令和2年(2020年)7月15日 第337回

9回目の図書館、10冊返却、4冊借用。 Oさんからの前回借用分3冊はまだ手が付かず。 果て、いつになるか? ・・・毎月・第二土曜日の落語会、いつも古典を三席だが最近の演目は以前に耳にしたモノばかり、おまけに本席に入る前の小噺も同じ様なモノが続き、オチが判っているのが多いから失笑どころか白けてしまう。 同じ落語家を長く聞いているとこうなるのかなァ。 まァ、酒を楽しく飲める仲間もいるが、そろそろ引き時かなァ・・・。 

 

 

 

小路幸也「スローバラード」(文庫本、単行本は2016年)

・・・東京・北千住で「弓島珈琲」を営む弓島大(ダイ)を中心としたダイ・シリーズ第4巻である。

「コーヒーブルース・30才」 「ビタースイートワルツ・40才」 「モーニング・45才」 (以上3巻は図書館から借用して読了した) そしてこの物語は、今年53才になるダイとその仲間の事件簿である。

 

無敵の肉体を誇った元・女子プロレスラー(キラー・ザ・怒子)こと丹下さんも今年81才である。 今日も寸胴鍋にミートソースを仕込んでおり、11時半を廻る頃には絶品のミートソーススパゲテイを注文するお客さんでいっぱいになる。 大人気になったのは、二年前のテレビで淳平こと、今では­実力派の人気俳優となった大野淳平がお昼のテレビで、「弓島珈琲」を紹介し、丹下さんの作るミートソーススパゲテイは旨い、と絶賛したからだった。 大学時代にバンドを組み、淳平、ワリョウ、ヒトシ、慎吾、ダイの5人が一緒にここに住んでいた仲間だった。 淳平の奥さんの花凛さんはタレントでありながら元・国立美術館のキュレーターであり、子供はいないが、今は横浜在住で芸能界でも有名なおしどり夫婦である。 この店にテレビクルーの皆さんが大挙してやってきてロケまでして行ったのである。 それが放映されるとお客さんが10倍以上に膨れ上がった。 ・・・カラカラと音がして、ここに下宿している翔子ちゃんと弟の翔太の双子の姉弟と、金沢市のワリョウの息子・美園明が入って来た。 「朝ご飯、お願いします」 三人は同じ大学の仲間で三年生、さ来年は卒業である。 翔子・翔太の両親は孤児院育ちだったが交通事故で二人同時に亡くなっていた。 親戚縁者は皆無であった。 今は、親が残した生命保険金で慎ましく暮らしている。 だから、皆が親戚同志のようなここでの生活が最高に嬉しいのだった。 大学で明と出会い、ここに入れてもらった親切心は決して忘れない。 また一人、バツイチの三栖さんも入って来た。 食事は自分で作っている還暦近い警視庁の警部で、敷地内の部屋を借りて住んでいる。 ポテトサラダだけを注文し、「あゆみちゃんのポテトサラダは絶品だからな」と褒めるあゆみは、元・弁護士でダイの歳離れた若い奥さんである。 来年小学生になるさやかと言う可愛い子供も授かった。 今は、下宿屋のおばさんと喫茶店の店員と子育ての三役である。 下宿人三人が大学を卒業したら弁護士に復帰したい、下宿屋はこれで終わり、と考えているようだ。 「ダイおじさん、あの古いビリヤードを貰った、ってホント?」と明が尋ねて来た。 「三階建ての古いビルの持ち主で、父の友人だった刈谷さんが半年前に亡くなった、誰も相続する人がいなくて、遺言で、嫌じゃなかったら貰ってくれって言われた」 あゆみが権利関係の事を全てやってくれて何の問題もなかった。 ゲームクリエーターとして今や、10人のメンバーを抱えるゲーム製作集団の代表の純也が掃除や手入れをしている。 自分の事務所にしようか、と考えているらしい。 「鍵は純也が持っているから、ビリヤードをしたいなら貸してもらえ、アト始末と掃除だけはしっかりとナ」 「ラッキー」と喜んでいる三人だった。 

 

そこに水戸の中学校の教頭になっているヒトシから電話が入った。 「高二の息子・上木智一がそっちに行ってないか? どうも家出したらしい」 昔、植木等を捩ってヒトシと呼ばれていたまンまである。 「担任から智一君が登校していない、と電話があって、智一の机の上に、書置きがあった。 東京に行ってきます、連絡するから心配しないで、しばらくしたら帰ります、とだけ」 「携帯も何度も鳴らしたが出ない、財布も結構な金額を貯めていたから、恐らく4~5万円くらい」 「思い当たるのは小学校からず~ッとやって来た野球を一年生で怪我して辞めた事、でも、それも自分で決めた事だし・・・」 「三栖さんからアドバイスを貰えたら」と言うので、三栖さんに変わったが、「今の状態では警察は動いてくれない、警視庁の俺の立場からでも、強く頼めない、しかし、一般家出人届は出しておけ」 明がスマホをいじりながら、「ヒトシおじさん、智一君はパソコン使ってますよね、今スマホで呼び出しましたが切れています」 なかなか素早い。 そういえば翔太が、明はハッカー位の知識や腕がある、と言ってたな。 「パソコンにパスワードを掛けているなら、僕がそっちに行ってやってみましょうか?」と頼もしい限りである。 ダイが言う、「オレも行く、智一君を良く知っているし、お前と同じくらいに動ける」 遠慮するヒトシにそれぞれが声をかける。 あゆみが、「ヒトシさん、大丈夫です、いざとなれば私の母にも応援を頼みます」 「こっちは任せな」と丹下さんも心強く言う。 「翔子です、翔太と二人でさやかちゃんの面倒を見ます」 「済まん、皆、申し訳ない、有難い、妻の智恵も感謝する」と若干の涙声、きっと目が潤んでるンだろう。 スマホを見ていた翔子ちゃんが「ダイさん、大変! ・・・「タレントの花凛さんが襲われる、ストーカー被害か」というニュースを告げた。 即、電話をすると淳平は、「大したことはないンだ、花凛も別に怪我もないし、マスコミは大げさだ」と、皆を安心させた。 「それよりも智一クンの方が気にかかる、明後日からはオフになるから俺にも手伝わせろ」 ・・・三日分くらいの身支度をして明とミニクーパーに乗った。 水戸に着いてからは車の方が動きやすいから電車を避けた。 二人きりになったのは初めてだからいろいろ父の昔の話を聞かせて下さい、と明が言う。 美園和良は金沢の老舗豆腐店の四代目、大学を卒業したら稼業を継ぐンだと、会った最初から皆に宣言していた。 ダイ、ワリョウと、ヒトシは上木晃一、大野淳平、そして8年前に死んでしまった河東慎吾、皆19才だった。 5人は、今は「弓島珈琲」になっている、あの古い洋風館で4年間一緒に住んでいたのだ。 朝・昼・晩、笑い合って、春を喜び、夏を騒ぎ、秋を憂え、冬を凌いだ仲間だった。 明に聞かせてやった。 ワリョウは小さい時から店を手伝っていて家業を継ぐのは当たり前と思っていたから、大学生活が人生最後の自由時間だと考えていた。 だから、東京の大学に行かせてくれと我が儘を通した。 ワリョウの唯一の習い事がお母さんに勧められたピアノだった。 性に合っていたンだろう、大学ではそれにのめり込んで、ピアニストを目指すくらい位の才能があったが、才能のある人ほどプロにはなれないと自分の限界を知っていた。 美園豆腐店の4代目として生きる、そういう覚悟を持って4年間を過ごした。 5人の中でワリョウだけだった、そんな道を決めていたのは。 

 

・・・明がポツリと言う。 ヒトシおじさん熱いから智一クンと何かあったのかな? 智一が、あの勢いについていけない、と零していた事があった。 腰を怪我して野球部を辞めた時、本人はあっさりしていたのに、ヒトシおじさんの落胆が凄過ぎる、と。 そういえば、ダイにも、ヒトシから愚痴があって、折角苦労して野球の名門校に入学させたのに、と泣いていたのだった。 智一クンもお父さんの希望に正式な理由で添えなくなってしまった事に、重圧から解放されてホッとした気持ちになった、らしい。 ダイも同感だったし、お母さんの智恵さんも息子にかける期待が多き過ぎて困っている、と訊かされていた。 ヒトシは智一と一緒に甲子園に行く事が夢だったからな。 ・・・元は農家だった大きな前庭に車を入れると、智恵さんが迎えてくれた。 「明ちゃん、また大きくなって・・・ ダイさん、来て頂いてナンだけど、大丈夫よ、あの子、馬鹿な真似はしないって思っているから」 母は強し、息子への信頼度200%である。 「その通りだよ、ぼくらもそう思う」 ・・・明がさっそくパソコンのパスワードを解き明かした。 そしてある画像を見た時に、これは新宿歌舞伎町だ、夜のネオン街で3人の若者が映っていた。 高校生には見えない。 智一君はいない。 東京の友人と見て間違いないだろう。 智恵さんは、見た事の無い人ばっかり、と言う。 親の知らない友人である。 その他にパソコンに入っていた写真はなかなかセンスのあるものだった。 ダイの元広告会社に勤めていたセミプロの眼からもそれは感じた。 写真の腕がイイ。 ただ、この写真は智一が撮った写真ではない、他の誰かがメールに添付してきたのだ。 パソコンには野球部の仲間とか、猫とか相当数の写真があったが、見られてまずいエロ写真等を削除した形跡もなかった。 ・・・高校に行ってみた。 コンビニに屯している悪がかった4人の高校生がいた。 私立探偵だと名乗って、ダイがタブレットを出して三人の写真を見せた。 当たりがあった。 元・野球部で智一の三年先輩らしい。 だから、智一は高校では一緒になっていない。 しかし、名前は知らない、が付き合っていた同級生の子がその人が好きだと言って俺はフラれた。 彼女の名前は村瀬瑠璃、今、高三。 ・・・帰宅してきたヒトシにここまでの経緯を説明するが、教頭の息子が家出という事では大袈裟に騒ぎたくない。 立場がある。 自分の校長には他言無用で打ち明けてはいるが、智一の担任にも伏せておきたい。 情けない男だと嗤ってくれてもイイ、と自嘲気味に言うヒトシであるが、ダイは、「そんな事でお前を蔑んだりしないから安心しろ、誰でも当たり前の事だ」 体裁、世間体、社会的地位、親である前に社会人なのだ。 ・・・ダイを東京の遠戚として同行し、担任の女性の20代後半の賀川先生と、マンション近くのファミレスで会った。 新宿の写真は見せるな、とヒトシに念を押されていたが、付き合っている子はいないか? 村瀬瑠璃を御存じか?とダイが質問すると、「彼女は学年が違います、それに春休み開けから不登校になっています」 ・・・翌朝、まんじりともしない顔でヒトシは出勤した。 智一からの連絡は一切なかった。 今は水戸市内で一人暮らしの智一の8才年上のいちこちゃんも昨晩、顔を見せたが、「悩みがあるなら絶対に私に話してくれた筈だ」と、仲の良い姉弟で、智一を本当に可愛がっていた姉が断言した。 新宿の写真の男にも見た事が無い人達だ、と言った。 ダイは思い付いて新宿の写真を三栖さんにメール添付で送った。 知っている刑事がいないか、訊いてくれると言う。 そういえば、ストーカー騒ぎの花凛さんだが、相手は歌舞伎町で働いている奴らしい、偶然だな、誰か判ったら知らせる、と、やり取りしているうちに、明が、「見つけた!」 三年前の野球部の試合の動画、ピッチャー、ニシナくんとアナウンスされていた。 長谷川監督と仁科恭生くんだと確定出来た。 仁科君2年生であるが、翌年の三年生のレギュラーメンバーには名前が無かった。 直ぐ、三栖さんにメールを送ると、「退官したらお前と探偵事務所を開く」と返して来てダイは苦笑いをした。 ・・・夕刻まで何もする事が無いので村瀬宅を覗きに行った。 しかし、刑事が二人出て来た、「この家をご訪問ですか?」と疑惑を持たれたが、必死に頭を働かせて三栖さんに助けて貰った。 何と! 昨夜、若い女の声で119番通報があったらしい。 怪我人がいるから救急車をお願いすると。 駆け付けると中年の婦人と老女と、二人が血を流して倒れていた、重傷でまだ喋れないが命に別状はないらしい。 この家の娘で不登校だった行方不明の女子高生、同じ高校の家出少年、これを高校が警察に知らせると二つを結び付けて直ちに捜査に入るので、教頭・ヒトシの立場が微妙になるだろう。 智一の担任に口止めを頼め!と三栖さんから指示があった。

(ここまで、全413ページの内、132ページまで、一体、智一に何が起こっているのか、村瀬家の事件と関連しているのか、そして驚くべき事に、30年も前に実行した5人の過去の封印した正義が関わってくる。 5人の仲間との物語をず~ッと第4巻まで展開する、相変わらずの小路幸也の世界である。 ・・・そうか、東京バンドワゴンシリーズは既に15巻、花咲小路シリーズは既に6巻か、他にもシリーズモノがある。 溢れ出る才能は留まる事を知らぬ、恐ろしい作家なのである)

 

 

 

元会社のO・B会ゴルフのメンバー・83才のNさんからゴルフの誘いがあった。 練習も何もしていないがお受けした。 元会社の75才・Nさん(二期先輩)と、二人のNさん両方を知っている友人Oさん・75才(一期先輩)も誘った。 最長老のNさんが最高スコア、Nさん→Oさんの順位で、一番若い我がスコアはドンべの58-51、練習も一切無しで臨んだ今年の初プレー、ゴルフの神様の逆鱗に触れた筈なのに、良くぞ、これで済んだモノだ。 カートだったが明日は恐らく筋肉痛だろう。

(ここまで5,500字超え) 

 

                  令和2年7月15日