現在取り組んでいる伝記マンガは2色原稿を先に仕上げていっている。

しばらく歴史マンガを描いていなかったので、なかなか絵の勘が戻らなかったのだが、なんとか絵が動き出した。

マガジンハウスから出ている「ダライ・ラマ14世」の伝記マンガ以外は、発行元はすべてマンガ本を出したことのない団体ばかり。

そういう意味では地味な仕事だ。でも、脚本から絵付けまですべて自分でやっているので、1冊しあげるごとに、表現者としての何かとても大切なものを得ている気がしている。そして、時々思いも掛けない感想を頂き、その想いを強くする。

「まんが大上宇市」への以下のような感想を頂いたときも、そんな想いを噛みしめた。

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本日、「大上宇市(おおうえういち)と粘菌」展の最終日に当たり、姫路市自然観察の森「ネーチャーセンター」展示室へ行って参りました。
大上宇市(1865-1941年)は、もう一人の南方熊楠(1867-1941年)とも呼ばれる同時代を生きた博物学者です。熊楠の英米を股に掛けた世界的な活躍の陰に隠れ(池内紀『二列目の人生-隠れた異才たち』集英社、2008年)、私も今回、初めて知り、宇市が生きた時代を直に感じ取りたいという心持ちで展示会場へ足が向かいました。そこには1冊の漫画で描かれた伝記本が展示されていて、私は手にして最後まで読み入って、宇市が懸命に手探りした博物学の世界に浸ることができたのです。
※大阪へ帰還してから、幻の漫画本が作者、さいわい徹氏ご自身のサイトで41ページまで公開されていました(ページ単位で拡大表示も可)。富国強兵の史観が優勢な時代に博物学という何の役に立つのか知れない学問を志した先駆者の気持ちが痛いほど伝わってきました。

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おそらく、今取り組んでいる伝記マンガが最後の伝記マンガになると思う。

伝記マンガから得たものをだいじにしながらオリジナルな作品つくりへとはいっていきたいと思っている。

「青木文教」の取材で初めて海外取材にいった。チベットだった。最後の写真はそのときのもの。

この時の取材が「ダライ・ラマ14世」にも役立ったのだが、この時は、そんなことになるとはおもってもいなかった。

そして、「ダライ・ラマ14世」のマンガは、複雑な問題をかかえてはいるが、世界中に拡がっていったー。チベット問題をひろげていくこの本の役割は、どうにか果たせたと思っている。

僕にとっての伝記マンガは、いわゆる学習マンガではない。そんなものとしては描いてこなかった。

作家としてのテーマを1冊1冊に込めて描いてきている。

だから、読んでくださった人達からの感想のひとつひとつとの出会いがなによりうれしい!