歯が痛いという知らせ
彼はメ ールをするんだ。
携帯電話を持っていること自体、不思議な感覚である。似合わない。彼ならばもっと、(自然だの、そのあたりの見えない境界線が合っているとか、そんなニュアンスでなくて)、例えば腕の肉の中に機械を埋め込んで、自慢して喜び、気持ち悪がられて笑い、そしてみんなが飽きる前にひとりだけ遠くで、嘆いている、後悔している。そういえばピアスをこんなにも開けたとき、そうだ、そうだったね、こんな気持ちだったね、と。
歯が痛いと言われても、そのままの意味でないことだけはわかっているけれど、どうしようもない。
僕には僕の生活がもうある。彼は色んなものを捨てていって、どうするのか、気になっているけれど、僕は、彼の、その一部にはもう、なれそうにない。
安心をした理由
彼が仕事を辞めたと聞いて、正直安心している。もちろん彼には、自分が歯車であると自称して、それを気持ちよく思うほどの馬鹿さがあった。それほどに心配はしていなかったが、やはり彼は、働いていると公言するべきではないし、働かず、借金だけを増やし、その言い訳を飲みながら(シラフのときにでも)吐き出して欲しい。それを聞きたいの だ。
何かを報告するときの表情
「仕事をはじめた」と彼から聞いた。サラリーマンだという。恋人ができた、結婚しようかと思っている、と昔、そう聞いたときと同じような嬉しそうな顔だった。わたしはそのときと同じように、ビールを頭からかぶせた。彼はあいかわらず嬉しそうだった。
基地の町
「基地の町」
、基地の町ではあった。
私たちはずっと怯えていた。飛行機の音がいつも聞こえることは心地よかったが、常に怯えていた。これからどこへ行っても何をしても、「俺は基地の町の出身だから」と言った瞬間に、自分の存在は消える。生い立ちが自分の全てを掻き消して、つくられたエピソードが支配する。
、基地の町ではあった。
私たちはずっと怯えていた。飛行機の音がいつも聞こえることは心地よかったが、常に怯えていた。これからどこへ行っても何をしても、「俺は基地の町の出身だから」と言った瞬間に、自分の存在は消える。生い立ちが自分の全てを掻き消して、つくられたエピソードが支配する。
煙草忘れという短編から
なんということだろうか。
私は否応無く、またも「責任」について考えさせられる結果になっている。我々の世代にはそんなものはありはしない。同じ世代である彼も、それをわかっていながら、わざわざ、そんな問題を私の生活に放り込み、楽しんでいるかのようでもある。
「彼の作品で死んだ人間がいる」と書いたのは昨日だが、すぐに、削除せよ、との連絡が入った。勿論彼からだ。彼が本当に、その事実の表示を無くしてもらいたいのかどうか、それは定かではないし、この際には意味の無いことだ。
問題は何故彼がそんなことを言い出したか、ということだが、それは日が進むにつれて明らかになってくるかもしれないし、ならない可能性もある。
私は削除しなかった。
彼の三冊目の著作(短編集だった)の「煙草忘れの体から立ちのぼる」という作品に、「もう無いのですが。何がって? あんたたちみんなの汚い部分で渦を巻いてるその醜い毛だよ!」という台詞がある。私はその通りにしたのだ。
私は否応無く、またも「責任」について考えさせられる結果になっている。我々の世代にはそんなものはありはしない。同じ世代である彼も、それをわかっていながら、わざわざ、そんな問題を私の生活に放り込み、楽しんでいるかのようでもある。
「彼の作品で死んだ人間がいる」と書いたのは昨日だが、すぐに、削除せよ、との連絡が入った。勿論彼からだ。彼が本当に、その事実の表示を無くしてもらいたいのかどうか、それは定かではないし、この際には意味の無いことだ。
問題は何故彼がそんなことを言い出したか、ということだが、それは日が進むにつれて明らかになってくるかもしれないし、ならない可能性もある。
私は削除しなかった。
彼の三冊目の著作(短編集だった)の「煙草忘れの体から立ちのぼる」という作品に、「もう無いのですが。何がって? あんたたちみんなの汚い部分で渦を巻いてるその醜い毛だよ!」という台詞がある。私はその通りにしたのだ。
理由に
くだらない。意味があることが素晴らしく意味の無いことはくだらないことだ、そこまで短絡的に決め付けることはしていないつもりだが、(そもそも実存としての意味を私は知らされていないし……)そうだ、ここで彼についての女の話とか、地下鉄だとか、そんなことを記すことにどんな意味があるというのか。
私は、このblogの更新の、更新回数のためだけに、彼の中のくだらない部分を削り取っていくつもりだった。それをやめようと思ったのは真夜中だからでも、他にすることが無いからでもない。ただの気まぐれだ。そしていつものように私の行動には責任は伴っていない。
彼が、紙媒体での作品発表を辞めた理由は私にはわからない。ただ、彼が本名を使ったまま行っていた創作活動、そしてそれに付随してくる様々な利権、それを一度に手放してしまったきっかけのようなものは、わかる。責任の無い想像だ。
彼の作品が原因で間違いなくひとり、人間が死んでいる。
私は、このblogの更新の、更新回数のためだけに、彼の中のくだらない部分を削り取っていくつもりだった。それをやめようと思ったのは真夜中だからでも、他にすることが無いからでもない。ただの気まぐれだ。そしていつものように私の行動には責任は伴っていない。
彼が、紙媒体での作品発表を辞めた理由は私にはわからない。ただ、彼が本名を使ったまま行っていた創作活動、そしてそれに付随してくる様々な利権、それを一度に手放してしまったきっかけのようなものは、わかる。責任の無い想像だ。
彼の作品が原因で間違いなくひとり、人間が死んでいる。
関係、私と彼の関係
彼と私の、最も現在に近い関係(彼が作品を渡して私から去ったついこの間まで)を正確に記しておかなければならないだろう。そう思った理由は、彼の未発表の作品を電子化して公開した後に、起こってしまう諸所のトラブルに関して、作品を世に晒した張本人としての私の責任を少しでも軽くする、ということにある。
関係、というのは、もちろん私と彼が同級生だったところから始まっている。
そして、最も現在に近い時まで、私は、彼が代表を務める小さな会社を手伝っていた。部下だった。
今現在は、難題を押し付けられた者と、そして押し付けた者、ということだ。
関係、というのは、もちろん私と彼が同級生だったところから始まっている。
そして、最も現在に近い時まで、私は、彼が代表を務める小さな会社を手伝っていた。部下だった。
今現在は、難題を押し付けられた者と、そして押し付けた者、ということだ。
今朝はわたしを、彼は見つけて
今朝早く、私は地下鉄の中で彼に小突かれた。見ているし、見ているし、君は、ね、キミは何でそう、ね、備考とかびび、備考、とか。腐れちんたらやってんの。そういわれて彼は、人並みの逆流に酔いしれるように、その地下鉄の線の中では、わりかし大きな駅で降りた。私は朝から行かなければならないところがある。彼は幸せで、私も幸せだ。電車の中で小突き合うのは子供と子供だ。
そして彼にこれだけは伝えろと言われた。
彼、そして私は、昭和五十五年生まれだ。
そして彼にこれだけは伝えろと言われた。
彼、そして私は、昭和五十五年生まれだ。
何年か前の十月形になっていた何年か前の十月
「電車ン中 殴り合ってンのは こどもとこども」
彼が最初に、私に見せてくれた作品は、これ、だった。「何、これは」と当然そう言い、彼は「川柳かもしらん」と言う。何年か前の今頃だ。今年と違って、あの時分の十月には、雨は全く降らなかった。ただ今と同じ、小さな地震が何回も続いた。私たちの住んでいた地方の町は、普段はほとんど地震が来ない。世界はそろそろ終わるかもしれないねえ。終わればいいんだよ。そうだねえ。終わってもいいもんね え。でも俺、終わる前にしたいことある、ひとつ。何、それは。それはねえ。
そんな会話をしていた。十月は、衣替えの季節としか記憶がない。
彼が都会に始めて、自分の小説を持って出かけたいたときに感じたことが、「川柳かもしらん」ものになって、初めて形になっていた。
