モチ | Happy collector

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青い鳥はお家にいたそうですが、私の青い鳥さがしの日常を綴っていきます。


 私は餅が好きだ。
どのくらい好きか、幼少の頃は餅屋へ嫁にいくことを密かに考えていた程である。餅屋の人になれば毎日つきたての餅がたべれるだろうと。
同じ論理で本屋に嫁に行きたいとも考えていた。本屋の人間ならば毎日本が読みたい放題だろうと。
 昭和中期、田舎産まれの女子である。自分の将来はどこかへ嫁に行く事と刷り込まれていた。ならば好きな所へ嫁に行きたいと考えていた様である。

 餅好き伝説はこれだけではない。
ある時、不幸があった年は餅をつかないものだと知り、わたしは祖母に訴えた。頼むから死ぬ時は餅つきが終わった後にしてくれと。
当時まだピンピンしていた祖母は大笑いしていたが、私は大真面目だった。餅のない正月なんてありえない。

 お雑煮の餅は3個、2個では物足りない。
あんこもきなこも醤油もチーズも、煮ても焼いても揚げても幸せ、おでんの巾着餅なんて他の具はいらぬ。長いことそんな餅ライフを楽しんできたのだが、50歳過ぎたあたりで変化が訪れた。
 今年の正月は体重にささやかな配慮をし、お雑煮の餅は2個にしたが、昼になっても空腹にならないのだ。胃がもたれているのだ。ああ、これが『食べられなくなる』と言うことか、とわかった。『食べる』ということを見直す時がきたのだ。

 好きな物は山ほど食べたい。食べても食べても太らない身体が欲しいなあと思ったものだが、果たして私は自分の『好きな物』を大切に味わっていただろうか?
味わうほかに、喉ごしとか満腹感で欲を満たすように食べていたのではないか?
時には無理をして。
でも、これから少しずつ無理ができなくなっていく。
 大切に味わって食事をする、好きなものを出来るだけ長い間。人生後半戦に突入しているので、食事だけでなく日々を丁寧に愛しんで過ごしたい。たかが餅の話だが私の中ではここまで広がったのであった。