俺の本棚~面白いッ書 第692回

令和6年8月5日

文庫本5冊を購入、城山真一「ダブルバインド」(単行本は2021年)、浅田次郎「母の待つ里」(単行本は2022年)、山口恵似子「食堂のおばちゃん⑭昭和の焼きめし ⑮おむすび縁結び ⑯幸せのカツサンド」(何れも書き下ろし)である。

 

日本女子第21戦は北海道北広島市で。 道産子は12人、・・・小祝さくら、菊池絵里香、山田彩歩が予選通過。 ・・・21才・竹田麓央が今季初優勝に続き、4勝目。 天晴れ! 小祝12位、菊池33位、山田45位と道産子はイマイチだった。

 

LPGAは日本人4人。 勝みなみだけが予選通過。 ・・・27位に終わった。

 

オリンピック男子ゴルフは予選一日目も二日目も、松山英樹がトップに躍り出たが、三日目に伸ばせず4位で最終日に臨んだ。 ・・・いや~、テレビ観戦疲れ、21時就寝、1時に目が覚めて、録画してあるオリンピックゴルフを朝の4時過ぎまで堪能した。 松山が猛然と追い上げて金メダルに2打差の銅メダル! 天晴れ! 世界ランク1位のアメリカ人が、流石の逆転優勝。 松山は、アトひところがりでバーデイがパーになったホールが4つもあって、タラればじゃ無いが、金メダルも夢じゃなかった。 惜しい! 

 

 

越智月子「片をつける」(2023年 文庫書下ろし)

熟年で起業したマスターの、心地良い喫茶店を出た夏野阿紗は、古ぼけたレンガ色のマンションへ帰宅する。 805号室、我が部屋の前に隣人の老婆がスコールに当たってずぶ濡れの状態だった。 →鍵をなくして部屋に入れない、合鍵は部屋にあるのに、マスターキーの不動産屋の天野は居留守を使ってやがる、と吐き捨てる。 彼は、→いつも怒っている、不機嫌が服着て暮らしている婆さんです、近付かない方がイイですよ、と忠告してくれた担当者だった。 さっさと部屋に入ろうとしたが、無言のプレッシャーが、アンタ、私を見捨てる気かい? と突き刺さってくる。 804号室の表札は「五百井」、いおいと読むのだろうか。 三年前の引っ越し挨拶のタオルを持って何度もインターフォンを鳴らした隣である。 午前中に、午後に、日没後に・・・、30回以上も無視された記憶が甦る。 →こちらでお待ち下さい、とお節介な言葉が口から出て自分で吃驚した。 洗面所からタオルを持って来て、風邪ひきますよ、と手渡す。 →災難でしたね、鍵、どこで失くしたんですか? →アンタ、バッカじゃないの、判っていたらこんなところに居ないヨ、とイキナリのバカ呼ばわりと、こんなところって、私の部屋を、と憤然とする。 婆さんのワンピースのポケットを引っ張り出すと大きな穴が開いていた。 目付きの悪さ、ごつい鷲鼻、底意地の悪さが出る喋り方、こんな性悪婆を部屋に入れてしまった後悔が湧いてくる。  ベランダを開けて見ると、804号室のベランダに何とか飛び移れそうだ、カーテンが風に揺れているいるから、窓も開いている、と決心して居間に戻ると、相手はコックリ居眠り中だった。 暢気なモンだ、確か、チエストの真ん中の引き出しに入れてある、と言ってたから、鍵を見付けてさっさと出て行ってもらおう、と躊躇しながらも、やっと、命の危険の覚悟を決めてベランダを飛び移った。 何と、部屋はゴミ屋敷さながらの散らかし様である。 埃っぽい中、異臭の中、必死に捜していると、→アンタ、何してんの!と低く刺すような老婆の声である。 盗人でも見るような目付きで、→思い違いだった、鍵は首からぶら下げていたんだよ、と二ッと笑った。 この埃と異臭の部屋で、何年振りかのハウスダストアレルギーが再発したのに、これは悪夢か! 疲れがどっと押し寄せて来た。

 

40才間近の阿紗は、自分の部屋で絵本を使った三人の7才児を相手の読み聞かせ会を行っていた。 今日も週二回の途中で、沙良、元輝、流香を相手に、朗読中である。 このマンションは政界でそれなりに知られた母の愛人が、この分譲マンション3部屋の権利を母に譲り、三年前に母が亡くなったので、遺産を相続し、残り2部屋の家賃収入と、週二回/90分/回のスズメの涙ほどの謝礼金で、何とか、生活出来ていたのである。 ピンポーン、とチャイムが鳴る。 隣の老婆が、一応世話になった礼を言いに来た、と口にしながら小さな三つの靴を不審げに見ている。 そこに流香がやってきて、→センセイ、お客様? いろんなお友達がいるんだネ、と二ッと笑った。 →センセイ、お願い、このおばちゃまも一緒に絵本聞きたい、お友達になりたい、とせがまれると、阿紗が困惑しているのを尻目に、老婆は、→じゃ、ちょっとお邪魔しようかネ、これ、お土産のお団子、みんなでおやつに食べようネ、と流香に手を引かれてリビングに向って行く。 →そうだ、おばちゃま、読んでみてよ、と三人が声を揃える。 老婆は咳払いして絵本を手にした。 ・・・3人の子供達は両拳を握りしめ身を乗り出して物語の行方を見守っていた。 阿紗は負けたと思った。 自分とは格が違う、読み終わると子供達は手を叩いた、阿紗は拍手された事は無い。 ・・・面白かったァ、マジ引き込まれたァ、とウットリした目で見詰められた老婆はけだるそうに首を振っている。 子供達から名前を聞かれて八重と答えている。 この老婆は何者だ?

(ここ迄、全224ページの内、42ページまで。 この図々しい、自分勝手な老婆のペースに引き込まれ、ゴミ屋敷の片づけを手伝う事になった。 そして、明らかになってくる八重の過去、そして阿紗も人生で背負い込んだ荷物や厄介ごとに向き合い、一つ一つ片付けていく)

 

(ここ迄2,300字越え)

 

令和6年(2024)8月5日(月)