9月19日(日)
夕方から海上自衛隊OBの皆さんと都内で会食。私を含め7名。それぞれに軽く1時間は講演できるくらい「話したいこと」があるため、3時間も会話が一瞬も途絶えず、熱い思いを伺う。
帰宅後、話し足りなかったことなどを、メールで全員がやり取りを開始。すごい!
その傍ら、私は月刊『正論』に掲載される書評を執筆。その本は『凌ぐ波濤 海上自衛隊を作った男たち』(手塚正巳著)。親ほど年上の方の本の書評とは僭越と思いつつ・・。
漁船衝突事案の余波が日増しに拡大。ネット上でも警察庁や防衛省のHPが閲覧し難くなったり、釣りの愛好家団体のHPまで影響があったという。尖閣諸島魚釣島を中国が「釣魚島」と呼んでいることに関連があるとみられている。また、中国が「円買い」をし、円高を誘導することが有効な報復措置だとする意見もあるらしい。
そんな中、あるローカルニュースをふと見ると、少年剣道大会に出席した大阪の橋下知事が「君たちはすごい立派。でも、君が代を歌う声が小さい。日本を背負って立つ男、女はちゃんと国歌を歌わなきゃだめ」と挨拶したということ。これまでも同様の発言をしてきた同知事だが、ぜひ子供たちは言葉を受け止めて育って欲しい。
国歌を堂々と歌えないような国民だから、自国の領土が侵されつつあっても冷めているとは言えないだろうか。今回のような国家の主権に関する問題は、理論で勝利しても情熱で劣っていれば、その時点で実質的には負けなのだ。
9月20日(月)
ロシアのメドベージェフ大統領が、26日から3日間訪中し、第二次世界大戦の対日戦勝65周年に関する共同声明を発表するという。「露中両国はファシズム・ドイツと軍国主義日本と戦った同盟国」なので、一緒に祝うのだそうだ。
私は前回の『撃論』ムックでロシアの脅威を、今回は南西方面の強化について書いたが、この二つは矛盾するものでも何でもない。中露共闘となれば、日本にとって悪夢としか言いようがなく、非常に不気味なニュースだ。
9月21日(火)
中国は東シナ海のガス伝「白樺」を単独開発するつもりのようで、建設中の洋上施設に掘削用ドリルとみられる機材を搬入したことが確認された。
石原都知事も一連の中国の態度を怒っている。「やくざがやっていることと同じ」「向こうから頼まれても行かない」と予定されていた訪中の中止を明らかにした。
以前、日本に帰化した中国人が「中国はやくざと同じ。日本の政治家でそんな中国と対等にやりあえるのは石原(知事)さんくらいでしょう」と言っていたのを思い出す。
都知事の発言は、知性とウイットに富んでいて、都庁の記者さんたちは文学・哲学他様々な幅広い知識を持ち合わせないと、ヘタに質問して、やりこめられてしまうことになるのだが、知事もたまにちょっとした事実誤認などもあるので、国内では突かれることもある。
しかし、中国に対しては、日本でよく言われる「大人の冷静な外交」ではなく、「喧嘩相手」が必要とも思われ、そういう意味で存在は貴重だ。
9月22日(水)
昨日から急にまた暑くなった。今日は講演のため目黒にある陸上自衛隊幹部学校へ(海空なども同じ場所にあるが)。
ここは、正門から校舎までかなりの距離があるが、指定の時間に行くと、正門で待っていて下さった。聞けば、直前まで体力測定があり、この炎天下で走っていたのだとか。汗拭きシートで体を拭いてから来て下さったといい、本当に有難い。
幹部として自衛隊を背負って立つ皆さんは、将来を嘱望される人ほど市ヶ谷での勤務や、留学あるいは入校しての勉強に継ぐ勉強ということが多くなるが、その合間にもしっかりと体を鍛えているのだなと思う。
自衛官が鍛錬するのは「当たり前」と言われるかもしれないが、実際、現状はどうだろう。自衛官が毎日繰り返し繰り返し、訓練することは、そのまま国民の安心・安全に繋がる。しかし、自衛隊が訓練以外の任務をしなければ、その存在を十分に認められず予算も取れないようにしてしまったのは誰なのか。
大切な人材が夜を徹して訓練の予算を捻出するために悩まなければならない、国民はそれで本当にいいと思っているのか。
自衛隊が、誰に遠慮することなく訓練に励める組織であることを望みたい。
9月23日
今日は秋分の日。「先祖を敬い、亡くなった人々を偲ぶ日」なのだ。柳田國男氏の「先祖の話」を思い出す。
私は最近の「家族愛」という言葉が空虚に思えてならない。過去から連綿と続く縦軸としての家族観が失われ、「自分の家族さえ幸せならいい」という利己主義的な理解をしている人が多いような気がするからだ。
家族は民族の中の一つの集合体であり、そういう意味で大事ではあるが、先の大戦では新たな家族を持たずに散華した場合も多く、もはや個々の集合体だけでは全ての英霊に思いを致すことはできない。
私たちはむしろ「名も顔も知らない先人たち」を先祖と敬い、家族と慕い、対話しなければならないだろう。それが「家族愛」という呼び方をされるならば、私は納得できる。
それこれ考え合わせれば、日本の領土を熱心に固守できなかったり、「経済が心配だ」と圧力に屈することは、横軸の家族の生活は守れるかもしれないが、縦軸としての家族の歴史は傷付けられるのだ。
9月24日(金)
昼から開かれた自民党の外交部会では、興味深い論戦があった。
まず、中国で邦人4名が取調べを受けていることに関し、中国に身柄を拘束されたのが20日であることが、外務省の答弁で分かった。拘留から4日以内に領事館に通報する約束が日中間では取り交わされているというから、ギリギリの通報だったのだ。領事面会を求めているが、まだ回答はない。
因みに、「逆に、中国船長を拘留した時は中国の領事との面会はすぐに認めたのか」という質問の答えから、こちらは、かなり早い時点で面会させたことも分かった。
そして、自民党議員が強く求めたのが「ビデオの公開」である。海保の刑事課長は、見れば「相手がぶつかって来たことは一見して分かる」と述べた。ならば、どうしてこんなにも長い間公開しないのだ?会議室内に怒号が飛び交う。
その理由としては、刑事訴訟法47条の「訴訟資料の公開を禁止」に基づいていると言えば、すかさず、弁護士でもある高村正彦元外相が「そこには但し書きがある。公益上の必要その他の事由があって相当と認められる場合はこの限りではない、と」糾弾。平沢勝栄氏もその点を指摘した上、「早く出さないと改竄したと言われる」と厳しく指摘した。
稲田朋美氏は「では、なぜ重要な証拠物件である船を返したのか?」と質問。それに対し「写真を撮って証拠化したので」との答弁。各議員から「写真は日本の捏造だと言われかねない」と声があがる。
それにしても、自民党の議員の皆さんは見識が高い。この議論をしている方々が政権を持てば・・・と思う。
しかし、果たして自民党政権だったらどのように対処しただろうか。色々な思いが去来する。
ただ言えるのは、これまではここまでの事態にまではなっていなかった。「起きなかった」ということは、見える見えないに関わらず政治の力が働いていたとうことなのかもしれない。
この議論の数時間後に、漁船船長が処分保留で釈放されるという報道が。愕然とする。
9月25日(土)
結局、未明に漁船船長が釈放された。とくに邦人の拘束や、日本向けレアアースの輸出全面差し止めが効いたように見える。しかし、中国はそんなに甘くない。改めて日本に対し「強烈な抗議」を表明、謝罪と賠償を要求する声明を発表した。
那覇地検は、自らの判断でやっていると言い張っているが、この問題はすでに「政治問題化」しているのだ。これまでの失策の数々が、あたかも地検の判断であるように責任転嫁しているのである。
官側は本当にそれでもいいのか?
那覇地検は「国民への影響や今後の日中関係を考慮した」と言うが、司法を担う立場としては越権行為ではないだろうか。指揮権発動のケースではなかったのか。
一番、悔しい思いをしているのは、現場で警戒・監視にあたっている人たちだ。今日こうしている間も、海保は尖閣諸島附近での中国漁船の活動に目を光らせなければならず、海自の哨戒機は天然ガス田「白樺」で掘削作業が行なわれるのを、唇を噛み締めて見つめなければならないのだ。
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