(備前焼 鶴首花入 ガクアジサイ・ヤツデ)
備前焼の鶴首花入にガクアジサイとヤツデを生けてみました。
花材は、近在の野山から頂戴しました。
(真上から見たヤツデ)
ヤツデ(八手)は深い切れ込みのある艶々した大きな葉っぱですので、すぐに見分けがつきます。
ちなみにヤツデの "指" は8本ではなく5本、7本、9本、11本と奇数なのだとか。
確かによく見ると8本ではありませんね。
また、効率よく光合成するために、葉っぱ同士が重ならないよう茎の方向や長さを調整しているのだそうです。
真上から見るとまんべんなく葉っぱが広がっている様子がよく分かります。
植物は賢いですね。
(ガクアジサイ)
ガクアジサイの花弁のように見えるのは実は「萼(がく)」で、本物の花弁はとても小さいですね。
装飾花の役割は昆虫にアピールすることですから、雌しべも雄しべも退化し生殖機能は失われているとのこと。
結実するのは中央にある両性花。花が密集した集合花です。
(西洋アジサイ )
日本の固有種であるガクアジサイがヨーロッパに渡り、装飾花だけのアジサイに品種改良され日本に逆輸入されたものが西洋アジサイなのだとか。
今日ではアジサイといえばこの西洋アジサイを思い浮かべるほど主流になっていますね。
西洋アジサイは結実しないので挿木で増やすそう。
(西洋アジサイ)
西洋アジサイの装飾花を掻き分けると小さな可愛い花が姿を現します。
両性花の名残りでしょうか。
(備前焼 鶴首花入)
さて、花入はヤフオクで備前焼の花入ばかり13点まとめて1万円で購入したものの一つ。
遺品整理か何かで市場に出たものでしょうから、昭和の作品と見受けられるものが多く、年季が入りどれも味わいがあります。
こちらの花入も鶴首のお手本のような艶かしくも美しい曲線で、作りも丁寧。
正面にゴマが掛かり、全体に落ち着いた色合い。昭和の残り香が漂います。
花入単体では地味なのですが花を入れると驚くほどゴマと草花との色映えが良く、切花に生気を吹き込みます。
陶印は「陶弘」とも読めますので、あるいは金重陶弘(金重利陶苑)の作品かも知れません。
(写真)2023年7月4日撮影