単行本3冊、遠田潤子「廃墟の白墨」、米澤穂信「Ⅰの悲劇」、今野敏「任侠浴場」、及び文庫本5冊、山本甲士「俺は駄目じゃない」 「そのウソ、お見通しだ」 「はじめまして、お父さん」、樋口有介「海泡」、5人女流作家の短編集「あなたに謎と幸福と」を購入した。 〆て9,000円弱。 家内がたまに負担してくれないかなァ。 オレが買ってきたモノを楽しく読むだけ、だもンなァ。 イイよなァ。  ・・・Oさんから文庫本3冊借用。 大沢在昌「魔女の封印」(上・下巻 文庫書き下ろし?)、山本一力「いかずち切り」(単行本は2009年)、貯まってきた。 さァ、読み込むぞ!

 

 

 

薬丸岳「ラストナイト」(文庫本、単行本は2016年)

中華食堂「菊屋」の菊池正弘・60才は、常連客の荒木さん・55才から追加された生ビールをジョッキに注いだ。 厨房では、弟子の茂がフライパンを振ってニラ玉が出来上がった。 両方を持って、「お待たせ致しました、荒木さん」と、差し出した時、顔の全面が豹柄模様の入れ墨で覆われていた男が入ってきた。 片桐達夫・・・、菊池は呆然としたが、荒木さんも茂も固まってしまった。 片桐は、「これ、土産、・・・取り敢えずビール」と言いながら椅子に腰かけた。 仙台の菓子だった。 今回は宮城でオツトメだったのか・・・ 「久し振りだな」と、ジョッキを置きながら菊池が声を掛けた。 こうしていると、動物園の檻の中で、獣に睨まれているような気分である。 「タバコが欲しいな」 「ウチには置いてない、店を出たところにタスポがある、このカードを使え」 「何だ、それ、塀の中にいると、シャバの事は分からねェ」と、大声で言いながら買いに行った。 全ての客が菊池を見ながら、ヒソヒソ顔だった。 煙草を手にした片桐は、「美津代さんは?」と聞いてきたので、「四年前に乳癌で亡くなった」旨を伝えると、「そうか、それで新しい従業員か」と、茂を見ながら呟いた。 「義理の息子よ、三年前に奈津子が結婚した」 そうこうしているうちに、客が全員帰ってしまった。 片桐に関わらないようにしていることは明白だった。 「お、お待たせしました」と、茂が焼きそばを置くと、「お前が奈津子ちゃんの旦那か」 片桐に見据えられ、手が小刻みに震えていた。 「茂です、よ、よろしくお願い致します」 「奈津子ちゃんが生まれたアト、ウチの陽子も妊娠したので、美津代さんに奈津子ちゃんのおむつの取り換えを教わった、だから、奈津子ちゃんは俺の娘も同然だ、大事にしねェとぶっ殺すからな」 焼きそばを平らげると、「味はまだまだだな、ちょくちょく寄らせてもらうから勉強せいよ」 直立不動だった茂はビクッと体を震わせた。

 

翌朝、孫の春花を保育園に預けた奈津子がやってきて、「茂さんが昨晩、変な客が来たって」 「他のお客さんが皆、帰ったって」 「顔の入れ墨の人、片桐さんでしょ、良いの? 店に来させて?」  「お父さんの代で来店拒否して! 私達の代になって断ったら暴れだすンじゃないの?」と辛辣であった。 「あの人とキチンと決別してくれなきゃ、私たち、、店を継げない」と、言い残して帰っていった。 ・・・35年前、美津代と結婚してこの店を開いた時からの、片桐は一つ下の常連客だった。 近くのラーメン店でアルバイトをしていると言っていた。 同じ常連客だったクラブ勤めの陽子と、いつの間にかイイ仲になっていた。 お互い、浜松出身が判って、話に花が咲いていたらしい。 陽子はホステスを辞めて、違うラーメン店に勤め出した。 いつか、片桐とラーメン店を出す、と嬉しそうにその理由を語っていた。 この店で片桐がプロポーズした時は、客の全員から熱い祝福があった。 奈津子の生まれた少しアト、片桐達にも、ひかりという娘が出来た。 良く親子三人でここに顔を見せていて、幸せ絶頂な時代だった。 ある日、菊池が外出から帰ると、店に人だかりがあって、中から、片桐が手錠をされて引き出されてきた。 地元の暴力団が美津代に言いがかりをつけて凄んでいた時に、客として居た片桐が仲裁に入ったら、男が逆上してカウンターにあった包丁で切りかかってきた。 片桐は、逆に奪い返して相手を刺してしまった、との事だった。 この事件のせいでラーメン店をクビになり、離婚した陽子は、ひかりを連れて実家の浜松に帰った。 それから、片桐の転落が始まった。 菊池は自分達が原因でこうなった、という罪悪感に苛まれていた。 (美津代も死ぬ間際まで、片桐の事を心配したままだった) 事件後、一か月ほど顔をみせなかった片桐が、禍々しい入れ墨の顔で店に来た時は、菊池夫婦は仰天して息を呑んだ。 その直後に理由が判らない誘拐劇をやらかし、あの顔から直ぐ逮捕された。 恐らく、自分から去った陽子に対する当てつけではなかろうか、と菊池は思った。 最初の刺傷事件では警察署に拘留されただけで刑務所には入らず済んだが、今回の誘拐劇は懲役8年、そして出所してからも罪を犯し続け、刑務所を出たり入ったりしていた。 仏壇の引き出しに、片桐親子が写った満面の笑顔の、片桐の綺麗な顔があった。 菊池はどうにもならない悔しさに唇を噛み締めた。

 

菊屋に中村と名乗る弁護士がやってきた。 最初の事件がここだと知って吃驚していた。 片桐の行方を知りたい、という。 「昨日、手土産を持って突然訪ねて来て、良い先生だ、と感謝されましたが、また何かあったらお願いしたいと帰っていきました。 しかし、あの言い方は、また、罪を犯すような気がしてなりません、居所が判ったらお知らせ下さい、中村がどうしても会いたい」と、電話番号のメモを寄こした。 ・・・常連客の徳山から、大声で、「片桐が来たんだって?」と問われた途端に、店中の客が騒ぎ出した。 前回、出所した5年前に、徳山さんの口利きでステンレス加工工場に就職した事があったが、一週間後に左手首を切断する、という大事故を起こして辞めてしまった、が、アトからの噂では、片桐は工場の経営者から多額の賠償金をせしめたと言う。 利き手の右手ではなく、何故、左手なのか、という不自然さの疑問だった。 紹介した徳山さんは、随分、肩身の狭い思いをしたンだろう。 「アンタが出入禁止にしなければ、奈津子ちゃんも、この茂も店は継げないだろう」と、店の客の誰もが言い出した時、その片桐が30代の女を連れて入ってきた。 「どこの女だ、そこらへんの立ちんぼうか」と、徳山が呟いた時、片桐が物凄い形相で、「今、何て言った! ぶっ殺してやる!」と、ビール瓶をカウンターに叩き付けた。 カウンターから飛び出した菊池は、片桐の右手を押さえ、「止めろ!、もう、ここには来ないでくれ、俺達、家族の為に・・・」と、睨みつけた。 「弁護士の中村さんが連絡を欲しがっている」と、メモを渡した。 片桐は、「解った、もう来ない」と言いながらポケットにメモを入れた。 片桐との35年間がここで終わろうとしていた。 子供ほどの若い弁護士に、投げ出してしまうしかない自分が情けなかった。 茂に、「今日はもういいだろう、掃除も俺がやっておく」と帰したアト、暖簾を仕舞おうとしたら、暗がりからぬッと片桐が現れた。 「最後に、菊ちゃんの焼きそばをご馳走してくれ」 「美津代さんはやすらかに逝ったのか」 「奈津子ちゃんの結婚式の写真をみせてくれ」 それを見ながら、片桐の顔に刻まれた入れ墨に涙が伝っていた、 この店で陽子にプロポーズした時以来の片桐の涙だった。 「美津代さんに見せてやりたかったな・・・」と呟いて、片桐は帰っていった。

 

中村弁護士は、亡くなった母に迷惑を掛けっぱなしだった離婚した父を憎悪していた。 ギャンブルと酒と女に溺れて、離婚したアトも、母に無心に来ていた、だらしない父だった。 母が亡くなったアト、一回顔を出したが、亡くなった事を告げると、何も言わないで帰ったが、ある日、弁護士事務所に訪ねて来て、「10万円を貸して欲しい、俺がどうにもならなくて何かをしでかしたら、お前も困るだろう」と、土下座しながらの、泣き落としと脅迫だった。 「何もしない、二度と顔を見せないでくれ」と、追い返した一週間後、父は、電車に飛び込んで自殺した。 中村は、「恨みを含めて言いたい事が沢山あったのに、それも言えないまま、死なれてしまった、もし言えてていたら状況が変わったのかも知れない」との後悔が強かった。 その一か月後に、片桐の弁護が始まったのであった。 ・・・中村は、菊池から訊き出した、浜松の松田陽子とひかり母子を探しに出かけた。 片桐とのこれまでの話の中で、二人を案じていることが伺い知れたからであり、これ以上の再犯を重ねないように、母子に声掛けをお願いしようと思ったのであった。 しかし、探し当てたひかりは辛辣だった。 あんな人には会いたいとは思いません、母はもう亡くなっていますが、同じだと思います。 中村は自分の後悔の事を打ち明けた。 実のお父さんに会っておくべきです。 アトから後悔しない為にも、と熱弁を振るったが、ひかりは頑として拒絶するばかりであった。 (ここまで全245ページの内、98ページまで。 ・・・片桐は何故、犯罪を重ねたのか? それは、刑務所で、ある男を探すためだった。 やっと探し当てたその男に、片桐は射殺された。 しかし、殺される事によって、その男を、生涯、刑務所につなげる為の巧妙な策略であった。 それは、心から愛していた妻・陽子の復讐劇であり、菊屋の常連客・荒木も、昔、片桐に救われた事実があった。 驚愕の最終章であった。 荒木はひかりに言う。 いつか、この菊屋で真相をお話しします、と菊屋のマッチ箱を手渡したのであった。 流石、薬丸のミステリーが凄い!)  

 

 

19回目のマアジャン、やられた。 -19もである。 累計-87。 割れ目で随分自摸られた。 ツイていない時の典型である。 今月はいろいろ行事が重なっていて、費用が嵩むのに、ガックリである。 続く20回目、-2、累計-89。 前途多難、勝つのは難しい。 

 

・・・女子プロゴルフ第31戦、国内メジャー戦に外国選手も多数参加、その中で、アメリカ帰りの畑岡奈佐が4打差を付けて圧勝! 凄い、これで国内メジャー4勝目である。 累計23勝8敗、ご満悦である。 それに引き換え、男子プロ第14戦、豪州人が優勝。 これで11勝3敗。 どちらも4日間競技だったが、女子は優勝3,000万円、男子は2,200万円て、如何にも人気の無さが明白である。 女子は今回も黄金世代が輝いていた。 人気沸騰なのも当然である。 続いて女子プロ、第32戦、韓国選手の優勝、これで23勝9敗。 更に、第33戦、アマチュア19才の古江彩佳が優勝、何と、黄金世代の活躍に続く快挙である。 アマチュア優勝は史上7人目との事。 益々、女子プロの人気が高まる。 これで、24勝9敗。 男子プロ第15戦、今平が優勝、これで12勝3敗、女子も男子も台風の影響で消化ホールが半減、賞金王への加算は半額となった。 男子プロ第16戦、メジャーの日本オープン、難コースを攻略したアメリカ人がtoday-4を出し、1オーバーで優勝。 4,200万円をゲットした。 ツアー未勝利の塩見が、途中まで2位に7打差を付けて首位を走っていたが、14番ダボ、15番トリ、17番トリ、18番ボギーと、まさかの9打もオーバーして夢は露と消えた。 ゴルフの恐ろしさが身に染みた、そんな思いが画面から伝わってきた。

 

・・・Oさんから文庫本3冊を借用した。 清水一行「動脈列島」(単行本は1974年、古い)、逢坂剛「鵟(ノスリ)の巣」(単行本は2002年)、笹本稜平「不正侵入」(単行本は2006年)である。 更に文庫本4冊を購入した。 原宏一「やっさんⅣ」、香納諒一「降らなきゃ晴れ」「水平線がきらっきらっ」「見知らぬ町で」、(何れも小説推理で、2017~2018初出されたモノ)

 

今回は、三週間振りの書き込みである。 訪問者がゼロなので、責任感的なものが無いからかも知れない。 どうやって、今までの訪問者にお知らせできるのだろうか? 

(ここまで、5,000字超え)

 

                                               令和元年10月21日