令和5年(2023年)8月28日 第633回
高校野球決勝戦の日、札幌は過去最高の猛暑日36.3℃を記録した。 我がマンション9階の部屋の南・北側5つのベランダの窓と西側出窓の合計6つの窓を全開しても生ぬるい風ばかりで、室温が35℃をオーバーした。 過去になかった室温で驚きである。 冷蔵庫の氷が間に合わず、野球観戦しながら舐めていたイモ焼酎の氷割りを三杯目で諦めて、冷やしてあったレモン・サワー缶に切り替えたがイマイチであった。 それにしても神奈川・慶応高校の8点は大激賞である。 あっ晴れ!
単行本1冊と文庫本4冊購入、原宏一「ヤッさんの本懐」(ヤッさんシリーズファイナル)と、佐伯泰英「柳橋の桜 ③二枚の画」(書き下ろし)、河崎秋子「鳩護(はともり)」(単行本は2020年)、原田マハ「リボルバー」(単行本は2021年)、前川裕「号泣」(単行本は2020年)である。
日本女子第25戦(小樽市)の道産子は、小祝さくら、菊池絵里香、内田ことこ、宮澤美咲、阿部未悠、吉本ここね、山田彩歩、田村亜矢、成沢裕美、とアマチュア2人の計11人。 アマチュアと田村、成沢が予選落ち、7人が予選を通過した。 最終日は雷雨で中止、三日目で同スコアだった韓国人と菊池、岩井ツインズの明愛の3人がプレーオフ、見事、菊池が地元優勝! 道産子は内田が4位に食い込んだが、アトは阿部、山田が33位以下、下位に沈んだ。 これで23勝2敗。
男子の道産子は、植竹勇太、片岡尚之、佐藤大地、安本大佑の4人。 植竹だけが予選通過。 ・・・植竹は41位だった。
LPGAは、笹生優花、野村敏京、畑岡奈佐、渋野日向子、古江彩佳、西村優奈、勝みなみの7人。 予選落ちは、野村、勝、西村の3人。 ・・・笹生6位(57千$)、畑岡13位(38千$)、アトの古江、渋野は下位に沈んだ。
欧州ツアーは、チェコで、久常涼、岩崎亜久竜、比嘉一貴、星野陸也の4人。 久常だけが予選通過。 ・・・14位(25千€)に終わった。
PGAは今季最終戦、年間王者の称号と1,800万$(26億円)を手にしたのはノルウエー人・25才である。 ランク1位で入ったアメリカ人は4日間で1ストロークしか伸ばせなかったが、ランク2位で入ったこのノルウエー人は4日間で19ストロークも伸ばした驚異的なスコアだった。 大逆転である。 それにしても30人だけの最終戦であるが、ビリの30位でも50万$(7,200万円)という高額賞金は、流石に世界中から集まった一流選手へのもてなしである。 いや~、猛追して来た別のアメリカ人との白熱したイイ試合だった。 この録画は消さずに暫く置いておこうと思っている。 月曜日、早朝5時から9時までの4時間、年金生活者故の贅沢なテレビ観戦であった。
岡本さとる「仕立て屋お竜 ④父子船」(書き下ろし文庫、初めての作家、①~③は未読である)
表の顔は、「呉服店鶴屋(主人・孫兵衛)」の仕立てのお竜、鶴屋の陰の主は、「地獄への案内人・文左衛門」である。 その門下のお竜と相棒の井出勝之助が悪人退治に共闘しているのであった。 お竜の武器は縫い針、井出は腕の立つ浪人で、鶴屋の奉公人達の文武の指南役で用心棒でもある。 ひと月前に、人を切る快感に溺れた旗本を地獄へと案内したが、二人とも、→そろそろこの腕が淋しがっている、と同じ思いだった。 修めた武芸の息吹が時に蠢くのである。 二人の会話に入って来た6才位の男児を連れた女が、→井出の旦那・・・ →おや、お前はお浪・・・ お竜はこの二人は以前にちょっとした仲であっただろうと推察したから、さっさと退散した。 お竜の武芸の師匠である北条佐兵衛の留守宅に風を通しながら、そろそろ牙と爪を研がなければ、いざと言う時に案内人としての勤めが出来ない、と訓練の支度をした。
勝之助とお浪は6年振りの再会である。 井出勝之助は京から東下して来たが、大磯で風邪をこじらせてしまった、旅籠を探す余力もなく休み処で動けなくなった井出に手を差し伸べてくれたのがお浪であった。 その休み処を一人で切り盛りしていたお浪は、店の奥のひと間に寝かせ、手厚い介抱を数日続けてくれたのだった。 お陰で体力を取り戻したが、礼金もなく、→きっと金を稼いでここへ戻ってくる、それまでこの恩義は借りておく、と申し出たが、→本調子になる迄しっかり養生して下さい、と裏手の離れ家に住まわせてくれたのだった。 直ぐ噂になるだろうから、井出は近隣の住民に、→剣術修業の者だが休み処の離れ家をしばし間借り致す、それがしに出来る事があれば何なりと申しつけて貰いたい、と触れ回り、それが功を為した。 鍛錬の為に野山を駆け、木太刀を手に黙々と型稽古を続けると、→あのお武家は相当腕が立つようだ、と噂になり、若い者達の喧嘩を仲裁して欲しい、酒癖の悪い亭主に和尚さんに諭して貰うので付き添って欲しい、等々、どんな事でも引き受けて、町の治安にも一役買ったのである。 そんな井出の姿にお浪の女心が揺れて、ある嵐の夜、二人は結ばれたのであった。 実はお浪もここで発熱して休み処の主に助けられたのだった。 お浪は腕の良い大工に見染められて夫婦になったが、実は亭主はとんでもない極道者の酒乱で、身の危険を覚えて逃げて来たのだった。 休み処の主は甲州の陶工だったが、たまたまここが売り出されていたので、窯場に改修する積りで弟子数人と越して来たのだった。 しかし、土の調達が進まず、早くも、余所に移らんとしていて、お浪の話に同情した主は、→半年に一度、払えるだけの店賃を払ってくれたらイイ、休み処としてやってみたらどうだ?と、有難い条件で店貸しをしてくれた、とお浪から聞かされたのだった。 井出勝之助とお浪は一ヶ月以上、心休まる生活を続けていたが、→あたしは勝之助様に相応しい女じゃありません、と何度も腕の中で泣いた。 勝之助が、→俺こそ剣客崩れの甲斐性なしだ、と慰める日が続いていたが、ある日、→別れた亭主が捜していると風の便りに知ったんですよ、あの極道者はすっかり酒もやめて真っ当な暮らしを送っている、と何人かから聞きましたので嘘じゃないようです、一度は夫婦の契りを交わした相手ですから、会ってやりたくなりましてねェ、元々、私には勿体ない勝之助さんは、ここにいてはイケない人なんです、と哀し気にいう。 別れた亭主が本当に改心するのか心配であったが、お浪の人としての凄さがあるから、勝之助の出る幕はない、お浪への未練を断ち切って江戸に向かったのだった。
・・・今、お浪は、→別れた亭主があたしを捜しているなんて嘘でございました、あたしよりも剣術修業で身を立てて欲しいという方便でした、この子は勝太郎、あなたさまのお子でございます、と腰が抜けるほどの衝撃だった。
実はお浪は息子の勝太郎を守る為に必死に井出勝之助を頼って逃げて来たのであった。 陶工の藤兵衛は実は凶悪な盗賊一味の頭目で、休み処を買い取ったのは盗人宿にする為だった。 追って来た亭主に大磯で捕まって殺されそうになったお浪を助けてくれたのが藤兵衛だった。 亭主を殺害し、子分に骸を始末させた。 お浪は休み処の離れに監禁され、藤兵衛の慰み者にされ、→お前も亭主殺しの同罪だ、と脅かされてがんじ搦めにされたのだった。 表の陶工の顔で近所の住民を信用させていたから、窯場を移転するという話を誰もが信じていて、藤兵衛は、→お前には楽しませてもらった、この休み処はくれてやらァ、との言葉を残してあっさりと上方へ去って行ったのだった。 藤兵衛には同じ隠れ家には二度と戻らないと寝物語に訊かされていたから、心機一転、懸命に働き始めたのだった。 それから間もなく、井出勝之助が休み処で動けなくなったのだった。 お浪の難儀はまだ続いた。 藤兵衛の子を宿している事に気付いたのである。 盗賊頭の子とはいえ、宿った子には罪はない、そう考えたお浪は勝之助と別れ子供を産んだ。 勝之助の一字を取って勝太郎とした、近所の住人は誰もが勝之助の子と信じていたし、お浪も固く自分自身にそう言い聞かせたのである。
藤兵衛の子分が指図を受けて休み処の様子を見に来た。 お浪はしっとりとした色香を増し、美しくなっていた。 お浪の子供を見て驚いた、お頭・藤兵衛の面影が窺えたから吃驚である。 →お浪、でかしたなァ、お頭は男の子を欲しがっていなさった、それがここに居たとわなァ、と喜色満面で、→お頭がきっと迎えに来る、そうすりゃ、母子には贅沢な暮らしが待っている、と言い置いて子分は去って行った。 お浪は愕然としたが、あんな悪党に勝太郎を渡してなるものか、と身を隠す決心をして江戸まで逃げて来たのだった。
この話はお竜がお浪に針仕事の手ほどきをしている時に聞かされたのだった。 あなたの息子です、と嘘迄ついても必死に勝太郎を守りたい気持を、お竜も得心したから、→この話は私から井出様に伝えましょう、大丈夫です、怒るような人じゃありません、もっと親身になってくれますよ、そのアトで詫びておくのが何よりでしょう、と優しく言い聞かせた。 ・・・お竜からの真実を聞いた勝之助は、→ふふふ、そうか、そんな事やろうとは思っていたが・・・と、お浪の悲惨さを案じた。 極道な亭主に殺されそうになり、助かったと思ったら盗人に手込めにされて、望まぬ子まで孕まされたとは酷過ぎる。 井出勝之助を慕い続けたお浪が不憫である。 ・・・勝之助はお浪と酒を汲み交わした、お竜の仲立ちによって真実を知ったが嘘を責める気は毛頭ない。 良くぞ、井出勝之助を頼ってくれた、と力強く声を掛けたのだった。 陰の主・文左衛門は、かまいたちの藤兵衛と言う凶悪な盗賊を知っていた。 血を別けた我が息子を血眼になって捜していよう、と文左衛門は警戒する。 勝之助は嘘を謝るお浪に、→きっと、二人の身は守って見せる、大磯の休み処でそれがしを助けて良かったと思わせてやるからナ、と力強く言い切ってお浪を安心させる。
江戸へ向う途中、勝太郎を連れて神奈川宿で休んでいた旅籠で、しつこく誘われて酒を吞んだ浪人者二人は、お浪を酔い潰して体を弄ぼうとした下心を察知したうわばみのお浪が逆に間抜けな二人を酔い潰して翌早朝に出立したが、それを恨みに追いかける飯田惣三郎と西沢兵之助だった。 母子の二人を尋ね歩くと結構な足跡が見えてくる。 とうとう、長屋迄見つけ出してしまった。 そこに出入りする井出勝之助を見て、→あれが江戸で落ち合うと言った剣術修業の夫だな、おや、あ奴は確か、この春、川崎宿で百姓女を手込めしようとした我らの刀を取り上げた輩ではないか、その刀を江戸屋敷に訴え出られて我らは改易に遭い、浪々の身になったのだ、おのれ! 自業自得の逆恨みを燃え上がらせる二人であった。
(ここ迄、全291ページの内、104ページまで。 井出勝之助は不逞な浪人二人から狙われながら、陰の主・文左衛門から、かまいたちの藤兵衛の始末をお竜と共に請け負おうのであった。 さて、どんな展開になるか、お楽しみである)
(ここまで、約4,600字)
令和5年8月28日(月)