令和4年(2022年)11月15日 第569回
イヤー、驚いたナ、31才・石川遼が優勝なんて。 石川遼に憧れてプロゴルファーになった26才・星野陸也が、最近では兄弟子と仰ぐ石川と練習ラウンドを重ねていたのに、この二人でプレー・オフになっての最終ホール、バーディで決着を付けたのは流石の兄弟子だった。 天晴れ! こんなに嬉しい事は無い。 女子は第36戦、34才・上田桃子が16番ホールで無念の+3を打って沈んでしまった。 21才・山下美夢有の賞金女王を素直に祝福するしかない。 天晴れ!である。 これで32勝4敗。 PGAは松山が途中棄権、LPGAは笹生、古江がイマイチだった。 …落語会のおば様は一人だけだったが、スナック「M」には、初めて会った一人客のおば様がいた。 落語会の12月の案内状を手渡したので次回は参加してくれるかも知れない。 仲間が増えるのは嬉しい事なのだ。
U内科から単行本3冊と文庫本1冊を借用。 単行本は、最新刊の池井戸潤「ハヤブサ消防団」とは嬉しい限り。 単行本の新刊はOさんとU内科にお任せである。
風野真知雄「新・大江戸定年組(三) 変身の牛」(書き下ろし)
・・・(一)は第463回、(二)は第464回にUP済みです。
第一話 医術の窓
ひと晩、強風に見舞われた「初秋亭」を心配して、夏木権之助、藤村慎三郎、七福仁左衛門は早々に現れたが、枝木が何本か折れただけの被害だった。 ごめんよ、と入って来たのは、つまらん爺さんこと、元・蘭医の富沢虎山である。 乾麺の箱を差し出して嵐の陣中見舞いだという。 虎山は、→二ヶ月ほど前に、紀州藩お抱えの藩医を五十歳で辞めて後、五年間長崎で勉強した真崎仁斎がここ故郷の深川に戻って来た、今、格安の代金で寝る間も惜しんで駆けずりまわっている、と嬉しい話を聞かせてくれた。
今日は二階では、仁左衛門が近所の隠居二人の将棋の立ち合いをしている。 この隠居は、始終将棋をしているが必ず、喧嘩になるという。 →いったい、何故そういう事になるのか初秋亭の旦那に見極めて貰いたい、と願われたのだった。 外に出ていた夏木は、7~8才の女の子が、五匹の子猫をカゴに入れて持ってきて、→おとっつあんが大川に捨ててこい、って泣きながら縋るものだから、→よしよし、泣くな、知り合いに一匹ずつ飼って貰うようにするから、と宥めていた。 何もしていないのが藤村だけ、そこに→ごめんなさいよ、と二度も呼ばれて寝惚け眼で出て行くと、→真崎仁斎と言います、相談があります、と切り出されたのは、→どう診察しても悪いところの無い男が毎朝やって来るんです、京作さん、31才です、理由を調べて頂いて、もう来ないようにして下さい、他の患者に迷惑なんです、と拝むようにして帰って行った。 夏木は一匹だけ連れ帰ってきた、本人が飼ってやるらしい。 二階では喧嘩の理由が分かったようで三人が下りて来た。 将棋をさしているうちに必ずどっちかがイカサマをやるんだが、ヘボだから直ぐ気付かずに暫くしてから気付くモンだから、そこで喧嘩になるって訳さ、と呆れた仁左衛門が説明してくれた。
翌朝、藤村は真崎仁斎の診療所に行くと、既に京作らしき男が一番前に並んでいた。 ぶら下げている煙草入れと煙管は凝った細工がしてあって、確かに貧乏ではないのだろう。 戸を開けた若い娘が、→また、今日もですか、と嫌な顔でハッキリ言っている。 それを無視して入って行ったが、後ろの並んでいたおかみさん達は、いっせいに、→まったくアイツ、何処も悪くない癖に、とか、仁斎先生も叩き出せばいいのに、と詰り始めた。 患者の間でも悪名が高い京作である。 四半刻して京作が出て来たから藤村は跡を付けた。 途中、大きなうどん屋に入り、かけうどんを注文し、食べ始めてから、店主に文句を付けた。 →ここは流行っているけど味は大した事がない。 60才程の店主は、→てめえ、イチャモンつける気か!上方野郎だナ、おれはここで30年も商売やっているんだ、上方の惚けた野郎には江戸のうどんの味はわからねえんだよ!と怒鳴りつけている。 京作は、→江戸だろうが、大阪だろうがうまいもんはうまいんや!と代金をぱしんと縁台に叩き付けて走って出て行った。 あいつ、危ない野郎かナ、と藤村は思いながらも更に追いかけた。 すると「冨士屋」という宿屋に入っていく。 主らしき男に、→今入って行った京作はいつから泊まっている? すると、→4月からですから間もなく5ヶ月になります、宿代も月毎に前払いで頂いています、詮索すると嫌がられるので商売は何をしている人か、判りません。 上方からの旅の者がどこも悪くは無いのにわざわざ医者に掛かっている、何だ? 真崎仁斎に先程の状態を報告してから、→明日は適当に処方した薬で値段を吹っ掛けてくれ、一両でもイイ、と指示をした。
翌朝、藤村は初秋亭に来ていた富沢虎山を伴って仁斎の診療所を訪ねた。 仁斎はクスリを処方して一両の代金を受取った。 若干の不満はあったらしいが京作は代金を支払った。 藤村は今日は追けて行かずに、隣のうどん屋で二人で朝飯を摂る事にした。 調理場の馬次は元々丹沢の山に入っていた猟師だったが、怪我をしてうどんの修業中らしい。 少し、コシは弱いが出汁は一級品で、まあまあである。 そんな話をしながら調理の向こうに仁斎の診療所が見える。 藤村が、あッ! 閃いたよ、と自信ありげに呟いた。 翌朝、京作に向かって、→よう、アンタうどん屋だろう、と笑みを浮かべながら声を掛けると、あっさり、毎日診療所に来ていた理由が分かったのだった。
(ここ迄、237ページの内、58ページまで。 以下、第二話・玩具の牙、第三話・変身の牛、第四話・逆転の宝、と続くが、何れも肩こりしない軽さである。 今回はここまでにしょう)
(ここ迄約2,400字)
令和4年11月15日(火)