令和6年5月16日

俺の本棚~面白いッ書 第676回

大相撲が始まった。 桟敷席の西花道の傍に15日間常連の年輩男性の顔がある。 両国国技館、年三場所の常連さんである。 よっぽどの会社の社長さんか会長さんなんだろうナ、と羨ましい限りである。 

 

文庫本5冊購入。 いぬじゅん「旅の終わりに君がいた」(書き下ろし)、坂岡真「うぽっぽ同心総括指南 夫婦小僧」(書き下ろし)、相場英雄「マンモスの抜け殻」(単行本は2021年)、安生正「暗殺者」(単行本は2020年)、柚月裕子「チョウセンアサガオの咲く夏」(単行本は2022年)である。 いぬじゅんは初めての作家、果て? 

 

十数年振りに「Tジンギスカンクラブ」に行った。 ネットでは混んでいる、との事だったので11時開店に併せたが、既に、40人程の行列だった。 並んでいた客を一遍に入れるのでは無く、一組ずつのご案内だった。 15分後に着席すると、注文を受け、お冷と七輪が運ばれてきた。 これが15分も待たされた理由だった。 ジンギスカンと野菜、小さなお握り二つの定食は1,800円だった。 当初は1,200円だったと思うが、物価高の中、成る程、と了解である。 

 

 

PGAは2試合あって、背中痛で松山が棄権。 もう1試合は、久常涼、蝉川泰果の二人。 ・・・二人とも予選落ち。

LPGAは、畑岡奈佐、西郷真央、笹生優花、西村優香、吉田優利が予選通過。 勝みなみ、渋野日向子、稲見モネが予選落ち。 ・・・畑岡12位(46千$)、笹生・西郷29位、西村・吉田50位だった。

 

女子第11戦は 道産子は6人、小祝さくら、菊池絵里香、阿部未悠、内田ことこ、宮澤美咲、吉本ここね。 ・・・内田、吉本が予選落ち。 小祝4位(600万円)、菊池・阿部26位、宮澤47位だった。 岩井ツインズの妹・千怜が大会連覇、これで10勝1敗。 快調である。

男子の道産子は、片岡尚之、植竹勇太、安本大佑の3人とも予選通過。 ・・・片岡21位、植竹52位、安本62位だった。

 

 

図書館から借用の文庫本、柴田哲孝「殺し屋商会」(初出、2021年~2023年月刊誌)は、セックスフレンドの水鳥川(みとりがわ)亜沙美と、謎の男・ロンファンと組んで怨恨の殺しを請け負っていた。 「殺し屋商会、復讐代行相談所」の名刺で、恨みを胸に秘めている相手に近付き、殺しの提案を行うのだった。

・・・田中信浩は一人娘の結衣と4才になったばかりの孫を同時に失った。 歩道に突っ込んできた一人の老人がアクセルとブレーキを踏み間違えた事故だったが、急に、ブレーキが利かなくなった、と車の故障を主張し、無罪を訴えていた。 その一年後に心労の余り、妻の真知子が自殺した。 娘の夫は高岡健太郎、彼が正式の遺族で、田中には遺族として悲しむ権利さえ、残されていなかった。 自分の人生は死ぬ前に既にゼロになっていた、あとは酒を飲みながら体が腐って死ぬのを待つだけだ。 どうせゼロなら死ぬ前にあの男を殺してやりたい、自分の手で。

 

老人は元官僚のエリート(通産省審議官)で警察が忖度して逮捕もされていない。 田中が駅前の居酒屋でチビチビやっていると、若い女が近付いてきた。 →田中様ですね、こういう者です、と差し出された名刺を見て仰天した。 「殺し屋商会 復讐代行相談所」って、詐欺の一味か? →ある人物に復讐を望んでいる、と思いまして・・・と言う、こちらの事を調べてから近付いてきたのだろう。 ・・・新宿区大久保の路地裏に’60年代に建てられた古い5階建てのビル、二階から上にはテナントがゼロである。 夜9時、亜沙美はペンライトで階段を上がり、屋上にある6畳ほどのコンテナハウスをノックした。 →ロンファン、いるの? 田中さんに会って来たわ、もう一度事情を話すわね、と二年前の新聞記事を読み聞かせた。 老人は徳田敬正(86)、車が暴走し歩道に乗り上げて高岡結衣(30)さんと長女の琴音(4)さんが死亡。 他に7人が重軽傷を負った。 第3回の公判後、夫の高岡健太郎(33)さんは、→彼は全く反省していない、謝りもしない、と怒り、父親の田中信浩(64)さんは、→こちらに会釈もしない、こんな裁判、いつまでやるのか、と涙で声を詰まらせた。 亜沙美は→今後、もし裁判で有罪になったとしても、今88才の高齢と持病を理由に収監されないかも知れない。 ロンファンは、→謝らないのは良くない、神に罪を認めない事も・・・、人を殺しても刑務所に入らないなんて、許せない。 亜沙美は、→二万$を提示してきた、とイイながら全裸になって、→早く、して、と催促するのだった。 

 

田中信浩は三日間悩んだ。 騙されて二万$をドブに捨てるのか、それとも徳田の死にざまを想像してワクワク感だけでも価値があるのか、心を決めて指定されたカイマン諸島の口座に振り込んだ。 亜沙美のメールアドレスに、送金しました、と送信すると、すぐに返信があった。 →入金、確認いたしました、早々に実行に移らせて頂きます。 徳田の家は練馬区中村にあり、自宅から外出するのは月一の病院にタクシーで、裁判の打ち合わせは弁護士を呼んで自宅で、公判にはタクシーで、家はホームセキュリテイがガッチリ装備されている。 自宅には滅多に外出しない奥さんがいる、から家ではまずい、と判断され、第5回の公判の日に狙うと結論した。

 

ロンファンは徳田家の斜め向かいの空き家に前日から潜んでいた。 防犯カメラを調べ尽くし、電車もバスもタクシーも使わずに、マスクと帽子の、コロナ過で不振と思われない格好で歩き続けてここに来た。 公判日の当日、迎えに来た弁護士と秘書が車椅子に徳田を乗せると、群がって来たマスコミが次々とマイクを突き出してきた。 ストロボも光っている。 ロンファンはパーカーの内側のホルスターからM36リボルバーを抜いた、誰も自分を見ていない。 マスコミの突き出すマイクやカメラに紛れて徳田の頭に銃を向けた。 徳田は次々と突き出される忌々しいマイクを払いのけた、がこれはマイクじゃない、と気付いた時に、パン、パン、と銃声がして徳田の頭から血飛沫が上がった。 マスコミの悲鳴が上がり、蜘蛛の子を散らす様に逃げ惑った、その混乱に乗じてロンファンも姿を消した。 田中は、テレビでその瞬間を目撃した。 →・・・まさか、本当に殺った、と涙を流しながら体を震わせて笑った。

 

撃った男はテレビカメラや徳田家の防犯カメラにも映っていたが、未だ、正体は判っていない。 帽子とマスクで顔を隠し、徳田を撃ったアトもマスコミの混乱に乗じて防犯カメラの無いコースを使って逃げた。 着ていた服も全て途中で着替えて捨てた。 最近はロンファンのような仕事には便利な世の中になった。 ・・・亜沙美とロンファンはいつものコンテナハウスで全裸で絡み合っていた。 →田中さん、テレビで見ていたかしら? ロンファンは言う。 →きっと見ていたよ、でも神は言った、人が誰かを傷つけた場合は、その罪は同程度でなければならない、もう何人も殺しているから、二人はいつかは罰を受けるよ、とそっと口づけした。

(ここ迄、全227ページ・5話の内、第一話43ページまで。 第2話は、歌手・俳優の娘が自殺した、その原因は交際中の男優との破綻、と思われていたが、父親のベテラン名優と母親の歌手の一人娘だった。 亜沙美は父親に名刺を出して提案した。 ・・・法で裁けない、世の中に充満している恨みの数々、その復讐代行業が存在するのであれば、提案に応じる弱者もいる事だろう。 新たな視点の小説でスラスラと読み切った)

 

(ここ迄3,100字越え)

 

令和6年(2024)5月16日(木)