていた。
2アウト3塁
水海の打球はショート正面のゴロになった。
ショートが丁寧に裁いてこの回のピンチも脱した。
ベンチに戻る際に、表情には出さなかったが軽くショートに目をやり
ナイスショートと心の中でつぶやいていたのだろう。
8回表、
齊藤はツーアウトを取るも
代打伊藤にライト前に運ばれた。
しかしこの打球にライト増田がダイビングキャッチし
8回にして、この日初めて三者凡退で抑えた。
8回裏、
この回先頭の齊藤はダイヤモンドを回っていた。
桐光3番手の池田からライトスタンドにアーチを描いた。
4-0。
9回表のマウンドに齊藤が向かった。
完封勝利達成まで、あと1イニング。
しかし今日の齊藤は最後まで苦しんでいた。
先頭の7番竹中にセンター前にヒットを許した。
苦しい。
連投の疲れか。
今日はことごとく回の先頭打者の出塁を許してしまう。
続く8番鈴木はピッチャーゴロに仕留めた。
齊藤が捕って1-6-3とダブルプレーを決めた。
あと一人。
しかし最後のアウトを桐光が取らせない。
林はセンター前にヒットを放ち
打順はトップに返ってしまった。
ここで重村。
1番迎えたくない、1番厄介な打者。
苦しい。
齊藤は膝に手を当てた。
それでも、昨日の経験が齊藤を強くしていた。
重村の当たりはファーストへのゴロに仕留めた。
ファーストの清水がそのままベースを踏んだ。
桐蔭学園14年ぶりの優勝!!
齊藤が完封で優勝を決めてみせた!
その最後のアウトの瞬間を齊藤は見届け
ガッツポーズこそしなかったものの表情が少し緩んでいた。
クールな齊藤にとっての最大限の喜びの表現だろう。
苦しんで
もがき苦しんでの8安打完封!
齊藤の完封への執念が勝った
執念の完封勝利達成!!
昨日の完封失敗劇からわずか1日、
わずか1日でこんなに強くなった齊藤を観られるとは
高校生の成長は凄い!
感動の完封優勝劇だった!!
そしてこの歓喜の陰に
悔しい思いをしている者がいた。
桐光学園の松井である。
今日は登板の機会は与えられなかった。
松井の登板を楽しみにしていた観客もいただろう。
しかしそれ以上に
誰よりも当の本人が一番投げたかったことだろう。
ライバル左腕の齊藤に完封で優勝を決められた。
その事実がさらに悔しさを助長させただろう。
夏、互いに決勝まで勝ち上がらなければ実現しないこのカード。
夏の決勝の舞台で再び対決し
次こそ雌雄を決しよう!
神奈川No,1左腕を決める頂上決戦を実現しよう!
二人のサウスポーエースは
互いに夏、決勝での再戦を胸に誓ったことだろう。
桐蔭学園、優勝おめでとう!































