今の朝ドラを観ていて思いだす出来事がふたつある。
ひとつは、友人の奥さんが子供ふたりを置いて家をでたきり長期にわたって帰って来なくなり、知人の弁護士を紹介したのだが、友人の話を聞き終わったその弁護士が言った言葉に驚いた。
「奥さんを、たたきましたね」
「たたきましたか」ではなく、「たたきましたね」と断定したのだ。
彼は、そんな人間ではない、この弁護士は何を言ってるのだと思っていたら、友人は「はい」と応えた。衝撃が走った。いままでなんというひどい奥さんだと思っていたのだが逆転した。同時に、おとなしい兄弟の従順な顔がうかび、彼らも父親からの体罰でおさえこまれていたのではないかと疑った。なぜきづかなかったのだろう。今思えば、あの従順なおとなしさは、父の体罰でおさえこまれて育った子供の頃の僕に似ていたではないか。僕は僕なりのやり方で父の体罰を拒否し、新たな父子の関係をつくりあげた。あの兄弟にもいつかその時がくるかもしれない。

それにしても、たくさんの人間を観てきた弁護士だ、事実をみぬいていた。さすがだ。
もう一つの出来事は、僕が高校を卒業して間もない頃のこと。
あるグループに入っていた僕がそこで、同じグループのある女子校生としりあったのだが、ある日、突然、その女子校生のおかあさんが僕に会いたいと我が家にやってこられたのだ。
娘が僕の話ばかりする、どんな人かと逢いに来たという。ついでに父の職業まで聞いてきた。僕も母もびっくりして顔をみあわせた。
僕を見て、「安心しました、娘をよろしくお願いします」といって帰っていかれたのだが、なにが起こったのだと訳がわからなかった。
「お嬢さんにへんなことしたらあかんよ」と母。
変なコトするわけないし、彼女とは2度逢ったきり。マンガの話なんかをしただけやと僕。魅力的な女子校生なので、僕に好意をもってくれたのはうれしかったが、それからというもの、なぜか彼女と逢う時はどこかに妙な距離を置くようになってしまった。どこかに彼女のおかあさんの目をかんじてしまい、僕の中に保護者のような感覚がついて離れなくなったのだ。妙な男女交際となってしまった。ああ、あかんかったあの恋(涙)
箱入り娘として彼女は大事に育てられているのだ、マンガ家志望の何の身分もない僕が距離をおくのはしかたのないことだった。
でも、やはり異常な育て方ではないかと今は思う。箱入り娘という言葉は、強引に押さえ込んで育てることではないか。
今回の朝ドラは、いままでの朝ドラを根本からひっくり返す位のテーマを含んでいる。

男社会をぶっつぶせ!親の暴力と押しつけを跳ね返せ!

とことんやってほしいと思う。