俺の本棚~面白いッ書 第646回
令和5年11月13日
K元会長から、積丹から移築した石蔵の高級寿司店へ夫婦揃ってのご招待を受けた。 以前から何回もご自宅の庭で催されたバーベキューにお誘いを受けた時には、必ず奥さんに手土産を持参していたから、今度は何を、と家内は悩むのではないか?
図書館から借用した文庫本、知念実希人「生命の奪略者」(2022年書き下ろし)は、日本臓器移植ネットワークの移植コーディネーターが、ドナーから提供された心臓をレシピエントが待つ病院へ搬送中に、新幹線のトイレに入る瞬間に殴打されて移植心臓を奪われる事件から始まった。 ドナーの死がレシピエントの命を救う筈だったのに、レシピエントの命までが危うい。 題名の「生命の略奪者」の意味である。 その後、2ヶ月間の内に、肺、肝臓、腎臓と3件の臓器が強奪される事件が連続する。 更には、腎臓移植された若者が殺害され、移植した腎臓を奪われた。 誰がどんな理由で強奪しているのか、主人公の天医会総合病院の副院長・天久鷹央が凄まじい真相を暴き出していく。 部下の小鳥遊(タカナシ~鷹がいなくて小鳥が遊ぶ)優と鴻ノ池舞の活躍も素晴らしい。 ・・・作者は現役の医師、その高度な知識や、仕組まれた驚愕のストーリーに感嘆するばかりである。
原田ひ香「古本食堂」(単行本は2022年)は、帯広で生まれ育った鷹島珊瑚(三番目の女の子だから三子でイイ、と父親が言ったが、6才上の次男・慈郎兄が、それは可哀想すぎる、せめて珊瑚にしよう、と反対してくれた結果だった)は、東京神保町で古書店をやっていた鷹島慈郎が独身のまま亡くなったので、後をどうするか、と取り敢えず、しばらく様子を見に行く事にした。 帯広の実家で、嫁にも行かず父母を最後まで看取った珊瑚に対して、東京で住まいしてた長男・統一郎と次男・慈郎は親戚中に、親を介護してくれていた感謝の意を洩らしていたのである。 古書の扱いの経験が皆無の珊瑚は、古書店近辺の方々に助けられている毎日だった。 驚いた事に3階建のビルは自社ビルで、一階が「鷹島古書店」、2・3階は、翻訳書を主に出版している「辻堂出版」に貸しているのだった。 古書店の経営はイマイチでも、無借金の上に賃貸収入だけでも充分な状態であった。 現金と投資の一部を相続された統一郎は既に亡く、その子の光太郎・芽衣子(49才)夫婦に渡った。 娘・美希喜(みきき)は、5年前から大叔父の慈郎の古書店に出入りしていた大学生だった。 研究室の後藤田教授が奇しくも教えてくれた古書店だったのである。 だからビルを含むその他の財産の殆どは珊瑚に遺されており、珊瑚の行く末を心配していた慈郎兄の計らいであった。 さて、ここを舞台に展開する物語は? 題名の古本食堂の意味は?
上田健次「銀座 四宝堂 文房具店」(2022年書き下ろし)
新田凛(22才)は祖母の夏子さん(72才)に初任給を貰った贈り物を考えていた。 銀座のデパートで思案に暮れていたら、ベテランの女店員・貴島さんに声を掛けられたので香ばしいお茶を頂きながら事情を話すと、→高級日本茶がイイのでは?と勧められたので、それを決めた。 →一筆、手書きの文を入れなさい、四宝堂で便箋・封筒を店主の宝田硯さんに選んで貰いなさい、間違いなくお祖母さんが喜ぶから、と押し出された。 文房具店に着くと、→新田様でしょうか? 貴島さまから電話を頂きました、と挨拶されて吃驚。 ・・・当時、夏子さん(50才)の娘が不倫の子を宿して実家に帰り間もなく男児を産んだ。 凛とした人生を歩みなさい、と願う夏子さんが名付け親だった。 おばあちゃん、と呼ばれるのを嫌い、夏子さんと呼ぶようにキツク言い渡していた。 隣町に就職した凛の母親は間もなく再婚したが、相手の男が連れ子を嫌がったので置いて行かれた。 だから小・中学校は勿論、高校も大学も時間がかかっても祖母の家から通った。 10才の時に学校行事で「2分の一成人式」があり、夏子さんはモンブランの万年筆を贈ってくれた。 小・中校で使える筈もなく机に仕舞われていたが、就職する時にやっと持ち出し、今初めて、その万年筆で夏子さんに一筆添えるのだ。 万年筆ケースの底から当時の夏子さんの手紙が出てきた。 モンブランの万年筆を買った時のデパートで30分ほど一人で置かれた時があった。 母親の相手の海外赴任が決まり、夫に単身赴任して貰ってその間、凛を引き取って二人で日本で暮らしたい、という申し出があったので、凛を手放せない気持の夏子さんは凛には言わず、賭けに出たのだった。 母親が凛に話しかけて、凛が、お母さん!と喜んだら連れて行ってもイイという条件である。 母親からアトから電話が来たが、8年もほっといて、とても言葉を掛けられなかった、と泣きながら夏子さんに謝罪したのだった。 しかし、凛の気持を糾さずに勝手に賭けた事を涙ながらに謝っている手紙の内容だった。 凛は5回も繰り返し読み直し、その度に涙が溢れた。 それをキッカケに夏子さんとの文通が増え、言いにくい事もスンナリ書けるようになり、夏子さんへの情感が増すばかりであった。 ・・・貴島さんは定年後も頼りにされている店員指導係、宝田店主は全ての文房具に関する物知り博士、凛に掛けられた二人の優しさが身に沁みる読後感である。 アト4話、楽しみである。
PGAは小平智、予選通過して3日目終って首位と4打差の6位である。 ・・・小平は13位(113千$)に終った。 シード権が危うい。
LPGAは、渋野日向子、勝みなみ、古江彩佳、西村優菜の3人、・・・古江が予選落ち。 勝が7位(76千$)、西村51位、渋野61位だった。
欧州ツアーは南アフリカで久常涼、予選通過して3日目が終って首位と4打差の6位である。 ・・・久常は9位(128千€)に終った。
日本男子の道産子は、片岡尚之、植竹雄太、安本大祐の3人。 ・・・全員が予選通過。 片岡と安本が23位(177万円)、植竹は50位だった。
女子第35戦の道産子は、小祝さくら、菊池絵里香、阿部未悠、宮澤美咲、内田ことこの5人だったが、予選通過は小祝だけ。 最終日最終組で回った小祝はtoday-1と振るわず、同組の西郷真央がtoday-4で一年半ぶりで6勝目を飾った。 小祝は7位(300万円)で、これで32勝3敗である。
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令和5年(2023年)11月13日(月)