つづきです。
幼い息子2人を嫁ぎ先に残し、家を出たトラは、飯場の飯炊き女として働いていた。
出戻り娘に世間の目が冷たかったとはいえ、普通は実家に戻るだろう。
しかし、トラは実家には戻らなかった。
あらくれ男どもの現場に泊まり込みで、飯炊き女として働くという、その選択もまたトラの気性の激しさを感じさせる。
なぜ、そうまでして外で働いたのか。
家電の無い時代の農家なら、実家でいくらでも家事仕事はあっただろうに。
その驚きの理由もまた、トラが亡くなった1年後にわかることだった。
ここまでは、我が家の家族とトラには接点は無かった。
このまま、縁もゆかりも無く生きていたかも知れない人だった。
つづく