あたしが昔から
何よりも気にするのは

“周りにどう思われるか”

人の目っていうのは
やっぱりすごく気になる

信頼してる友達だったり
あるいは仕事仲間だったり

そういう人が裏で
自分の悪口を言ってたら
そりゃあ、すごく悲しいし
惨めな気持ちになるでしょ

貶されるよりは
褒められたいって思うのは
誰だって同じだと思う



昔からずっと

得意なことといえば
“周りに合わせること”だった

お世辞ばっかり言ったり
嘘をつく訳じゃないけど

(この子はこういうタイプだから
 じゃあ私はこう接すれば
 気に入ってもらえるな)

みたいに

相手の性格を理解して
どう接するかを計算するのが
すごく得意だから

いつも思い通りにうまく行く

いわば
『世渡り上手』ってやつだと
我ながら常に感じてきた



今の職場では
キャストみんなと仲が良い

基本的には

一番年下だから
誰よりも立場が低いってことを
常に意識していれば

みんなには
嫌われるどころか
すごく気に入ってもらえる

先輩達は口を揃えて

「この子ほんとにいい子だよ」
ってお客様にまで話してくれるし

ボーイさん達にもよく

「お前は性格がいいから
 誰にでも好かれるタイプだな」

って言ってもらえる



あたしが今まで生きてきた
“18年”っていう年月で

いつの間にか
『完璧ないい子ちゃん』が
当たり前のように完成してた

あたしの中の“いい子”が

まるで本当の自分みたいに
周りに扱われると

普段の努力は
無駄じゃないなって思うし
うまく行くことに優越感すら覚える



本当のあたしが
今はどこに居るんだろうと
たまに思うときがある

本当のあたしは

嘘ばかりつくし
他人なんて信用しないし

普段考えてることなんて
口に出せたもんじゃないし

どう見たって
いい子なんかじゃない

今はもう

自分の“裏”の部分しか
周りに出さなくなったから
それが“表”にすらなっている



本当のあたしを知ってる人なんて
この世に数人しか居ない



我が強い人間しか
集まらない場所に居るには

そういう努力が
必要な時だってある

自分のプライドなんて
今は大切にする価値もない

“居場所”を確立してこそ
自分がその中で映えると思う

だから

あたしはこれからも
もう一人の自分として
生きて行くと思う



環境に対応できない奴は
ただのあほだ
この間、部長に言われた

「お前は頑張れば売れるタイプだ」

「これから売れるためには
 どんな相手にも好かれるように
 キャラをいくつも作れ」



あたしがこの仕事をする上で
貫いてきた“モットー”は

ありのままの自分で居ること

その“自分”が
裏の自分か、表の自分か
そんなことはどうでもいい

ただ

新しい人格を
無理に確立するより

“自分”として
どんなお客様に付いても
キャラは変える気がなかった



お客様はよく

「素の自分で接してくれるのが
 キャバ嬢っぽくなくていい」
と言ってくれる

あたしは
プライベートと仕事が
リンクしているから

隠す必要があるものなんて
これっぽっちもない

元々

隠しておきたいことは
全て隠すタイプだから



部長と一緒に
新しいキャラを考えさせられた

(あたしが出来ること)

それはとても少なくとも
探しても見つからなかった



他の女の子みたいに
お客様に甘えてみたり
にゃんにゃんしたりが

上手くできたらいいなぁと
何度も思ったことがある

だけどそれは
最も“らしくない”ことだった

周りの目を
人一倍気にする奴が

周りが不快に感じるキャラを
演じられるはずがないもの

きっと、
男心をくすぐるには
一番の方法なんだろうけど

あたしは

自分の作ったキャラを
破壊してまで

売れたくもないし
好かれたくもなかった



部長にそれを伝えると
こう言われた

「人前で、それは出来ないって
 譲れないものがあるなら
 無理にやる必要はない」

「その代わり
 周りのやつには絶対できない
 “自分だから出来ること”を
 見つけなきゃいけない」

あたしに出来ることを
いくつか挙げてもらった

・料理が得意だから
 お弁当デートをする

・誰にでも好かれるキャラなら
 相手が心を許すのも
 人一倍早いだろうから
 お客様がどういう人間が
 誰よりも理解してあげる
 


実際のところ
手料理をわざわざ作るのは
微妙な案だったけど

相手を知ることは
得意だからすぐに出来ると思った

それからのあたしは

お客様の趣味を
理解する努力もした

Mr.Childrenが好きと聞けば

アルバムをたくさん借りて
あたしも好きになる努力をした

お客様は喜んでくれた



人より努力することが
“私に出来ること”だと思う

気付いたからには大事にしよう
私の働く店は
一日の出勤人数が、約15~20名

在籍人数は
ざっと50名弱だと聞いた

容姿はもちろん様々だけど

こんな田舎のキャバクラで
働いている子の割には
比較的、みんな綺麗だと思う

(↑もちろん私以外の話)

年齢層は
一番下が18歳の私で
大体が20代前半

つまりは

比較的若くて
比較的綺麗なキャストで
店が構成されていると思う



最近、新しく
R子さんという人が入店した

彼女は39歳

年齢を聞かなくても
落ち着いた雰囲気があるから
なかなかの年上だろうと感じた



最初のうちは

30代後半になってから
若いキャストばかりの店で
働き始めるなんてすごい度胸だな

それにこの年で
キャバクラ勤務なんて
将来の夢もない人なのだろうか

なんて
ある意味、見下していた



何度か顔を合わせて
プライベートな話をするうちに

彼女は普段
研究員数名の上に立って
洗顔料の開発をしている
女社長だと知った

今は企業したばかりで
昼間に営業をすることがないから

今のうちに
資金稼ぎをしているらしい



その日から
彼女に対しての“見方”が
私の中で丸っきり変わった



明確な夢を持ちながら
必死に生きている人は
本当に素敵だと思う

彼女はきっと
私から聞かなければ
普段の仕事に関しての情報も
自分から話さなかっただろう

誇れる仕事をしていながら
それを安易に口にして
人の優位に立とうとはしない

組織の中では
年齢的に上だとしても
謙虚な姿勢は崩さない

それでいて
仕事はきちんとこなし
誰からも頼られる存在

“独立”

その言葉が
よく似合う女性だと思う

自分の信念があって
問題が起きたとしても
無責任に誰かに頼らず
きちんと自己解決できる人



あるとき、
一緒に体験入店に来ていた友達は
本入店しなかったのかと聞いたら

同じような年齢層のキャストが
働く店に入店したらしい

R子さんも誘われたが
「私はそんな場所に行くほど
 おばさんなんかじゃない」
と言って断ったそうだ

確かに彼女は
世間の39歳の女性と並んでも
抜群に綺麗だと思う

自分に自信を持つことは
容易いことではない

私なんて特に
コンプレックスだらけで
自信なんて一つもない

だけどいつかは

彼女のように
輝いた女性になりたいと思う



尊敬できて
且つ、目標となる人物に
私はまた一人出会った