両腕を広げて、智くんの前に立つ。


「ん?」


「ほら、ほら」


胸まで前に出すようにして立つ俺を、


智くんは不思議そうに見る。


最近の何かに困惑してるような、泣く寸前のような顔よりずっと良い。


「翔?どうした?」


「ここ、来てよ」


不可解な表情のまま、俺の前に浮き上がる智くん。


そっと、その体を抱きしめる。


冷たい智くんの体は、ふわりと風の匂いがする。


ああ、この香りだ。


両親が亡くなったあと、慰めてくれるのは智くん。


いつもそばにいてくれるのは、智くん。


「泣くなよ」


そう言って、優しく髪をかき回して、そっと抱きしめてくれた。


智くんの優しい声と、この風のような香りに、麻痺させられるように


俺の寂しさは薄くなる。


「なんだ?大きな体してまだ甘えたいのか?」


「ちがーう!!」


俺が智くんを癒せるように、早く大人になるから待ってて。