令和2年(2020年)8月18日 第350回

コロナ罹患者、前回UPした僅か2日後に、人口8位の北海道は人口25位の沖縄に24人抜かれて10位になった。 (11位の京都とは500人以上の差があり、1位~10位までは今後も不変だろう) 実に弓矢の如しの速さで、正に沖縄全島がクラスターそのものなのであろう。 ホントに恐ろしい、これは県民性の違いなのであろうか? それとも夏の観光客が持ち込んでいるのか?

 

女子プロゴルフ第2戦、ジャンボ尾崎の門下生・19才が初優勝。 何と、プロ2戦目とは! 日本とフイリピンの国籍を有しているが、名前は漢字4文字で日本人そのものである。 世界を目指しているらしいが一緒に回った34才の藤田さいきが、その才能に惚れ込み、飛距離はあるし、ゴルフがデカい、日本では狭いのでは?と称賛していた。 来年のオリンピックにはフイリピン国籍で出場し、次回は日本国籍で出たいと希望を持っているそうだ。 それにしても女子プロは若い世代が続々と現れてくる。 黄金世代~プラチナ世代、次の名前は? 男子プロよ、人気者よ、出て来てくれ!   

 

 

今野敏「スクエア」(単行本・2019年、U内科から借用)

・・・読み終わっても題名の意味が理解出来ない、詐欺に使われた土地が四角いという事? それとも事件解決に到った横断的な県警組織が四角の中に収まったという事?

 

神奈川県警みなとみらい署・暴対係の諸橋係長(警部)は、暴力団から「ハマの用心棒」と呼ばれて恐れられている。 部下の係長補佐・城島(警部補)と絶妙なコンビ振りである。 更に最も頼りになる暴対係の4人、浜崎、倉持、八雲、日下部は、一騎当千の強者揃いであった。 朝っぱらから県警監察官のキャリア、まだ30代の笹本が署内をうろついている。 諸橋係長に、県警本部長がお呼びだ、城島補佐と同行願う、と切り口口上だった。 指名された二人からすれば本部長とは雲の上の存在である。 普段から脛に傷持つ身としては「何か、悪い事でもしたか・・・」と嫌な気分になる。 署の前には黒塗りの公用車が待っていた。 佐藤本部長は51才の警視監である。 「アンタ方二人は神奈川県警一のマルBのベテランだと聞いた、昨日、中華街で一財産を築いた中国出身の人物が殺された、捜査一課の聞き込みでは、被害者がマルBと関わっていた事が判明した、俺の特命で山手署に設置された捜査本部に入って欲しい、君達が普段からやっている方法でイイ、俺はそのやり方を支持する」 普段から笹本監察官から違法的なやり方について目を付けられている。 暴力団の曲者相手に四角四面のやり方で対処出来る訳がない、しかし、本部長がそう言うのであれば思いっ切りやれる、無論、本部長の要請を断れる筈も無い、笹本だけが苦い顔付だ、しかも、これからず~ッと二人に付きっ切りだと言う、建前は二人の捜査を援助する ・・・いや、監視だろ、うんざりするけどな。

 

山手署の捜査本部は実質県警捜査一課の山里管理官が仕切っていた。 特命を受けた事を知った管理官は、やあ、宜しく頼むぞ、と気さくである。 中区山手町の住人から通報があった。 廃屋で遊んでいた子供が遺体を発見した。 中国人・劉将儀(リュウショウギ)85才。 4年前に土地・家屋ともそっくり人手に渡している。 そして、本人は3年前から消息を絶っていた。 説明を聞いている最中に管理官に報告があった。 遺体発見現場を検証していたら、別の白骨死体が出て来た、と。 三人が現場に駆け付けると、広い敷地に洋館、相当な資産価値である。 捜査一課の小出係長が出張っていた。 捜査一課の板橋課長も臨場してきた。 一応、本部長特命のマルBも監察官も判ったが、兎に角、邪魔だけはしないでくれ、と地方(ジカタ)のノンキャリアらしい言い方だった。

 

行き付けの中華高級店でフカヒレあんかけチャーハンで昼食を摂る。 50代前半の陳マネージャーに、劉さんが遺体で発見された件を話すと、一瞬言葉を失って、どういうことですか? 4年ほど前に店を手放して山手町の豪邸で悠々自適の生活だ、と耳に入っていたらしい。 店を手放してから一回も顔を見ていないという。 暴力団と関係は?と訊くと、そんな話は全くなかったし、劉さんは暴力団が大っ嫌いでしたから、買い手も馬健吉(まけんきち)さんで、華僑のお孫さんです。 陳マネージャーにスマホの遺体の顔を見て貰ったが、「この人は劉さんじゃない」と言い出した。 50代半ばの馬健吉の店に出向いて、もう一度確認したが同じく、「これは劉さんじゃありません」と確答を得た。 馬の家族と写した写真を見せてもらうと、遺体の顔は確かに劉ではなかった。 それをスマホに送ってもらって、捜査本部に戻った。 最初の遺体は劉の免許証があった。 しかし、これは誰かが劉を殺害して劉に成りすましたのだろう。 とすれば、アトからの白骨死体が劉の可能性が高い。 劉になりすました奴は誰だ? 板橋課長は吠えた、こんな情報は捜査一課か山手署が仕入れて来るべきだ、捜査員に発破を掛けろ! 如何にも、面子が掛かっていると言いたげな板橋課長だった。 地方(じかた)の矜持が透けて見えた。

 

山里管理官と諸橋・城島は、劉になりすました目的は山手の一等地を売り飛ばす詐欺か?と推測した。 だとすれば知能犯担当の捜査二課の情報が必要だ。 しかし、詐欺師としては外道な奴だ、一流の詐欺師は殺しはしない。 全国の知能犯担当に、劉に成りすました免許証の顔写真を送って問い合わせよう。 諸橋は神風会の神野組長を訪ねた、代貸・岩倉と二人だけのヤクザだった。 ヤクザと癒着? 笹本は苦渋の顔付であるが暴力団の情報収集先としては一番の相手であった。

劉さんを知っているか? 遺体で見つかった、マルB絡みの詐欺計画があって、それがトラブったと俺は読んでいるが、何か、知らないか? 最近は都会の空き地がほったらかしになっていて、それに暴力団が目を付けて勝手に登記簿をでっち上げて売り買いする輩がいるそうです、金の為なら何でもやる奴らです 蛇の道はヘビだ、調べてくれ

 

捜査本部に戻ると県警捜査二課の課長、永田優子(30代半ばの警視)と山里管理官、板橋課長が難しい顔付きで諸橋たちを呼び寄せた。 本部長命で知能犯担当の二課も本部に加わるという。 縦割りの弊害を取り除こうとする本部長采配なのであろう。 殺害された人物は二課が詐欺事件で追っていた、井原淳次、小池学、小原滋と名前を使い分けていた。 恐らく、井原が本名であろうと永田課長が言う。 彼が関わっていたマルBは関西系の三次団体で波田野組の泉田組長、フロント企業は不動産業のハタノ・エージェンシー、以前に波田野組長は殺害されて、若頭だった泉田が組を引き継いだのである。 井原と泉田、この二人がつるんでいた理由を洗えばイイ。 しかし、板橋課長は「殺人の捜査を台無しにするような事はするな」と釘を刺す、すると、永田課長が「全容を解明して詐欺も殺人も一網打尽にしなければなりません」と、骨のある事を言った。 もしかしたらこの二人は衝突するかも知れない。

 

城島が推測した。 波田野組は、関西が神奈川に進出する為の橋頭堡で、勢力拡大を最大の使命にしているバリバリの武闘派だ、その為に土地を手に入れる事が極めて有効、不動産売買は縄張りを広げるイイ手段だ、確かにキナ臭い。 諸橋は部下の浜崎に指示した、ハタノ・エージェンシーの不動産取引を洗え。 ・・・みなとみらい署に戻った三人は、ハタノの事務所に一番近い繁華街・伊勢佐木町でメシを食おう、と出かけた。 午後9時半、焼き肉屋でタップリ肉を味わって割り勘にした。 30分ほど、ぶらぶら歩いていると城島が言った。 あそこの角に居た奴が俺達を見て小路に入って行った、行ってみよう。 男は30才位、その恰好は暴走族やマルBには見えない。 「兄さん、俺達を見て逃げたでしょう」 「何すか、それ、言いがかりでしょう、まじ勘弁してほしいんすけど」 諸橋の顔を見たらすぐ目を逸らした、こいつは俺のことを知っている。 その時、諸橋の背後で声がした。 三人組の真ん中はどう見てもマルBだ。 せいぜい35才位か、アトの二人はまったく貫禄が無い20代、それも関西系だな。 「そいつは私の知り合いでしてね、話なら私が伺いましょう」 「あんた、何者だ、見ない顔だな、最近関西から来たか? ハタノ・エージェンシーか?」 言いがかりを付けられた男が言う、黒滝さん、そいつはハマの用心棒って呼ばれている警察官です、ヤバいですよ。 諸沢が声を張り上げた、しょっ引かせてもらう、アンタは職務質問の邪魔をした。 「引っ張るならやってみな、簡単にゃいかねェ」 若いのが先に出て来た、城島が間髪入れず顔面にパンチ、まさか、警察官が先に手を出すとは思ってもいなかっただろう。 すかさず、顎先にフック、脳が痺れて相手は簡単に地面に崩れ落ちた。 更にもう一人がローキックして来たが、城島は相撲の四股に似た立ち方で相手の脛を受け止めると、相手は酷い痛みを感じる、ガラ空きの顔面に腰を入れたパンチを叩き込む、鼻がぐしゃりと潰れるのがハッキリ判った。 アッパーで止めを刺すと地面にひっくり返った。 黒滝は諸橋の膝を狙って足を一閃させた。 ギリギリで躱すと裏拳が飛んできた。 諸橋は相打ち覚悟で右の渾身のパンチを繰り出した。 黒滝の左のフックがかすめる、同時に右の拳に強かな手ごたえがあった。 諸橋はまた相打ち覚悟で右のパンチを出す、今度は顎にヒットした。 続けて黒滝のボディーに左・右の連打を打ち込んだ。 ボディーと言っても胸だ、両側のあばらに相手の呼吸を止めるポイントがある、ヒットした、黒滝はダラリと地面に崩れ落ちた。 三人に手錠を掛けて応援で呼んだパトカーに押し込む、最初の男にも、アンタも連行する、名前は? 太田俊一ッす。 ・・・署に戻ると笹本が、問題になる、どう見ても先にこっちが手を出した、訴えられたら言い訳が効かない。 マルBは訴えなんかしないから気にするな、と二人は鼻にもかけない、ハタノ・エージェンシーに正面から行っても軽く否定されて終わりよ、連行してきたからじっくり尋問できる。 初めからその気だったな、と笹本が唸っていた。 当り前よ、計算ずくの仕掛けた喧嘩だよ、ちゃんと結果を考えているさ。

 

伊勢佐木町は伊勢佐木署の管轄である。 城島は今朝、仁義を切って来た。 最初は太田、諸橋は浜崎に「ハタノ・エージェンシーに電話して、太田と言う社員がいるか確認、いたら、今日は警察で用があるから欠勤になる、と伝えてくれ」 会社でパシリをやっている、下っ端には黒滝さん達は良く知らない、三人が出て来たのは事務所も近いし、たまたまだ、と言い張る。 確かにマルBには見えないから、諸橋と城島は妙に納得した。 羽田野亡きアトの代紋を泉田が受け継ごうとしても、関西の上部団体が睨みを利かせる筈だ、その為の黒滝の送り込みか? 次は黒滝、「これが横浜のやりかたか、汚いやないか」と吠える。 しかし、城島は「そうだよ、俺達は網を張っていた、お前はまんまと引っ掛かったんだよ」と平然と言う。 黒滝は不意におとなしくなった。 事情を悟ったのだ。 「黒滝ってんだろう、何をしに来た? 劉将犠と言う人知ってるか、井原淳次、小池学、小原滋は?」 一切返事をしない。 だから脅しをかけた、これは殺人容疑だ、というと落ち着きが無くなって、どうにも耐え切れなくなったようだ。 自分の名前・住所・35才を言いながら、「そんな名前は知らないが、俺は子会社への出向だ、目的は聞いてない、一方的なカシラからの命令だ」 「カシラとは茨谷組の田子勇次だな」 「カシラの名前まで良く知っているな、そうだ、泉田の所に行けと言われて、二週間前の10月27日・日曜日に来た、殺しの容疑を着せられたら敵わん、それとここを出たらリターンマッチや、今度は俺が勝つ」 「望むところだ」 二人のやり取りを見ていた笹本は呆れた表情でかぶりを振っていた。 

 

昨夜の伊勢佐木町の大立ち回りが板橋課長の耳に入ってカンカンだったが、永田課長が「事態が動かないのなら動かすのも手ですね、二人はマルBのプロです、ただし、結果を出して下さいね」と、二人を庇いながらも念を押した。 関西から三人にウチのチームを張り付かせます、焦って何か動けばイイですが、と山里管理官に申し出た。 諸橋・城島・笹本の三人はハタノ・エージェンシーを張り込んだ、黒滝も太田も姿を見せない、一時間ほど経ち、16時に黒塗りのミニバンから泉田が下りて来た。 表敬訪問することにした。 総務課長が、社長代行に? お約束は? 「みなとみらい署の諸橋と告げて下さい」 まだ40才の泉田には、不動産取引の詐欺などはやっていないだろうな、劉将犠さんを知っているか? 詐欺容疑の三人の名前は?と ズケズケ問い質す始末だった。 何にも知らないと受けてから、黒滝たちの出向目的は何だ?と切り出す。 営業活動の強化です、と白々しい。

(ここまで、全427ページの内、148ページまで。 泉田に揺さぶりをかけ続ける、黒滝と太田をマークしていると、どうも黒滝よりも太田の方が上位に見える立ち居振る舞いなのに、ヤサは、太田は安アパート、黒滝たちは高級ホテル、何だこの逆転格差は? 更に波田野組長の死因はヤクザの世界では恥以外の何物でもない始末だった。 殺し、マルB、詐欺等々が絡まった事件の謎解きを、諸橋一派の大活躍が成し遂げる、痛快ストーリーである。 ・・・驚愕の真相だった)

 

 

庫本4冊購入。 柚木麻子「BUTTER](単行本は2017年)、水生大海(みずきひろみ)「だからあなたは殺される」(単行本は2017年)、加藤正人「凪待ち」(単行本は2019年)、有川浩「シアター 2」(2011年文庫書下ろし~①の単行本は読んだ記憶があるが②はない?)

 

(ここまで5,700字超え)

 

                        令和2年8月18日