令和6年6月10日

俺の本棚~面白いッ書 第680回

 

文庫本3冊を購入。 何れも書き下ろしで、白蔵盈太(しろくら えいた)「実は、拙者は」、富樫倫太郎「ちぎれ雲① 浮遊の剣」、「〃 ② 女犯の剣」、どちらも帯のPRに魅入られたが、果たして?

・・・3冊とも面白かった。 続編が出たらまた買おう。

 

PGAは松山英樹だけ。 ・・・予選通過。  ・・・奮闘虚しく、それでも8位タイ(579千$)だった。

LPGAは珍しく3日間大会で日本人8人、畑岡奈佐、勝みなみ、渋野日向子、笹生優花、吉田優利、古江彩佳、西郷真央、西村優菜である。 ・・・笹生、勝、吉田、畑岡が予選落ち。  ・・・惜しい! 古江が一打差の2位(142千$)、渋野・西村・西郷が21位タイ(18千$)だった。

欧州ツアーはスエーデンで川村昌弘だけ。 ・・・予選落ち。

 

日本男子は茨城県・笠間市でメジャー戦、道産子は片岡尚之、植竹勇太、安本大祐、鳥海颯汰(とりうみ そうた)の4人。 ・・・片岡だけが予選通過。  ・・・驚いた、5打差だった石川遼・32才が岩田寛・43才に追い付いてプレーオフ、1ホール目で負けたが(1,500万円)見応えがあった。 岩田の優勝(3,000万円)は大会史上最高齢だと言う。 天晴れ! 片岡は16位。

 

女子第15戦は神戸で、道産子は小祝さくら、菊池絵里香、阿部未悠、内田ことこ、宮澤美咲、吉本ここねの6人。 ・・・阿部、宮澤、吉本が予選落ち。 ・・・6年前と3年前に優勝した大里桃子が逆転優勝!してツアー3勝目。 これで全英オープンに出場出来る。 大里の3年毎の優勝に何か、因縁を感じる。 初優勝を狙って最終組で出た内田(3位・1,000万円)が、スコアを伸ばせず惜敗した。 残念、無念! これで14勝1敗、此の儘、破竹の連勝を願う。 小祝13位、菊池60位だった。

 

 

 

藤岡陽子「きのうのオレンジ」(単行本は2020年)

笹本遼賀・33才はイタリアンレストランチエーン「トラモント」に勤めて13年目、今は、五反田店の店長である。 今日は胃細胞の生検の結果を聞ける日である。 検査した大学病院で高校同級の矢田泉が美人な看護師となっていた。 先に気付いた矢田から声を掛けられて吃驚! お互い、独身だった。 遼賀の弟・恭平は、学校時代から二卵性の双子と間違えられていたが、今は故郷の岡山で高校の体育教師である。 高校球児として活躍していたが大学時代に右肘を故障して挫折した。 彼の嫁さんの晶美さんは(中学の理科教師)気のイイ優しい女性である。 ・・・松原先生から説明がある、→胃の粘膜組織を採って生検の結果は悪性腫瘍でした、入院して精密検査を受けて頂きたい、と告知されて酷い目眩に襲われた。 胃癌? これから12月の繁忙期を迎えて店を休めるだろうか? 下手したらクビになるかも知れない、という恐怖感がある。 ・・・店に戻ると、アルバイトの高那裕也が心配そうに、→店長、病院はどうだったんですか? と尋ねてくる。 言葉を濁して、→悪性だと言われた、と答えると、→検査入院、早くした方がイイですよ、俺が中一の時、親父も癌で早死にしましたから・・・ その後は貧乏生活が続いて、高校中退で社会に出たんです・・・ 万一にも店長のそんな姿、見たくないですから、自分の命が一番です、店は任せておいて下さい、と頼もしい限りである。 彼は18才で面接でアルバイト採用されたが、それまでは高校中退のせいか、どこの店にも採用されなかったけど、笹本店長だけが、中退の理由とか、これ迄何をしていたのとか、いろいろ聞いてくれて、即、採用されたンです。 笹本は高那の右肘に弟・恭平と同じような手術アトに気が付いて、思わず、君、野球をやっていたのか、と聞いたのだった。 →俺、店長にはマジで感謝してるんです、店長が休んでいる時は俺がその穴を埋めます、兎に角、早く病気を治して下さい。 ・・・午後10時を過ぎた頃、駅の傍のスーパーで夜食を買い、自宅マンションへの坂道を登りながら、誰かの声を聞きたくて、恭平の携帯に発信した。 →おお、遼賀、どうした? と元気な声が返ってくる。 しかし、癌の事は言えずに、同級生だった矢田看護師の話でケムリに巻いた。

 

・・・15才の時、中学卒業記念に那岐山(1,200m)に昇ろう、と登山好きな父親に誘われて、何回か経験済みの冬山に上ったが、急な吹雪の中、遼賀と恭平が雪庇を踏み抜いて、遭難した。 深い雪の中でリュックに入れておいたテントを張り、ひと晩、俺達、死ぬのかな?と心細く言い合いながら夜を明かした。 その時に履いていた登山靴は父が買ってくれたモノで、遼賀はオレンジ、恭平はブルーだった。 朝になって、右足を怪我している恭平の登山靴が濡れた儘だったので、交換してあげたが、それが元で遼賀の足指は凍傷となり、今も曲がった儘である。 (父親は恭平の生まれた秘密を卒業の今、打ち明けようとしたんだろう、と遼賀はアトから知ることになる) 

・・・恭平に連絡した翌朝、→遼賀、お前、体が悪いのか? 矢田さんは大学病院の看護師だろう、お前の声もどこか沈んでいたし・・・ と責められて、オレ、胃癌になった、と白状した。 →遼賀、大丈夫だ、絶対、治る、オレが治ると言えば治る、と根拠のない断言だった。

・・・告知を受けてから二週間後、24日のイブに検査入院した、矢田さんがいろいろと説明してくれる。 四人部屋で80才越えの老人が二人、もう一人は50才前後の体格のイイ男性である。 CT室から戻ると、スーツ姿の恭平が矢田さんと明るい声で談笑している。 高校は冬休みに入ったばかりだという。 →30才過ぎた笹本ツインズのツーショット、レアだわ、この年になってもホントに良く似ているわね、と感嘆の声だ。 松原医師は、年明けの都合のイイ日に手術しましょう、と提案して来たが、矢田看護師が、→29日の手術がキャンセルされましたから、この日では如何ですか? 途端に恭平が、その日にしましょう、早い方がイイ、と勝手に決めてしまった。 27日に、手術後二週間の入院生活に必要なモノをマンションに取りに行った。 ・・・遭難のアト、恭平は、もう、登山は辞める、と全ての道具を捨て去っていたが、遼賀の登山道具は実家に残しておいた。 それを思い出した恭平が、オレンジの登山靴を送って来ていた、遭難で生き残った印だ、お守りだ、と気を利かしたのであろう。

 

父が亡くなって一人暮らしの母親に電話で知らせるのは切なく、手紙で知らせた。 手術の日、岡山からの夜行バスで早朝着いた母親・澄子は真っ直ぐ病院に駆けつけた。 6時間後に手術が無事終わり、麻酔の切れていない遼賀を横に、矢田看護師が、→高校同級生だった矢田泉です、お母さんは朝も昼も食事を摂っていないでしょう、是非、遼賀君が店長のレストランでどうぞ、と勧めてくれたので、五反田までタクシーで出かけた。 「店長のお薦めパスタ、瀬戸内の薫り」と書かれた1,500円を注文した。 それを受けたのはキビキビと動きのイイ高那だった。 岡山弁でいろいろ尋ねてくる母親を見て、→もしかして笹本店長のお母さんですか? 今日手術でしたもんね、と嬉しそうな笑顔を見せた。 店長は如何に気遣いがイイか、店内の観葉植物は全部本物で、この小さい鉢は蜜柑の木、これから実を生らせます、と母親が喜ぶ事ばっかり教えてくれて、実に気持のイイ対応だった。 遼賀は立派に店長をやっているんだ、と安心した。

(ここまで、全321ページの内、75ページまで。 恭平の生まれた秘密とは? ・・・おれはまだ生きたい、と懸命に前を見る遼賀と、彼を支える家族や矢田、誠実に生と向き合った傑作、とPR帯にある)

 

(ここまで、約3,200字)

 

令和6年(2024)6月10日(月)