「涙そうそう」と言う歌は、森山良子さんが歌手になると宣言し、それを支えてくれた若くして亡くなった兄を思う歌だとか。

この歌を歌いながらマンガ家になると言った僕を応援してくれた母をいつもおもいだしてしまいます。

バイトをしながらクロッキー教室に通い、バイトのお金で上京しては出版社に原稿を持ち込んでいたあの日々ー。

描く作品はペシミスチックなものばかりで、才能なんて感じられないー。同年代の女性から観たら、本当にストイックでつまらない男だったでしょう。彼女をドライブにさそう男やスポーツマンで背の高い精かんな男たちに比べたら、何の魅力も身分さえもない男なわけで、そんな僕を母からみたらどうしようもないはずなのに、応援しつづけてくれた母。ただただ頭がさがります。

 

旅立っていく母を、せつなさと感謝の思いで見送ってから1年と数ヶ月が過ぎました。

母を想うとき、どうしても僕のあのせつない青春時代へと戻ってしまいます。子供のころからずっと、体罰で僕を押さえ込もうとしていた父と吹っ飛ばされながら黙り込んでいた僕。お互いに成長しなければならなかった二人の間で、ただただオロオロせざるを得なかった母。

そして、僕が起こしたというか結果的に起こったある事をきっかけに、父と子は変わり、成長しあっていくー。

母を想うとき、なぜかあの頃に戻り、あの頃出会った人達をおもいだしてしまいます。あの時の、あの人の涙の意味が何年もたってやっとわかった時のせつなさ。それは、言葉と気持ちというか思いやりがすれちがってしまった恋。今も、傷だらけになった優しい僕たちはそこにいるのです。ありがとう僕の青春たち。

そして、マンガ家になると決めてからのとんがった孤独な僕を支え、応援してくれた母に感謝。

 

あ、そういえば、村岡栄一さんの「去年の雪」という作品が日本漫画家協会賞を受賞しましたねえ。

COMというマンガ雑誌があって、そこから全国にうまれたマンガ研究会。

「去年の雪」には、あの頃の雪が今も懐かしくふりつづいているんですねえ。

村岡栄一さん、受賞おめでとうございました。