テーブルの上にはラップのかかった夕ご飯。


お母さん、今日はおれの好きなのにしてくれたんだ。


帰ってきてすぐにつけたテレビはニュースを流していて、つまらない。


夕日が落ちて、部屋がだんだん暗くなってきた。


電気を付けないと宿題出来なくなるくらい、薄墨色の部屋。


今日の習い事はスイミングだったからか、体が少しだるい。


ご飯食べたら、元気になるかな?


ラップのかかったお皿をレンチンするけど、ちっとも食べたくない。


なんか、寂しいな。


お父さん、お母さんがいない日なんてざらで

小さい弟なんてお母さんが保育園から連れて帰ってくる途中で寝ちゃうから、めったに喋ることもない。


お母さん、何時になるかな?


今日は学校からのお便りに返事を貰わなきゃいけないんだけど。


ご飯に口をつけただけで、ソファに横になる。


なんか、寒いな。




少し眠ったのか、人の気配で目が覚めた。


「お母さん?」


冷たい手が、おでこを触る。


ああ、気持ちいい。


長い指が前髪付近を撫でてくれる。


「翔、熱があるよ。

ベッド行こうな」


抱き上げてくれる腕は、その綺麗な顔とはうらはらに力強い。


「智くん、今日満月?」


「うん」


口数の少ない智くんは、少しだけ心配そうな顔。


大丈夫なのに。


子供が熱を出すのはよくあることだって、先生言ってた。


ベッドに寝かせてくれて


「何かいるか?」


って聞くけど、なんにも欲しくない。


智くんの冷たい手をギュッて握ってたら、眠くなってきた。


いつもより優しく髪をかき回してくれる手が気持ちいい。


智くんがいるから、寂しくないよ。


一人の留守番もご飯も大丈夫。


「智くん、いてね」


「うん」




朝目が覚めたら、お母さんが熱があったのにごめんねって、抱きしめてくれた。


もう、熱も下がって大丈夫なのに。


学校に行く前にカレンダーを見たら、あれ?


満月は来週だ。


智くん、間違えたのかな?