令和5年(2023年)3月2日 第593回

BS・NHKで日曜・月曜の早朝に放送されていたPGAの番組が消えた。 ネットで確認すると昨年末で終了したらしい。 残念! これからは有料契約しているパソコンでしかPGAのプレーが見られない。 テレビとパソコンの放送内容が微妙に違うので、テレビは続いて欲しかったのにしょうがない。 

 

驚いた、娘からの誕生日祝いを握りしめて、平日、昼11時の開店を目指して回転寿司「T」に10分前に着くと、既に20数人が並んでいた。 続々と来客があり、イザ開店!の時に後を見ると、更に30数人が並んでいる。 人気の店であるのは知っていたが、アジア系の外人も多かった。 ネットで調べて来るのだろうが凄まじいモノである。

 

愛車の二本のタイヤが凹んでいたから、マンション傍の「T・S」で診て貰うと、空気のバルブを取り替え無きゃ駄目だが、タイヤ側面のヒビがすごいので、その力が及んだ時にバースするかも知れない、最近、タイヤが高騰を続けているから早目に買ったら如何か、と親切な説明を受けたので、この先、数年で自らの運転を終える年齢になったし、車も17年目で古くなって、車税や車検代金や元々の燃費も高くなっているから、→中古タイヤを買うよりも、小さい車に代えたら?と家内の助言があり、今時、人気の軽の新車でも200万円を超えるというから、100万円代の金額を覚悟しなければなるまい。 愛車は64,000kmしか走っていないのに勿体ない限りだが・・・。

 

文庫本5冊を購入、山口恵似子「食堂のおばちゃん⑬ 初夏の春巻き」(書き下ろし)と「バナナケーキの幸福」(書き下ろし)、小杉健治「風烈廻り与力・青柳剣一郎60 ひたむきに」(書き下ろし)、小路幸也「三兄弟の僕らは」(単行本は2020年)、相場英雄「アンダークラス」(単行本は2020年)である。

 

 

中山七里「祝祭のハングマン」(新刊単行本、Oさんから借用」

・・・読後に判ったのは、祝祭とはハロウイン、ハングマンとは私刑執行人の意味だった。

朝、春原(すのはら)瑠衣は父親の誠也から起こされた。 食卓の上には湯気の立つ白米とベーコンエッグ、味付け海苔が載っている。 ベーコンエッグは父親の唯一の得意料理である。 二度も起こされたそうだがこれじゃ遅刻しそうである。 午前9時に始まる会議に間に合わないと大変だ、と一緒に出ようと玄関で待って居た父親に、→ごめん、お先に!と駅に向かって走り出した。

警視庁大会議室、6月3日に富士見インペリアルホテルで発生した大量毒殺事件である。 死者17名という残虐さ、内一人は現役の国会議員・日坂浩一が含まれている。 招集された、警視庁と丸の内署のざっと400名の陣容は壮観である。 警視庁の威信、メンツに賭けても早期の犯人逮捕をしなければならない、警視庁上層部は必死の思いだろう。 今回の捜査専従は、一課の中でも検挙率の高い霧島班と麻生班である。 瑠衣の宍戸班は地取りをすることになり、相棒は志木先輩である。 事件直後、ホテルから出た人物を残らず篩(ふるい)にかけなければならない。 宿泊者名簿、防犯カメラは既に別班が回収しており、宍戸班は1,000人以上のホテル関連従業員から不審者の情報を聴取するのだった。 今日の訊き込みは、あっと言う間に夕暮れが迫り、志木が、→新橋駅近くでメシでも食うか、と連れ立って行くと、交差点でパトカーと救急車、交通捜査官の姿が目に飛び込んできた。 交通部の、同期・綾部礼香がいたので事故内容を確認すると、→歩道から突き飛ばされた被害者が走って来たトラックに轢かれたみたい、救急隊員が到着した時点で心肺停止の状態だった、犯人らしき人物は現場から逃走している、と言い、聴取されているトラックの運転手が狼狽しながらも、自分は被害者だ、という顔だった。 被害者の社員証から、「藤巻亮二、55才、ヤマジ建設資材課勤務」が判明している、と聞かされて、瑠衣は吃驚! 何と、父の勤務先で尚且つ同い年ではないか・・・。

 

瑠衣が帰宅すると、パジャマ姿の父がリビングで寛いでいた。 父娘の帰宅時間が逆転したのは瑠衣が警視庁に配属されてからだった。 それまでは瑠衣が食事の用意をしていた。 父からは建築屋よりブラックな仕事だナ、と呆れられた。 風呂を上がって問いかけた、→会社で藤巻さんって知ってる? →同期だ、入社当時、一緒の現場だった。 →人が撥ねられて亡くなった、その人が藤巻さんだった。 途端に父の顔付が一変した。 →確かか、どこに担ぎ込まれた?と、驚愕と狼狽に彩られた別人のような父だった。 →特別、仲が良かった訳じゃないが真面目な男だ、それよりも警察の詳しい情報を教えてくれ、と個人的に便宜を図ってくれとは、普段から仕事に私情を持ち込むな、とキツイ顔で語る父では無かった。 一体、何なのか・・・。

 

翌日も志木とホテル従業員の事情聴取を続行したが手懸りは皆無、午後7時になって夕食に向かった。 交差点事故に差し掛かると、案の定、目撃情報に収集中の礼香と出くわし、→これからおひとり様で食事、奢るから一緒にどう?と、誘ってイタリアンの店に足を運ぶ。 →初めて奢ってもらうわね、魂胆は何?と鋭い。 被害者が父と同じ会社で同期と説明し、その後の情報をお願いした。 →病院に駆けつけて来た奥さんと娘さんが号泣、相変わらず、いたたまれなかったが、故人を恨んでいた人物に心当たりはないか、と尋ねたが誰一人として思い当たらない、と答えた。 →同僚も奥さんも、兎に角、真面目で愛妻家、悪い噂は一つもなし、だから、容疑者の絞り込みに時間が掛かるわね、でも、私個人の意見は、体重75㎏の人間を車道まで突き飛ばすには相当な力が必要、衝動的な通り魔ならもっと体重の軽そうな人物を選ぶと思う、単なる通り魔じゃ無いと思う、犯人像が掴めていない、事件性がハッキリすれば捜査一課にお鉢が廻るわね、と言われたが、捜査一課は今、それどころじゃない非常事態である。 マスコミもそっちのアト追い記事が主で中堅ゼネコンの社員の不審死まで手が廻っていないようだ。

 

心身とも疲れ果てて帰宅したのは11時過ぎ、父は、→藤巻の事件、犯人の目星はついたのか、と遠慮がちに呼び止められた。 →明日、藤巻の葬式でご遺族と会うから少しでも進展があれば聞きたかった、と寝室に消えた。 翌朝、礼香の予言は的中した。 宍戸班長が、→交通事故死が通り魔的な殺人と断定されて、我々の班に回されてきた、と憮然としている。 何処にそんな余裕のある班なのかと文句を言いたいのだろう。 捜査資料に寄ると、解剖報告書の死因は全身打撲と内臓破裂、妻は圭衣子・50才、娘は律・19才、この二人だけが肉親だった。 ヤマジ建設の資材課長だった。

  宍戸班長に父親の会社です、と報告してこれから葬儀場所で犯人も来るかも知れないから、参列者の写真を取っておくように命じられた。 遺族からの事情聴取は志木先輩が担当し、関係者という理由でその役目から瑠衣は弾かれてしまった。

 

上野公園に隣接した斎場で志木や他の捜査員は弔問を終えた関係者に事情聴取すべく正門近くを張っている。 瑠衣は記帳する一人一人をズームでパチリパチリと連写した。 父の顔は母が乳癌を患って逝った時よりも悲痛な感じだった。 最後の記帳が終ったが、目視した限りでは素振りの怪しい参列者は皆無だった。 志木刑事は、→藤巻さんの部下20人が全員、判で押したように、好人物だった、幾つもの業者にパイプをもったベテランで、慕う人間ばかりで嫌う人間はいなかった、と口を揃えた、弔辞を読んだ山路会長が、「余人を持って代えがたき人材」と称えていた、と瑠衣に教えてくれた。 瑠衣と志木は火葬場から帰宅した頃合いを見計らって藤巻家を訪ねた。 →いい父親で、いい夫でした、あなた方に担当が代わったのは只の交通事故ではなく殺人事件なんですね、必ず犯人を捕まえて下さい、殺した理由をハッキリさせて下さい、と藤巻圭衣子は悲しみを胸に決然と言って除けた。 11時を過ぎて帰宅すると、父はしたたかに酔っていた。 下戸だから家でも外でも吞まない父なのに、驚きである。 →奥さんと娘さんは喪主だから懸命に泣くのを堪えていた、見るに耐えん、吞まなきゃやってられん、どうして藤巻みたいな真面目な奴が殺されなきゃいけないんだ、信じた俺が莫迦だった、と酔っ払いの戯言である。 引っかかった、何を信じたの?と訊き返すと、→何でもない、訊くな、と険のある言葉が返ってきた。

 

6月19日、深夜12時、宍戸班長から、→事件だ、また、ヤマジ建設の社員が殺された、半蔵門駅5番出口、志木も向かっている、と緊急スマホが鳴った。 到着してブルーシートに囲まれた中に入ると、数人の捜査員と検視官の姿がある。 そして被害者に取りすがって号泣しているのは奥さんだろう。 検視官から、→最上段から後ろ向きに転落し、致命傷は後頭部の打撲で頭蓋骨骨折と脳挫傷、死亡推定時刻は被害者がモニターに映った午後11時43分から発見された11時45分にかけての二分間、第一発見者はこの近くの出版社の帰宅途中のOL、と説明された。 被害者は、須貝謙治52才、ヤマジ建設経理課長、だった。 被害者のアトにモニター映っていたのは女性の悲鳴を聞きつけた駅員だけで、犯人らしき人物は映っていない。 何処に待ち伏せしていたのだろうか?

 

瑠衣と志木は第一発見者の出版社・大久保さんから事情聴取した。 しかし、人が争う声も姿も無かったという。 →只、駅から走ってくる人と擦れ違ったので、あれッと思ったんです、急いで駅に向かうのなら走る人もいるでしょうが・・・ 黒っぽい色のシャツとパンツでした、暗がりだったので性別も年齢も判りません。 瑠衣は二日ぶりに帰宅した、本部で仮眠したのは僅か三時間、体が鉛のように重い。 父から訊かれる、→今度は経理の須貝が殺された、どんな風に殺されたんだ、→アトにして頂戴、と険のある言葉を吐き出した。 →言いたかないけどお父さんの会社、心証真っ黒だよ、社員が連続死するのは最早、偶然じゃない、シャワーを浴びて寝かせて頂戴、頭も碌に働かないし、と対話を遮った。

 

須貝さんの奥さんは年の差20才の身重だった。 妊娠二ヶ月にして父親を失うというのはこれから降りかかる辛苦を瑠衣にも容易に想像できる。 →もし、殺されたとしたら絶対犯人を捕まえて下さい、私と産まれてくるこの子の為にも、と妻の十和子は気丈に二人に告げた。 芯から愛し合っていた強い妻だった。 →勿論です、犯人逮捕のあかつきには必ずご報告に上がります、体調管理に専念して下さい、と受けて二人は渋谷区宇田川町のヤマジ建設に向かった。 立派な応接室に案内される前に、案内パンフレットを手にした志木が、→全部で24の部があるナ、お父さんは土木部か、それと山路領平会長の挨拶文が載っているぞ、会長以下8人の役員の内、5人までが山路姓だ、典型的な同族会社だナ、と決めつけた。 対応してくれたのは、秘書課・妻池東司、と印刷された名刺の男だった。 会長付き秘書だと言う。 →藤巻課長は資材課長と言う立場上、業者との接待が半ば慣例化する傾向にありますが、会計の時、割り勘を言い出して先方を困惑させたエピソードは有名です、須貝課長は入社以来の経理畑ですから、マニュアル適用以外の経費は全て撥ねていました、口さがない連中は「呼吸する経理マニュアル」と恐れていました。 二人とも敵がいたとはとても考えられません、二人とも不幸な事故だった、善人には似つかわしくない受け入れがたい悲劇だった、と私は思っています。 まるで警察が事件として捜査することは死んだ二人への冒涜になる、とでも言いたげな言葉だった。 →ですが、万に一つでも殺害されたとしたら警察への協力は惜しみません、資材課にも経理課にも聴取に応じるよう伝えておきます。 →ところで貴女は当社の春原課長の娘さんですか、お珍しい名前だし、娘が警視庁にいる、と聞いた覚えがありますから・・・ 貴女が担当してくれるなら、いつでも指名して下さい、と最後まで如才なかった。 ヤマジ建設を出ると、志木は憮然として、→すっかり遊ばれてしまったナ、事前に知っている事しか言わなかったし、結局知り得た事は意味の無い内容だった。 しかし、瑠衣は、ヤマジ建設に隠し事があるのなら是が非でも暴いてやる、と闘志を燃やした。

(ここ迄、全278ページの内、第一章・暗中模索、66ページまで。 このアト、第二章・疑心暗鬼、第三章・愛別離苦、第四章・遅疑逡巡、第五章・悪因悪果、と続くがもう一回UPするかも知れない)  (ここ迄5,100字越え)

 

令和5年3月2日(火)