令和6年1月11日

俺の本棚~面白いッ書 第656回

大谷翔平が又もや爽やか記事、ドジャース球団と一緒に100万ドルを石川県に寄付! 何と清々しい事か。 漫才の「霜降り明星、粗品(本名 佐々木直人・31才)」が万馬券を当てた2,400万円を全額、被災地に寄付、どうせ、アホに使ってスカンピンになる金だから、と自身が1億円の借金があるのにも拘わらず、である。 仙台出身のサンドイッチマンが気仙沼市に寄付した、移動式水洗トイレ(3台付き)のトレーラーが輪島市に到着。 嵐(5人組)が約7,000万円を寄付。 ・・・こういうイイ話がドンドン続いて欲しいなァ。

 

文庫本3冊購入。 佐伯泰英「新・酔いどれ小藤次㉖ 恋か隠居か」(書き下ろし)、中山七里「月光のスティグマ」(単行本は2014年)、桜木紫乃「俺と師匠とブルーボーイとストリッパー」(単行本は2021年)である。 正月用の貯えは全て読破、ここにUPしたい気が起きないのが多いが・・・。

 

 

今野敏「遠火」(Oさんから借用の新刊)

警視庁捜査一課・樋口警部・46才が帰宅しようとした時、一階で少年事件課の係長になったばかりの、2才下の氏家警部にバッタリ会った。 未成年者略取誘拐事件で品川署から戻って来たと言う。 46才の男が、16才の少女が家出をして行くところがない、とSNSに書き込んだのを見て、困っているなら泊めてやる、と家に連れ込んだ。 それを知った両親が訴えたのだった。 男も少女も泊めてもらってと食事をしただけ、と同じ事を言っているが、家出を恥じた親が訴えて親告罪となった。 品川署の強行犯係はお咎めなし、少年事件係は逮捕送検すべし、と意見が割れてオレが呼び出された、という事らしい。 明日の朝までにオレが決めなきゃならない、お前の意見を聞かせろ、と小部屋に引っ張り込まれた。 樋口は、→親告罪だから親が告訴を取り下げれば、放免されてもイインじゃないか、と考えながら言うと、よし、わかった、と氏家は自分の気持ちを決めたようだ。

 

久し振りの定時の帰宅、妻・恵子と娘・照美と食事が終ると、衆議院議員・秋葉康一事務所に勤務している照美から、→女子の貧困が社会問題化しているので、議員がいろいろ話を聞きたいっていうの、議員立法も考えたいって・・・ 如何にも市民運動出身らしい考えである。 中学・高校の頃から照美は俺を避けていたのに、話し掛けて来るとは意外だナ、と恵子に打ち明けたら、→あなたが家にいる時は随分話し掛けていたでしょ、事件の事ばっかり考えているから気付けないんでしょ、照美は大人になった、あなたは子供のまま、と笑いながら冗談を言われた。

 

氏家の話から3日後の10月25日、奥多摩町で遺体発見の知らせがあり、天童管理官から樋口班14人に出動命令が下った。 樋口の車には51才のベテラン警部補・小椋と紅一点の藤本巡査部長、そして運転しているのは最も若い菊池巡査である。 一時間後、現場に到着、警視庁本部から検視官の大原警視が既にいる、白いシーツに包まれた全裸の若い女性、20才前後、恐らく未成年だ、手首と足首に拘束された跡が見られる、先ず、他殺で間違いないだろう、死因は解剖してからだ、と説明があった。 発見者は犬と散歩中だった78才の老人、駐在所の若い谷川巡査が現着している。 場所は何故か、谷側じゃなく山側で、都心から走ってきた側に停めて遺棄した、という状態だった。 藤本は車道に上がってくると、→死体遺棄にしちゃ、随分、雑ですね、ここに停めた車から引き摺って行ったから下草が倒れています、普通は埋めますよね、だから犬に見付かった、と下を見下ろしながら呟いた。 もしかして時間に追われて焦っていたのかも知れない。 遺体は青梅署に運ばれた、恐らく捜査本部がここに立つ。 ・・・田端捜査一課長と天童管理官が到着して捜査会議が始まった。 所轄の青梅署長・坪井と刑事課長・多喜、係長・中条が説明役だ。 →遺体をくるんでいたのはホテルなどで使われているシーツで、名前や印が無いのでリネンサプライからのリースかと思われます、その会社の解明を行います、と言ったところに、周辺の聞き込みから戻った小椋警部補と菊池巡査が、→食材店の二階に住み込みの楠田さん・64才がトイレに起きてヘッドライトに気付いた、黒っぽいハッチバック車はライトを消して路上駐車、結構な月明りで良く見えた、何だろう?と不思議に思った、という報告である。 その車が遺体を運んできた可能性がある、もっと広範囲に聞き込め、と指示が出された。 翌日、小椋は二人目の目撃者の報告である、現場から一キロ先の住人、津村さん・32才が、新宿からの帰り、23時半頃にハザードもせずに路上駐車していた黒いハッチバック車を見た、ナンバーまでは判らないが白ナンバーだったし、ドイツ車だと思う、と言った。 樋口は、→被害者が未成年者とすれば少年事件課の氏家警部の助けを借りましょう、と一課長に進言して採用された。 翌朝、青梅署に来た氏家は、遺体に合掌したアト、→ホテルで同衾していて何かが起きた、死亡した相手を慌ててシーツにくるんで車で運び、奥多摩迄やってきて捨てた、という筋書きは考えられるが、女とヤッていて相手が死んじまったら、ホテルに気付かれずに遺体を部屋から運び出すのがどれ程大変か、まさか、ホテルの従業員が協力者じゃあるまいし・・・、と推理した。 そして、我が係は被害者の身元割り出しを行おう、と請け負ってくれた。 ・・・渋谷署の梶田巡査部長・36才は、遺体の写真を見て、似ている少女がいる、内偵を進めている売春グループの梅沢加奈・高一である、他に、山科渚も同い年でリーダー的な役割だと思う、「株式会社ペイポリ」がスポンサーになって、高校生グループ「ポム」から聞き取って、高校生が欲しがっているモノをネット通販して売り上げを伸ばしている、そのポムが買収の隠れ蓑になっている、と踏んでいるが未だに証拠が掴めていない、と事だった。 話を聞き取った樋口と氏家と梶田が、ペイポリの「総務課 秋元夏美」に遺体写真で確認すると、→加奈ちゃんみたいに見えますが・・・ 梅沢加奈ちゃんです、でもトラブルは聞いていませんし、我が社はサポートするだけで住所も知りません、と驚愕の困惑顔だった。 →5時過ぎにポムのメンバーが集まりますから、皆に聞き出して下さい、と言われてまた来る事にした。 ・・・秋元女史が案内してくれた部屋には、3種類の制服姿の5人の少女がいた、リーダーの山科渚が、→メンバーの梅沢加奈と連絡が取れなくなっている、という。 スマホの遺体の写真を見せると、顔色が悪くなって倒れそうになっている、→これ、加奈です、と言いながら覗き込んでいた他の少女も泣き出した。 住所は武蔵野市吉祥寺だった。 成島喜香(三鷹市井の頭)が特に仲が良かったという。 山科渚が、→ここに来てもらった方が皆もいるからショックが少ないでしょう、と呼び出してくれた。 一時間後に現れた喜香は息を吞む程の美少女で、樋口は言葉を失った。 しかし、涙を流しながらの泣き顔からは何の情報を得られなかった。

 

樋口と氏家はその足で吉祥寺の梅沢加奈の自宅を訪ねた。 父親が俊樹・47才、母親が由起・46才、遺体が発見されたと告げると、共働きの二人は絶句して泣き崩れた。 加奈が一人暮らしをしたいと言うので、町内にアパートを借りてやった、だから行動は把握していない、部屋はどうぞ、調べて下さい、と母親の決断が早かった。 翌日、成島喜香が渋谷署に樋口を訪ねて来た。 →加奈が売春をしているってSNSに書き込まれていました、ポムの誰かかも知れません、けど加奈は絶対やっていません、と強い口調で言い除けた。

 

司法解剖の結果は扼殺だった、殺害時間は21時から23時、加害者とみられる唾液や体液のDNA鑑定中・・・ 渋谷の街からは情報が上がってこない。 娘の照美から、→秋葉が会いたがっている、時間が取れない? と携帯が鳴った時、渋谷から自由が丘なら、今が丁度イイタイミングだった。 そのまま向かう、午後6時半、秋葉は大きな声で歓待してくれた。 二人っきりになると、→樋口君は良くやってくれているよ、早速だが若い女性の貧困問題、貧困が犯罪を生む、再犯率も高める、性が商品化される、売春や風俗への強要、海外に売られる危険、社会のシステムも影響している、非正規雇用者が多い、昇級しない現実、全体的に収入が低い、シングルマザーは子育てに時間を取られるので正規雇用が難しい、こんな世の中を何とか変えなければならない、これは政治家の仕事だ、俺は戦い続ける、と現実を理解したスッキリ顔で力強く言い切った。

 

遺体を包んでいたシーツを貸し出していたのは、「品川リネン」と特定出来た。 大量のシーツやタオルをクリーニングする作業場である。 営業部長の服部が応対してくれた。 遺体遺棄事件で包まれていたシーツの契約先を教えてもらいたい、と樋口は切り出した。 上の者と相談する、と言って間もなくA4サイズの紙を一枚差し出してきた。 多くは一般のホテルだが聞き覚えの無いのはラブホテルだろう。 捜査一課長の判断で捜査本部が青梅署から渋谷署に移された。 捜査一課、少年課、青梅署強行班係、渋谷署生安係・強行犯係と5つの合同グループである。 ・・・樋口と氏家は見回り中に宇田川交番に立ち寄った。 野方と名乗った巡査長が、→頻繁に、凄く若い女性と中年の男のペアが利用している怪しいホテルがあります、その向いの洋食店の店長の宮田さんに聞きに行きましょう、と案内してくれた。 店長は、→ウチの店はガラス張りになっていますね、そこからあのホテルの出入り口を見張っている奴がいるんです、若い男でしたがこれまで半年間で顔の違う三人がスマホで録画していました。 「MAI」の看板を見て、ホテルを当っている班に連絡した。

 

渋谷署強行犯係長の石田は、樋口からホテル名を聞いて直ぐに動いた。 部下の富樫が売春より殺人事件が先じゃないですか?と天童管理官に異見をした上司である。 ムッとした管理官は売春も関連しているかも知れない、重要だと、異見を蹴ったが、富樫は売春を担当している、樋口や氏家、更に自署の西安係の梶田を毛嫌いしているから、氏家さえ、こんな美味しい情報を敵に塩を送ったのか?と言い出す始末だったが、同じ本部でキチンと担当分けすればイイだけの話である。 樋口とはこういう奴だ、と氏家はハラの中で了解した。 報告を聞いた天童管理官は、→録画で撮影したそれをネタに強請る事が出来るナ、貴重な情報だ。 

 

樋口は梶田と共に「ポム」リーダーの山科渚を聴取して、イキナリ、売春の疑いをぶつけたが、その応答の立ち居振る舞いを見て、この子が売春のリーダーとはとても思えなかった。 ず~と内偵していた梶田は直接の売春質問に随分、驚いていたが・・・。 樋口は、成島喜香についても秘かに気付かれぬよう、周辺を調べて欲しいと梶田に指示した。

 

ホテル担当の石田班と青梅署の中条班が興奮して帰って来た。 →ホテルの従業員が黒いハッチバックのドイツ車を目撃していました、周囲の防犯カメラの映像からナンバーも判明、所有者は永井英一・56才、Nシステムで午後10時53分奥多摩付近で走行中をヒット。 管理官は中条班に命じた、→用賀の永井英一に話を聞け、必要なら引っ張れ! ・・・40分後、中条係長から連絡あり、→車を使ったのは息子の航、今、不在で追跡中、写真も入手、送ります、と言う間もなく、パソコンに届いたので皆のスマホにも転送された。 洋食店の店長にそれを見せると、→最初はコイツです、と返答を得た。

(ここ迄、全358ページの内、276ページまで。 ホテル「MAI」の従業員は売春が行われている事は知っていた、永井航の車も目撃していたし顔見知りだった、事件があった夜、何かトラブルがあった筈だが目撃した訳ではなく、5万円を出されて口止めされていた。 売春のリーダーは、ホテルの出入り口で録画させていた三人にも絶大な命令権を有していた。 判り易くて読み応え充分、流石のヒット連発作家である)    

 

 

 

最近、突然思い出した。 40才前後の頃、一人で兵庫県の姫路城を見学したアト、駅前の居酒屋でお勘定をしたら、我がソロバン1級の暗算した金額から1,000円程高い! →こんなのは計算が違う、お摘みなんて注文はしていないし、と文句を言ったが、隣席のキリッとした紳士から、→お摘みは常識だろ、と冷静に嘲られて、しょうがなく支払った。 それまでの我が身の周辺の飲み屋ではお摘みは全部サービスだったのに・・・。 要は飲食代に含まれるか、お摘み料金を表示させるかの違いなのである。 飲み馴れなかった頃の恥である。 今では十分理解しているが、姫路では注文しなかったのにお摘みを出されて、これサービスか、と勝手に思って食べてしまったのは失敗であった。

 

(ここ迄、5,400字越え)

 

令和6年(2024年)1月11日(木)