発売日に買った「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を読み終えたので感想をば。
私は別にハルキストというわけではない。確かに彼の作品は好きだし、小説以外のエッセイ等もかなり読んでるし、その世界観や音楽の趣味が合ったりして、気持ちいいので気が乗ると読む。でも、海辺のカフカや1Q84は、持ってはいるけどまだ読むに至っていなかったりするのだが。それでも、ほとんどは中古で仕入れたものである。
ではどうして今回は発売日に買うという暴挙に至ったのか?ワイドショーの深夜0時の狂想曲に影響されたのも少しはあるが、主にはタイトルにある「巡礼の年」である。このタイトルが発表された時から、リストのAnnée de pèlerinage(巡礼の年、または年報)のことであろうなということは予想できたし、しかもこの曲集は私にとって大切な意味を持っていたから。
2011年のリスト生誕200年から、今まで特定の曲(例えばロ短調ソナタ)しか聞かなかったのを、ピアノ曲の全集や交響詩など広げて聞くようになった。その中で巡礼の年という多年に渡って書かれた(20代から60代に断続的に書かれている)曲集を再点検するのが最近のマイブームであり、偶然にもそれが取り上げられるというグッドタイミングだったのである。
そう、クラシックの作曲家を探求するにあたり、代表曲とは何か?それはその生涯にわたって書かれた曲集だ!という解釈のもと、それらを研究(というと偉そうだが、楽譜にあたりながら様々に思索)するのが最近のマイブームなのである。ベートーベン、モーツァルトならピアノソナタ、ショパンならマズルカ、そしてリストは巡礼の年というわけだ(ちなみにシューマンにはそういう曲集はなさそうだ)。
さらに「巡礼」という言葉の響きも好きだった。リストが異邦人として、スイスやイタリア等を訪れた時の印象を綴った曲集。様々なタイプの曲が混在し、さらに多年に渡っていて、最後の「3年」には印象派に影響を与えた曲(エステ荘の噴水)などもあり、通して聞くと空間も時空も旅するような気分になる。
私がこの曲集を知ったのはご多分にもれず、ホロヴィッツがきっかけなのだが、彼はカタログ的に曲集を網羅して弾くことはないので、断片的にペトラルカのソネットやオーベルマンの谷などを知っていた程度だった。そこで、巡礼の年をまとめて聴きたいと思って数年前に購入したのが、定番であるラザール・ベルマンの3枚組CDだった。この本を読むにあたり、ベルマンに加えてホルヘ・ボレット、レスリー・ハワードを引っ張り出し、万全の構え。
するとなんと、本の中にベルマンのLPの話が出てくるではないか!
(本にはまったく到達していないが、長くなりそうなのでつづく)