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Translator’s soliloquy

翻訳家の独り言

潘基文国連事務総長が中国の《抗日戦争勝利70年記念行事》に出席。中立性を欠くと不快感を表明した日本政府に対して、「国連が中立(neutral)というのは誤った考えで、むしろ公平(impartial)な組織」とこれを一蹴した。

ニュートラルというのは、ラテン語のneuterからきていて、「どちらでもない」という意味。AとBに分かれているときに、どちらにも与しないから「中立」である、という考え方が成り立つ。

一方、潘氏が「公平」の意味で用いたimpartialという言葉は、AとBに分かれている状態そのものを否定もしくは阻止したいという、より積極的なニュアンスを感じさせる言い回しだ。

その《抗日戦争勝利70年記念行事》だが、首脳級の出席はわずか30カ国、政府代表という立場を含めてもこれに同調したのは50カ国にも満たなかった。世界には200近い国が存在するというのに。韓国を除いて西側先進国の出席が皆無という状況は、この行事に対する無言のNGと受け取ることもできよう。

有体に言って軍事パレード以外の何物でもなく、中国の国力(というか軍事力)を内外に誇示するプロパガンダという性格を帯びていたから、反論が起こるのは当然で、つまり、この行事自体が著しく偏向(partial)していた、ということになる。

そういうイベントに反対しないまでも、せめて招待は謝絶する、というのが「中立」の立場であり、より積極的に「公平」であろうとするならば、この開催を中国に思い止まらせるのが潘氏に求められる態度ではなかっただろうか。

「中立ではなく公平」というソフィズムを用いて世界を煙に巻いた潘氏は、あくまでも言語学的にという意味だが、発言と行動が矛盾していると言うしかない。政治的な是非論はひとまず置いて、国連事務総長に詭弁は似つかわしくないと思うがどうか。