令和6年4月29日

俺の本棚~面白いッ書 第675回

 

PGAは日本人ゼロ。

LPGAは畑岡奈佐、渋野日向子、古江彩佳、西郷真央、吉田優利、稲見モネの6人。  ・・・吉田と稲見が予選落ち。 ・・・西郷8位(77千$)、畑岡13位(47千$)、古江25位、渋野73位だった。 

 

欧州ツアーは日本・静岡県で、全155人中、日本人は47人。 ・・・予選通過69人中、日本人は24人。 ・・・驚いた、桂川有人が逆転優勝(356千€)、欧州ツアーでは6人目の日本人だという。 木下稜介3位(100千€)、川村昌弘と杉浦悠太が7位タイ(51千€)と続き、今平周吾、金谷拓実、中島啓太が11位タイだった。 

 

女子第9戦は千葉で。 道産子は5人、小祝さくら、阿部未悠、内田ことこ、宮澤美咲、吉本ここね、・・・宮澤と吉本が予選落ち。 ・・・天本ハルカが初優勝! ’98年生まれの黄金世代で15人目の遅咲きだった。 また、新星現る、これで日本人の9連勝、女子はホントに層が厚い。 阿部28位、小祝32位、内田47位に沈んだ。

 

 

 

下村敦「アルテミスの涙」(図書館から借用の文庫本、単行本は2021年)

イヤハヤ、驚きの小説である。 アルテミスとは、ギリシア神話の月の女神で、狩猟や貞潔を司る女神でもあり、極めて誇り高く、彼女の怒りに触れた者は厳しい罰を受ける。

 

「閉じ込め症候群(ロック ド イン シンドローム)」になった22才の岸部愛華、四肢が完全麻痺となり、表情を変える事も言葉を話す事も出来ないが、意識はある、ただ、瞼は動く。 車ごと山道から崖下の海に転落した事故だった。 入院した7ヶ月前からこの状態が続いている。 ところが、今夜、愛華の膣から不正出血があり、嘔吐で喉が詰まりそうになったと、看護婦が当直の産婦人科医・水瀬真理亜に駆け込んできた。 モニターで診断したところ、妊娠10週の驚愕の事実が判明した。 嘔吐は悪阻であった。 つまり、入院後の事であり、病院内でレイプされた結果としか考えられない。 大河内院長や、大学で同期だった脳外科の担当医・高森の動揺は激しく、愛華の両親は激怒する。 特に政治家の父・大悟は、愛華が世間の晒し者にされるという危機感が凄まじかった。 半年前の選挙で、劣勢だった中での娘の悲惨な事故で同情票が集まり、辛うじて当選したのだった。 ・・・ところが妊娠の情報がネットに流出し、病院の廊下には防犯カメラもない(これは患者のプライバシー上、どこの病院でも一緒である)体制に、世間の批判が集中した。 安全管理はどうなっているのか!と。 しかし、どの病室も解放されており、時間内の見舞客も後を絶たない。 循環する看護婦の隙を狙って夜半に忍び込むのは関係者には可能だった。

 

岸部夫妻が精神科医の一ノ瀬を連れて来た。 催眠療法でレイプ犯を探し当て、警察官の東堂警部と女刑事の明澄(あずみ)祥子に引き渡すと言う。 一ノ瀬医師は、→退行睡眠で過去に遡り記憶を甦らせます。 瞼で答えて下さい、ハイ、なら一回、いいえ、なら二回です。 中高時代の知り合い? バイト先の同僚? どちらも瞼が二回だった。 東堂刑事が、質問した、→病院関係者ですか? あなたを妊娠させたのは高森医師ですか? 二回とも瞼は間違いなく一回だった。 しかし、驚愕した水瀬医師が、→あなたをレイプした犯人は高森先生なの? 途端に愛華の瞬きが激しくなり、止まらなくなった。 明澄刑事が、→ショック状態です、もう、催眠を解いて下さい。 東堂警部が、→何か、言いたい事がありますか? と尋ねると、高森医師は真っ直ぐ見返して、→これは愛です、と揺るぎのない眼差しで言った。 更に激高している岸部夫婦に、→あなた方には愛の重みが分からないでしょうね、と罪悪感のかけらも見せず言ってのけた。 そして全員に向って、→愛は決して誰にも引き裂けないンです、とキッパリ宣言して、警察に引き立てられて行った。

 

水瀬医師は文字盤を使って愛華との会話を試みた。 指を宛ててゆっくり動かしていくから、瞬きをしてくれたらそこで指を止める、そうしてあなたの声を聞かせて欲しい。 長い時間がかかったが、最初の言葉は、→わたしはあかちゃんをうみたい、だった。 誰が育てるの?と聞くと、→祖父と祖母のふたりなら愛情を注いでくれます、私の味方です。 ・・・それから恐るべきことが次々と判明した。 十代の時に大好きな相手の子を妊娠したら、強引に堕胎させられた、だから、今回も両親は私の子を殺します、今度は絶対に堕したくない。 水瀬は、愛する相手の子を堕胎するはめになったから、性犯罪で妊娠した子は堕ろさず産む、という愛華の思想回路が理解不能だった。 そして、愛する相手の名前も聞き取れた、豊田雅史、堕胎させられて現世に失望したふたりは心中を試みた。 不幸な事故ではなく、自らがアクセルを踏み込んで崖下に転落したのだった。 

しかし、愛華の単独事故と警察の見解である。 豊田はどうなったのか?

 

岸部大悟と有紀の夫婦は、→転院させて中絶する、水瀬医師はもう、お役御免だ、と宣告してきた。 転院する最後の夜に愛華に訊き糾した、すると、何と、三か月前に優れた脳神経外科医が揃うこの病院に豊田雅史が転院して来ていると、高森先生から教えられたという。

(催眠療法で愛華が頷いた、妊娠させたのは高森先生。 驚いて、続く水瀬からの、高森先生にレイプされたの?との質問に激しく動揺したのは何故か? 妊娠したがレイプじゃない、って何だ? 我らの考えが及ばない真実があった。 小説家と言うのは凄まじい事を考えるモンだ。 ・・・高森先生は、後日、釈放された)

 

(ここまで2,200字)

 

令和6年(2024)年4月29日(祝・月)