こうありたい

姑の一周忌だった。

最期に立ち会ったのは　本当の身内だけで
私は　苦しい時を見ていないからかも知れないけど

最後まで義母らしかったと思う

子供たちにかこまれて

治ったらマグロを食べたい
イカも食べたい

そんな風に　治ったときのことを夢見て

叶わないとしても
そういう最期　悪くないなぁと思う


私の父は　もっと過激(笑)だった

なんで俺が　

こんな目に合わなくちゃならないんだ！

医者が悪い、看護師が悪い
治療が悪い、薬が悪い

全部、他の誰かや何かのせいにして
怒りまくり

何とかしてタバコを吸おうと

体力的にもう　歩けないはずの体で
部屋を抜け出して　建物の外の喫煙所で

お金を渡してタバコを

分けてもらっていたのではないか？たぶん。


亡くなった後の病室に
病院では買えないはずのタバコがあって(笑)

水分さえ　受け付けないほどの

末期の体で売店で買ったらしい

「胡桃小女子の佃煮」が

ベッド脇の冷蔵庫の中にあったり

若いときから、口癖のように

何かある度に「死んでやる」

「死ねばいいんだべ」
「どうせおれなんかもうすぐ死ぬんだ」

と言っていたくせに

いざとなったら
なんとかしてまた、酒を飲みたい

どうにかしてタバコを吸いたい

美味しいものを食べたい

ワガママな患者でさ
看護師さんを困らせてばっかりだったよ


いかにも私の父らしい最期


立派な最期だったのは義父だと思う

ま、若い頃のことは私は知らないし
私が嫁になる前、妻子ににどんなだったか
そういう昔の様子は別として

病気になってしまっても
泣き言ひとつ言わず、誰も恨まず
(私が知らないだけかもしれないが)

自分で行ける自宅から近い病院を選び
(なるべく人の世話にならないためか)


出された食事をとれずに、

じっと見つめて
食べられなくなった自分と向き合い

文句を言わず　現状を受け入れ

苦しい体をおして　

病室で年賀状をしたため

見舞った私や孫たちに　

優しい言葉をかけ

苦しくて眠れぬ夜を耐え
付き添う義母の方がワガママで

苦しむ声がうるさくて眠れなかったなどと
文句を言われても

なるべく迷惑をかけまいと
何とかして、自力でトイレに行こうと

頑張って、頑張って
力を使い果たして　亡くなってしまった


立派なご最期でした
こうありたいものだけど


ボケてしまったら無理だしなぁ。
子供に迷惑をかけずに、生きて
子供に迷惑をかけずに、逝きたいものだけど