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Translator’s soliloquy

翻訳家の独り言

サンタナの《哀愁のヨーロッパ》という曲があって、なんでも日本の居酒屋で演歌を聞きながら着想を得たのだそうだ。アタリメを齧っていたという話もあるくらいだから、たぶんウソだろう。

でも私は、ガトー・バルビエリの演奏の方を推す。「咽び泣く」というのいうのは、演歌と並んでテナーサックスにもよく使われる言い回しで、表現としてはかなり陳腐なのだが、この曲ばかりはそう言う以外にない、という気がしている。




アメリカの大学で寮生活を送っていた頃、同じ日本人の先輩から教わった曲。トシさん、今頃どうしているかなァ。

ドアをタオルで目貼りした狭い部屋に集まって、大麻の煙を受動喫煙しながら(ということにしておく)この曲を聴いていると、今いる世界からもう永久に「チェックアウト」できないという思いが湧き起こって、陶然としたものだ。当時、イーグルスの《ホテル・カリフォルニア》が大ヒットしていたのですね。

誰かが、「こんなセックスをしてみたいもんだなァ」とぽつり呟いて、まだ経験の浅かった僕たちは一様に黙り込み、いつ果てるともしれないロングトーンにどっぷり浸っていたっけか。

ややあって、別の誰かが、
「でも、この曲、どこでイクのよ...?」

そのときは腹を抱えて大笑いしたものだが、この齢になってようやく理解できるようになることもある。
てっぺんめがけて一気に駆け上がるだけが能じゃなし。
ゆらゆらと漂う快感もいいものだ。

Gato Barbieriの”Europe”、一度聴いてみてください。