令和4年(2022年)1月15日 第480回

PGA、2022年の初試合、ハワイ・マウイ島での激闘、何と、TOP3は-34(優勝1、476千㌦)、-33、-32のハイスコアであり、長いPGAの歴史でも-31のツアー記録を、3人があっさり塗り替えたのである。 前年優勝者38人の試合であったが、それにしても好プレー続出であった。 流石、世界の一流プロである。 松山は-21でも13位(155千㌦)でTOP10にも入れない、全体的にハイレベルな好試合であった。 パソコンで二日間、BS・NHKで二日間、新年早々、ハワイの快晴の中のプレーを気持良く堪能した。 あっ晴れ! 

 

 

金子成人「付き添い屋・六平太」(文庫本、書き下ろし)

付き添い屋とは、裕福な商家の子女が花見や芝居見物に出かける際、案内と警護を担う侍の事

(これはシリーズもので、14巻の既刊がある、始めてこの15巻目を買った)

 

長屋「市兵衛店」の住人は、大家の孫七、大工の留吉・お常夫婦、大道芸人の熊八、噺家の三治、付き添い屋の秋月六平太の6人で、空き家が一軒である。 同じ付き添い屋の仕事をしている平尾伝八が妻の多津江とこの空き家を見に来た。 今の長屋が雨漏りが酷くてどこかイイところを探していたらしい。 洗濯屋の仕事を妻が請け負っているので店賃は心配ないと言う。 二人は二階の部屋と物干し台の見晴らしが絶好と喜色満面で、すっかり気に入って、大家さんに入居を願い出ていた。

 

六平太は、口入屋「もみじ庵」に付き添い仕事の有無を聞きに向かう。 主の忠七が、→ちょうど五日後に付き添いがあります、飛騨屋のお登勢様のお名指しで、「いかず連」の皆さまが大川で舟遊び、夕刻から深川の料理屋で会食の付き添いです、秋月様にぜひにと言付かっております。 「いかず連」は、嫁入りなぞものともせず、堂々と独り身を通そう、という旗印を上げた未婚の五人の集まりだった。 飛騨屋は木場の材木商でお登勢はそこの娘である。 主の山左衛門・おかね夫婦とも五年以上の六平太のご贔屓先であるから、前回の「いかず連」で気が重くなったから、と言って断われまい。 →分った、受けるよ、と力なく答えたのだった。 その足で飛騨屋に向かい、噺家の三治を同行したい、とお登勢に告げると、→三治さんなら歓迎よ~、と目じりを下げた。

 

8月25日、朝から晴天である。 5人の女を乗せた屋根船が六平太と三治を拾って大川を遡上する。 →よッ、お揃いですな、いかず連のお嬢様方!と三治がさっそく太鼓持ちの声を上げる。 お登勢以外の四人は三治が初めてなので、自己紹介を始める。 →初音亭三治と申しまして、噂によれば江戸一番の色男と言われているケチな男でございます、どうか、よろしくお付き合いの程申し上げます、と口上を述べると、ふふッと笑い声が洩れる。 お登勢が四人を紹介する、島田町の刃物屋の千賀はお登勢と同じ21才、門前仲町・瀬戸物屋のしのは23才で一番年嵩である、 山本町の傘屋の仲は19才、二の鳥居の料理屋「村木屋」の紋は22才、今夕の会食場である。 昼餉は浅草寺脇の料理屋で摂り、毘沙門天を皮切りに、浅草寺の大黒天、浅草神社の恵比須様、今戸神社の福禄寿と七福神の半分を回った処で今回は打ち切りとなった。 村木屋で会食が始まると、いかず連の怪気炎が上がった、→わたしたちはさァ、男方を貰ってやるのはわたしたちだよって気概をもつのよ、よその家に入ると好きな事も出来ないし・・・、と入り婿の男を離縁して追っ払ったお登勢が力む。 千賀が続ける、→嫁にいった女の方から亭主に離縁状を叩きつけられるようなご時世になればイイのにね、ただ先々の事を考えちゃうとねェ、ウチの刃物屋を継ぐのは兄、その兄が嫁を迎えて子が出来る、兄嫁が気の強い女なら、私を追い出そうとするかも知れない、兄が庇ってくれるかどうか、家を出されてしまったら一人で暮らしを立てて行けるかどうか・・・、と不安を洩らすと、いかず連の面々にもズシリと胸に響いたようだ。 その時、奥の部屋からぶつかるような音と何人かの男の怒鳴り声が聞こえてきた。 ここの娘のお紋が様子を見に行った。 父親の儀兵衛と戻ってきたお紋は、→どこかの旗本の小倅どもと、そのお屋敷に出入りしている商家の若旦那、そして連れて来たおなご衆三人、奥に布団を敷け、と喚いているけど、出会い茶屋と間違えている、と目を釣り上げてまくし立てている。 三治が、→それは噂に聞く「小酌密会」の連中ですかね? 悪評高い「小酌密会」とは、武家や商家の子弟達がおなご衆を連れ込んで酒宴に及び、その後、肉欲に耽る集まりだった。 そういう説明を受けていると、若侍三人が女を伴って入って来た。 後ろから入って来た商家の者が、→丹二郎さん、ここはいけません、と両手を拡げて行く手を拒んだが、別な若侍に、→庄七郎、ここにいる女達の方が上玉だな、と意に介しない言葉である。 →庄七郎と慎太郎は男二人をつまみ出せ、ここの店の者はこの女どもと一夜を過ごす部屋に布団を敷け、と世の中を舐め切った太々しさだった。 六平太は、徐に、→お前さんを招き入れた覚えは無い、というが早く、庄七郎の足を掴んで畳に倒し、更に三治に掴みかかった慎太郎の背後から引き倒したのである。 丹二郎は怒りの表情で脇差を引き抜いた、→浪人、おれを愚弄するのか、と振り上げるが、六平太はおちょこの酒を顔にひっかけた。 目くらましが効いて脇差は空を切った。 丹二郎の腕を摂って柔の技で背中から投げ飛ばし、脇差をもぎ取って鞘に納め、座敷の隅に放り投げた。 →親分、こちらの方々が無体な事を!と番頭が土地の目明しと下っ引きを連れて来たが、→町方の目明し風情が武家を縛れるのかッ!と丹二郎が虚勢を張った。 →おれなら、寺社奉行に訴え出る、富岡八幡宮の門前町で狼藉を働いている、幕府にゆかりのあるこの土地で騒ぎを起こしたなら寺社奉行様は取り上げて下さる、そうすりゃ、お主の家名に傷がつく、読売りに嗅ぎつかれたら大ごとになる、それでもイイのかい? お登勢も勢いづいて、→親分さん、そこのお店者だけでも引っ張っていっておくれ、と声を上げると、お店者は畳に這いつくばって、→どうかそればっかりはご勘弁願います、どうかどうか穏便に、と鼻水を垂らしながら謝罪している。 →覚えていろ!と丹二郎は捨て台詞を吐いて、侍三人とお店者は這う這うの体で去って行った。

 

村木屋の騒ぎがあって食いっぱぐれたご馳走を折詰にして持ち返った六平太、三治、登勢の三人は、飛騨屋の中庭に面した座敷で、当主の山左衛門・おかね夫婦も加えて、酒を酌み交わしていた。 小酌密会の噂はここの当主にも届いており、→旗本の小倅どもが出入りしている商人に接待させて女連れで押し掛けている、船宿の主たちは嘆いている、という。 三治は村木屋の座敷の隅に放られた脇差を持ち込んでいた。 →結構な脇差ですな、これを失くして向こうがどう出てくるのか、楽しみですナ、と当主と六平太がニンマリ笑みを交わしたのだった。

 

飛騨屋に泊まらせてもらった翌日、二人が市兵衛店長屋に戻ると、丁度、平尾伝八夫婦が引っ越してきた最中で、大家の孫七や大工の女房・お常が手伝っていた。 さっそく二人も手伝いに入る。  間もなく引っ越しを終えると、昨日の村木屋の番頭・鶴吉が訪ねて来た。 →昨日のお店者は、日本橋・味噌屋「陸奥屋」の跡継ぎでした、陸奥屋の番頭が料理代金の支払いと、侍たちの所業について何卒穏便に、と深く謝罪した上で、置き忘れた脇差を持ち帰りたいと仰せでした。 六平太は二階から脇差を取って来て、→おれが届けるよ、と番頭に有無を言わせなかった。 若侍の名は永井丹二郎、4600石の旗本、永井主計頭様の次男だと言う。 六平太が訪れて、永井家の出てきた若党に丹二郎との面会を求めた。 すると三人が出てきた、庄七郎は高木、慎太郎は日置と仕方なく名乗った。 →じゃ、これ忘れものだ、と手渡すと、呆気に取られた丹二郎が、→カネをせびりにきたのじゃないのか、と嘲笑を見せた。 →ウチの道場を見て行かぬか、とけしかける様に言うので、→それも一興、と六平太は応えた。 道場に行くと丹二郎は、→佐々木、この秋月殿と立ち会え、木刀だ、と命令する。 上段に振り上げた佐々木の木刀に、一瞬早く六平太が叩き付けると、カラカラと音を立てて道場の床を滑ってゆく、佐々木は手が痺れたらしく手首を押さえている。 →次ッ、高岡、と丹二郎が声を張り上げる。 礼もそこそこに突進してきた高岡を、ギリギリ躱すと木刀は空を切り、高岡はそのまま、板壁に激突した。 丹二郎が、→このザマは何だ! この程度の使い手しかおらんのかッ!と怒鳴った時、→一体、何事か! これは丹二郎様、と師範代の岩藤が入って来た。 丹二郎が怒りをぶつける、→ウチのモノがこの浪人に不様に負けた、師範として恥ずかしくないのか、岩藤! 師範代は丹二郎の面罵に顔を顰めたものの、大きな動揺を見せずに、→この立ち合いはそこもとの申し出か、と六平太に厳しく問うと、慌てた丹二郎が、→いや、たまたま、行きがかり上の事だ、とそれ以上の追及を躱した。 →オレは野暮用がある、これで失礼する、と会釈して道場を出た。

 

その二日後、刃物屋一家五人の萩見物の付き添いをしたアト、口入屋「もみじ庵」で付き添い料金を受取りに行くと、平尾伝八も付き添いの仕事が終わって寄っていた。 二人は揃って「市兵衛店」長屋に帰宅の足を向けたが、途中、後ろから五人の覆面をした侍が襲い掛かって来た。 六平太は切り込んできた白刃を躱して相手の腕に峰を叩き込むと、グキッと骨の砕ける音がした、続いて来た男の背中に峰を打ち込み、もう一人の太股辺りに峰を叩き込んだ。 先の男は片腕をだらりと下げたまま茫然としている。 残った二人は六平太の気迫に呑まれて強張ったまま、動けないでいた。 →五人揃って引き上げろ、と告げて刀を鞘に納めた。 →この稼業を続けるつもりなら、平尾さんも腕を磨くようお薦めします、思わぬところで恨みを買う事がありますからね。

 

六平太の妹の佐和が、9つになった娘のおきみと3つになる勝太郎を連れて市兵衛店にやって来た。 大きな風呂敷包を抱えている。 亭主の音吉は浅草十番組「ち」組の纏持ちである。 →火消しの諍いが起こり、音吉が仲裁役に選ばれてあちこち飛び回らなければならない、話が上手く行かずに荒れたら何が起きるか判らないから、当分、兄上の所に行ってくれ、と音吉さんが言うの、暫くお邪魔させて下さい、という理由だった。 六平太は、→解った、片がつくまでいればイイ、と安心し、姉弟は、→二階で寝る!とはしゃいでいる。

 

翌日、六平太は「ち」組の親方を訪ねた。 →こりゃ、義兄さん、と音吉が腰を上げてくる。 火消しと火消しのイザコザでどっちもアトに引けないと意地の突っ張り合いになっている。 江戸の町ではこれ迄何度もあった事である。 詳細を訊いて六平太は、→解った、佐和達の事は心配するナ、と音吉を励ました。

(ここまで全280ページの内、98ページまで。 襲撃された五人組の正体は? 永井丹二郎や道場師範代との確執は? 妹・佐和と義弟・音吉一家の首尾は? 手打ちは上手くいったのか? 六平太を慕う、いかず連の一人とは? 平尾伝八の腕は磨けたのか? ・・・肩の凝らない楽に読める一冊である)        

 

 

 

大相撲初場所が始まった、さじき席にあのワンピース美女がいる。 初日は九州と違って、いつものテレビ画面左側の席である。 二日目はテレビ右側、三日目は初日の位置に戻った。 午後2時頃に来場して午後6時過ぎまで、背筋を伸ばした正座を4時間も貫いている。 それはそれで立派、と思う。 落語会の桂S師匠が、→あれは二所ノ関部屋のタニマチの娘さん、その筋から15日間もあのさじき席が取れる理由、と本当らしく言ってたが・・・。 それにしても9月に姿を見せなかった訳が知りたいモンだ。  高校同級生・Tとそっくりな呼び出し次郎は前九州場所を怪我で休場したが、今回はテレビで最期二番の取り組みを呼び上げていた。 今は奥さんの実家のK町に定住しているTの顔を毎日、じっくりテレビで拝めるのは嬉しい限りである。

 

文庫本4冊を購入、町田そのこ「コンビニ兄弟2」(書き下ろし)、小杉健治「向島・箱屋の新吉」(書き下ろし)、浅田次郎「夕映え天使」(単行本は2009年)、池井戸潤「シャイロックの子供たち」(単行本は、2006年)である。

 

(ここまで5,100字越え)

 

令和4年1月15日