Translator’s soliloquy -5ページ目

Translator’s soliloquy

翻訳家の独り言

テニスの試合をしていて、サーブで何度もトスをやり直すプレーヤーに出くわすことがある。フェデラーばりの(ウソ)チップ&チャージでネットを取りたい私としては、その度にステップインを繰り返さなければならないのでたいへん迷惑なのだが、それはこの際言うまい。

参考までに、トスのやり直しを制限するルールはなく、厳密に言えば何回やっても構わない。リズムを崩す度合いはサーバーもリターナーも似たようなもので、単にサーブが下手ということだから、レシーブする側は概ね受け入れている。

だが、トスのやり直しが2度3度と続くと、さすがにリターナーも集中力が続かない。これをリセットする必要があり、その時間を稼ぐために手を挙げるなどして「ノットレディ」の合図を送るわけだが、それでもやみくもに打ってくる人がたまにいるので驚く。

自分のサーブに熱中するあまり、レシーバーを確認することさえ忘れているのだ。中には、返球しない相手に対して、サービスエースだと主張する猛者もいたりしてさ。「今のはノットレディです」というと渋々受け入れるが、それがセカンドサーブのときは、改めて一度ファーストサーブからやり直すことができると勘違いしている人も意外と多い。

それだと、ファーストサーブをフォルトしたときは相手の準備が整わないうちにセカンドを放ち、「ノット・レディ」で好きなだけファーストを繰り返せることになってしまう。私は、面倒臭いので「いいですよ」とやらせてあげるが、そんなときに限って素晴らしいサーブが来たりして、後悔することもしばしばだ。

たぶん相撲が参考になるのではないか。

蹲踞の姿勢でアイ・コンタクトを行い、双方の気合が最高潮に達したところで無言のうちに合意が成立、そこでおもむろにぶつかり合うのが相撲の立会い。相手と呼吸を合わせるというのが肝心で、西部劇に出てくる決闘と同じ要領だ。相手の都合を無視して、先に抜いて撃ってしまったら、卑怯者の謗りを免れない。

素早くサーブを打って相手の不意を突こうと考えたのであれば、それはそれで立派な作戦だ。もしそうでないなら、トスを上げる前にチラとレシーバーを見てやってください。お願いします。